グルメ
お酒
2020/7/21 20:20

こんな焼酎、見たことない! 「世界一のバーテンダー」が世界に問う前代未聞の「SHOCHU」3種

今年の2月、「バーテンダー向け」という前代未聞の焼酎が発売されました。その名は「The SG Shochu」。米、芋、麦の3種同時リリースで、製造元がそれぞれ異なっている点が驚き。アルコール度数は38%または40%と焼酎にしては高め。デザインも独特で、表ラベルの文字はすべて英語と、焼酎には見えない個性的なビジュアルです。

↑左から、「The SG Shochu KOME」(2980円・以降すべて税抜き)、「The SG Shochu IMO」(3500円)、「The SG Shochu MUGI」(3500円)

 

手がけたのは、カクテルの国際大会を制し“世界一のバーテンダー”として知られる後閑信吾(ごかん・しんご)さん。味わいは? 開発の背景はや狙いは? などを発表会の様子とともにお届けしていきます。

 

アルコール度が低いとバーでは使いにくい

バーテンダーといえば、基本的には洋酒でドリンクを作ることが多いもの。後閑さん自身、日本でその道を志してニューヨークで腕を磨き、世界一になったのも「バカルディ レガシー グローバル カクテル コンペティション」という洋酒ブランドの名が冠された大会でした。

↑和服を着ている中央の人物が後閑信吾さん。中国の上海で3店舗、日本の渋谷で2店舗のバーを運営するSG Groupの代表を務めています

 

そんな洋酒に縁の深い後閑さんが、なぜ今回「焼酎」を手掛けたのか――。そこには、ゲストバーテンダーやセミナー講師として世界のバーシーンを見てきた後閑さんならではの想いがありました。

 

「ニューヨークで長年働き、上海に店を出して、2018年に『The SG Club』(エスジー・クラブ)を日本に出店しました。久しぶりに日本で生活してみてふと気づいたんです。『海外には各国を代表する蒸溜酒があって、世界中のバーテンダーがそれを使っているのに、なぜそこに日本の酒がないんだろう』って。日本が誇る蒸溜酒といえば焼酎。500年以上の歴史があって、手間ひまがかかっていて原材料は高品質。作り手の技術も素晴らしく、味も抜群においしい。それなのに日本で焼酎は安いお酒のイメージですよね。その理由は、『そうしないと売れない』という側面があるからです」(後閑さん)

 

後閑さんは、バーで使われない理由に、焼酎のアルコール度が挙げられるのではないかと言います。

 

「焼酎のアルコール度数は、ほとんどが20%や25%。ほかの蒸溜酒に比べて低いんです。カクテルのベースにしようとすると使い勝手が違うので、バーテンダーとしてはちょっと扱いづらいんですね。それならば、もっと使いやすい焼酎があればと思ったんです」(後閑さん)

↑「The SG Shochu」の3種は発表会でも提供されました。日本の伝統的な文様と洋酒的な要素を融合させたデザインで、バーテンダーが注ぐといっそうサマになります

 

米、芋、麦それぞれの作り手とタッグを組む

その発想から生まれたのが、40%近いアルコール度数の本格焼酎。そして焼酎は、主となる原材料ごとの味の多彩さが大きな特徴ですが、なかでも伝統的な米、芋、麦それぞれのエキスパートである作り手とタッグを組むことに。米は「白岳」や「しろ」が代表銘柄の熊本県の高橋酒造、芋は「さつま白波」で知られる鹿児島県の薩摩酒造、麦は「いいちこ」で有名な大分県の三和酒類。

 

カクテルにした際にもしっかりとベースのフレーバーが生きるよう、味わいも個性的に仕上げられています。以下で画像とともに3商品の特徴を紹介しましょう。

↑「The SG Shochu KOME」。米を磨いた日本酒の特徴“吟醸香”を焼酎にまとわせた、華やかな風味が特徴です。アルコール度数は40%

 

↑「The SG Shochu IMO」。紫芋と貯蔵芋を掛け合わせた、力強いフレーバーが持ち味です。アルコール度数は38%

 

