グルメ
2020/12/5 11:00

1玉700円オーバーだけど現在入手困難! 日本一高い卵「五穀豊穣 極み」をプロと一緒に食べる

たまごパン専門店が各地にオープンするなど、卵の価値が改めて見直されています。そんななか今年10月より販売スタートしたのが「日本一高級なたまご」といわれる和歌山県発の「五穀豊穣 極み」です。その中のひとつ「【五穀豊穣 極み】最高級品【木箱入り】」は、一箱8個入りで5900円(税込・送料別)という値付け。単純計算で卵1玉につき、737円ということになります。それでも、注文が殺到し、11月現在、数か月待たないと購入できないそうです。

 

そんな高級で超レアな卵を、今回運良くゲットすることができました。一般的な卵に対し、何がどう違うのか。そして、果たして700円オーバーの魅力はどこにあるのか。今回はフードライターの中山さん、編集部員・野田氏、カメラマン・我妻氏と筆者の4名で、試食しレビューします。

 

最高の餌を受け、最高自然環境で育った鶏が生む卵

まず「五穀豊穣 極み」の成り立ちから紹介します。この卵が作られるのは人口約6千900人の和歌山県日高郡美浜町。自然豊かな地域でキュウリやトマトなどの農作物、シラス、伊勢エビ、アワビなどの魚類の産地として知られています。この美浜町で暮らすある老人が「日本一美味しい卵を作りたい」と立ち上がり、地元の広大な土地を使い試行錯誤を繰り返しながら「五穀豊穣 極み」は生まれました。

 

そのこだわり方は尋常でなく、鶏に与える餌は100種類以上の配合肥料に加えトウモロコシ、ドクダミ、大豆粕、魚粉、きな粉、米油、釧路ハイミール、高級海藻粉末、酵素、乳酸菌、2500万年前にできた特殊な天然植土などお金に糸目をつけず使用。さらに、自家製腐葉土からの微生物や山林で採れる栄養価の高い野草などを取り入れ、最高の餌を与えています。

↑海岸に面した和歌山県日高郡美浜町

 

↑自然豊かな環境下で、栄養価の高い様々な餌を鶏に与え育てています

 

また、「鶏がストレスを感じると、本来のエネルギーや野生本能が引き出せないかもしれない」という理由から、鶏を放し飼いし自然に逆らわない飼育方法で大切に育てています。

↑放し飼いで飼育されている「五穀豊穣 極み」を生む鶏

 

放し飼いは、よくあるケージ飼いに比べれば確かに生産効率は劣るものの、鶏本来の習性にそった生活が送れることから鶏自体も健康で、素晴らしい卵を生むのだそうです。また、これらの卵は「有精卵」と呼ばれるもので、卵を温めるとヒヨコが生まれる可能性もある強いもの。さらに「五穀豊穣 極み」には、黄身が2つある二黄卵が多く含まれており、味覚の強さだけでなくその希少性から多くの人が注文されるのだそうです。この繊細かつ、ダイナミックな行程によって育てた鶏が生むのが「五穀豊穣 極み」です。

 

「五穀豊穣 極み」を取り出してみた

それではさっそく入手した「五穀豊穣 極み」を開けていきます。届いた段ボールを開けると、木箱がそのまま顔を覗かせます。

↑【五穀豊穣 極み】最高級品【木箱入り】を段ボールから出した状態。格式高い木箱が「普通の卵とは違う」ことを感じさせてくれます

 

蓋を開けると、クッション材代わりのおがくずが敷き詰められており、中に埋まっている卵を指で探りながら引き出していきます。慎重に掘り当てていきましょう。

↑蓋を開け、おがくずを慎重にかき分けて、卵を見つけ出します

 

↑8個全てを表に出した状態。各卵には「感謝」のシールが貼られています

 

次に、事前に用意しておいた一般的な卵(LL)と比較してみます。一般的な卵は近所のスーパーで購入した6個入り170円(税込)のもので1玉28円。約W65×D50ミリのLLサイズなので、「五穀豊穣 極み」よりほんの数ミリ大きく映ります。では、一般的な卵に対し「五穀豊穣 極み」がどう違うのかをさらに見ていきます。

↑「五穀豊穣 極み」(左)と一般的な卵(右)

 

「五穀豊穣 極み」を割ってみた

次に「五穀豊穣 極み」と一般的な卵を割ってみます。まず「五穀豊穣 極み」は殻が厚めで、割る際にも何度か叩かないとヒビが入ってくれません。この点、一般的な卵は使い慣れているせいか、サクサク割れてくれます。また、ここで注目すべきは「五穀豊穣 極み」の殻の内側に厚く覆われた膜。強い弾力があり、卵の黄身を守っているような印象を抱きました。この点、一般的な卵は膜も薄く弱いように感じました。