↑「The SG Shochu MUGI」。モルトウイスキーのような麦の甘やかなコクと、樽熟成の豊かなアロマを感じられる焼酎です。アルコール度数は40%

 

世界のトレンドから見ても焼酎のポテンシャルは大きい

発表会では、それぞれの焼酎を使った後閑さん考案のカクテルもふるまわれました。どれも個性的でいてユニークで、驚きがあって何より美味しい! こちらの特徴や味わいは、以下で写真とともに紹介します。

↑KOME、トマト、花、樹液によるカクテル「トマトの木」。トマトの甘酸っぱさと青々しさの先に、フローラルな余韻が広がるフレッシュで軽やかな味わいでした

 

↑IMOとパイン、ココナッツ、赤ワインで仕上げた「バロンナガサワ」。薩摩藩士としてイギリス、アメリカへ留学し、のちに「カリフォルニアのワイン王」として名を上げた長澤 鼎氏をモチーフに、ワインを使った情熱的な味わいのカクテル

 

↑MUGI、バナナ、カカオ、みりんで作った「大江戸バナナ」。麦チョコ感とバナナのトロピカルなフレーバーが交わりながら、どこかアッパーになりすぎない大人な味わいは、みりんの醸し出す和の滋味深さ

 

ちなみに、聞くところによると、昨今のバーシーンでは、ウイスキーや「世界四大スピリッツ」と言われるジン、ウォッカ、テキーラ、ラムといった王道以外の蒸溜酒にも注目が集まっているとか。特に、「テキーラの母」としてメキシコでは古来より愛されている「メスカル」のような、ご当地ならではの伝統的で個性のあるものが人気だそうです。

 

そのトレンドに照らし合わせると、焼酎はまさにポテンシャルの塊。海外のバーテンダーが魅力に気付けば必ず広まっていく――。「The SG Shochu」にはそんな期待も込められています。

↑プレゼンテーションのイメージ映像

 

SHOCHUを世界共通語にしたい

発表会で登壇した後閑さんは、「The SG Shochu」のラベルデザインを紹介するとともに、各商品のネーミングについても語ってくれました。

 

「外国人に対してわかりやすさを求めるなら、名前は『Rice Spirits』などのほうがいいでしょう。でも、僕は外国人にも『KOME SHOCHU』とオーダーしてほしかった。日本古来の名称で知ってほしいし、SAKEがそうであるようにSHOCHUを世界共通語にしたかったんです。だから『KOME』『IMO』『MUGI』と命名しました」(後閑さん)

 

また、後閑さんはラベルにもさまざまな意味を込めたといいます。

 

「小さく『TRADITION IN EVOLUTION』と書いてるのは、『進化し続ける伝統』という意味。焼酎は長い歴史のなかで進化し続けてきた酒であり、『The SG Shochu』にも大きな可能性を感じています。同じく、『SHARING AND GRATITUDE』という表記は『The SG CLUB』の理念でもあるんですが、『いただきます』という意味。これは農作物、作り手、神様などあらゆるものに感謝をして味わうという、世界でもまれにみる日本独自の精神です。味わいとともに、日本ならではのストーリーも届けたいと思って開発しました」(後閑さん)

↑「KOME」のラベル。よく見るとラベル長辺の端(写真上)に「SHARING AND GRATITUDE」「TRADITION IN EVOLUTION」の表記が

 

そんな後閑さんの想いが込められた「The SG Shochu」は、バーテンダー向けという特性ゆえに、ひとまずは全国の飲食店向けの販売となります。みなさんも、今度バーに行ったら「The SG Shochu」がないか、探してみてください。ちなみに、後閑さんが運営に携わる渋谷のバー「The SG Club」および「The Bellwood」では、「The SG Shochu」を使ったカクテルを提供中。このうち「The SG Club」では予約制で料理とのペアリングを提案する「The SG Shochu カクテルペアリングコース」も提供しているので、体験してみてはいかがでしょうか。

↑「The SG Shochu カクテルペアリングコース」の一例。「OAX」中トロ梶谷農園のハーブタコスとThe SG Shochu MUGIとオレンジシェリーとカツオのカクテル

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】