↑「五穀豊穣 極み」を割った図。写真ではわかりづらいですが、殻の内側に膜が厚く覆われています

 

しかし、ここで意外だったこともあります。高級卵と聞き、「黄身が赤に近い」「弾力がある」というイメージを勝手に抱いていましたが、一般的な卵と比べてみると、見た目にはさほどの大差がありません。強いて言えば、一般的な卵が白身がやや濁り気味なのに対し、「五穀豊穣 極み」は澄んだ色をしており、ハリを感じられるという点のみです。

↑「五穀豊穣 極み」(左)と一般的な卵(右)。一般的な卵は白身がやや濁っています

 

次に、実際にそれぞれの卵を溶いてみると、一般的な卵がスムーズに溶けていくのに対し、「五穀豊穣 極み」は特に白身にハリがあり、なかなか溶け合ってくれませんでした。おそらく「五穀豊穣 極み」は黄身と白身のメリハリが強く、この理由からなかなか溶けてくれないのではないかと感じました。

↑一般的な卵を溶いてみると、黄身と白身が容易に混じっていくのに対し……

 

↑「五穀豊穣 極み」は黄身、白身とも強い主張があり、なかなか溶け合ってくれません

 

また、「五穀豊穣 極み」には、事前情報の通り、黄身を2つ持った二黄卵が8個中5個ありました。この二黄卵も卵が持つ強い力を感じさせてくれ、この後の試食への期待が大きく高まります。

↑「五穀豊穣 極み」の二黄卵。二黄卵は「縁起が良い」とも言われるそうです

 

「五穀豊穣 極み」と一般的な卵を食べ比べてみた

「五穀豊穣 極み」、一般的な卵をそれぞれ溶かしたビジュアルを見てみましょう。「五穀豊穣 極み」が鮮やかなオレンジ色をしているのに対し、一般的な卵は黄色に近いオレンジ色です。見た目的には著しい差はないですが、この後の試食で違いがはっきり出るのでしょうか。

↑「五穀豊穣 極」(左)と一般的な卵(右)を溶いた図

 

ではフードライターの中山さん、GetNavi webの野田編集部員、我妻カメラマンと筆者の4名で卵をすすり、レビューしていきます。

 

ーー「高級卵」と聞き、黄身が真っ赤っかのいかにも強そうなものを想像していましたが、そうではなく、見た目は一般的な卵と大差はありませんでした。でも、味は確かに「五穀豊穣 極み」は強いですね。

 

中山秀明さん(以下、中山) 「五穀豊穣 極み」の一口目のタッチはシルキーですけど、確かにタフな感じがします。一般的な卵に比べても明らかに味が濃い。一般的な卵がサッパリしているのに対し、「五穀豊穣 極み」はボディがあって濃いし、甘味のような強い旨味を感じますね。この2つの卵から「白ワイン」「赤ワイン」のようなキャラクターの棲み分けはできないですけど、日本酒でいう「淡麗」「濃醇」のような差は感じます。ただ、単純に濃いというよりもうまみの要素が重なっている印象で、味の輪郭がふくよかというか。そういったことから、「五穀豊穣 極み」のほうが明らかに高級感があります。

 

野田浩樹編集部員(以下、野田) 中山さんが言っている感じはよくわかりますね。ただ、僕は庶民の舌なので、一般的な卵のほうが食べ慣れている分、親しみやすくは感じます。もちろん「五穀豊穣 極み」がダメということではなく美味しいんですけど、高級すぎて何に使ったら良いかが思いつかない。

 

我妻慶一カメラマン(以下、我妻) 一般的な卵は白身が生臭いのに対し「五穀豊穣 極み」は臭くないですね。これもあの厚い皮膜で守られているからですかね。僕は「五穀豊穣 極み」の強さをあえて濃い料理に合わせてみたいです。吉野家の牛丼とか面白いかなと思います。僕にとっての牛丼屋の卵って、普段後半でかき込むためのもので「まろやかさ」くらいしか普段は感じていないんですよ。でも、これだけ強い卵をかけたら、うまみが強くなって美味しいような気がします。

 

ーーたしかに、味が濃い料理に「五穀豊穣 極み」を合わせたとき、うまみが上がるのか単にくどくなるのかは興味がありますね。中山さんが考える「五穀豊穣 極み」のおすすめの料理はありますか?

 

中山 僕は我妻さんと真逆で、牛丼とかすき焼きのように生卵を溶いて肉と絡める料理の場合、卵の強さが全体を包んで肉の味を邪魔するような気がするんです。なので、肉料理に合わせるのなら卵自体にほんのり熱を入れて、肉と卵の存在感を両立させる親子丼やかつ丼とか。魚介ならかに玉やう巻きとかかな。もともとの料理として、卵を多く使い、食感も卵の風合いを楽しむようなものが良いと思います。あとは普通にだし巻き卵やオムレツとか。

 

野田 それは良さそうですね。この高級な卵を活かすには、バランスを考えないといけないと思います。すごい安いお米で、超高級なブリを食べても美味しくないですよね、きっと。

 

中山 そうです。マズいネタに、美味しいシャリを乗せても台無しになりますから。

 

野田 だから、バランスは大事だと思います。

 

卵かけご飯で改めて感じる卵の強さ

ーーその卵を一番感じられそうな食べ方として、ここで卵かけご飯をやりたいと思います。

↑鮮やかな黄身の「五穀豊穣 極み」をご飯に乗せた図

 

ーー卵かけご飯は、先ほどの我妻さんの牛丼の話じゃないですけど、私は割とかきこむために食べるところがあるんです。でも、「五穀豊穣 極み」は味も強いし、粘度も強い感じで、そういう食べ方ができないですね。しっかりおかずとしていただくような。黄身1個分だとしても、ご飯一膳だと量のバランスが合わないように思いました。

 

中山 たしかにしっかりおかずな感じですよね。うまみがあって美味しいです。卵かけご飯は、そのままでも十分美味しいです。次に、卵かけご飯に醤油をかけて味変してみたら、だんだん一般的な卵かけご飯の味に近づいてきましたね。でも、よく噛み締めてみると「五穀豊穣 極み」の味が醤油より立つような。美味しいですね。

 

野田 僕も普段食べてる一般的な卵を使った卵かけご飯とは明らかに違うことがわかりました。これだけでも結構お腹いっぱいになりますね。

 

我妻 スルスル入らないくらい、味が強いですよね。「五穀豊穣 極み」を料理に使う場合はやっぱり、この強さを活かしたほうが良いですね。家のテフロンが剥がれたフライパンで作るのではなく、立派なシェフがこの「五穀豊穣 極み」を使った料理を食べるほうが良さそうです。

 

野田 それはわかる。「五穀豊穣 極み」のうまさをより活かしたプロが調理した、この卵の美味しい料理を食べたいです。

 

正統派の美味しさを持つ品の良い卵

ーー1玉700円以上という、日本では最高額とも言われる卵ですが、まとめとして、どんな用途におすすめしたいですか?

 

中山 想像以上に正統派の高級卵で、すごいドッシリしているわけでもなく、強さだけを押し出すような下品さもなく、品が良い卵だと思いました。なので、先ほど言ったような卵の風合いがメインの料理か、卵を使ったスイーツなんかにも合うと思います。パンケーキとかカステラとか。ただ、ショートケーキのように、クリームを入れて素材を重ねているようなスイーツは効果が出ないと思います。

 

我妻 プリンとかは良さそうですね。一般的に売られているプリンでも「卵の甘味を感じられる」ことを銘打ったものが沢山ありますし。「五穀豊穣 極み」を使ったプリンがあったら、それは食べてみたいです。

 

野田 あと思ったのは、やっぱり手を出すのに躊躇する金額。でも、贈答用とか特別な日に食べるとかにはアリだと思いました。普段はなかなか手が出せないものって、贈られると嬉しいものですしね。

 

中山 卵が好きな人は、特にこの正統派の美味しさを感じられる卵だと思います。入手困難ということですけど、卵が好きな人はぜひ試していただきたいですね。

↑試食会終了後、「加熱したらどうなるか」が気になり、「五穀豊穣 極み」と一般的な卵でゆで卵も作ってみました

 

↑一般的な卵の殻がすぐ剥けるのに対し……

 

↑「五穀豊穣 極み」はこの通り。殻の内側の膜が強く、なかなか剥がれません。卵が強いように思いました

 

↑こちらが一般的な卵のゆで卵。黄身が黄色いのに対し……

 

↑「五穀豊穣 極み」はやはりオレンジに近い色。ちなみに茹でた卵も二黄卵。試食してみると、ゆで卵にしたことで、「五穀豊穣 極み」の甘味・旨味が際立ったように感じました。黄身・白身とも、一般的な卵よりも弾力があって美味しいです

 

↑さらに「五穀豊穣 極み」のゆで卵を使って玉子サンドを作りました。普段は塩分高めの玉子サンドが好きな筆者ですが、あえて塩分を抑えても旨味が強いので十分美味しい玉子サンドになりました

 

高額商品ですが、その独特の風合い、ポテンシャルは一般的な卵とは確実に違います。卵好きの皆さん、機会がありましたらぜひ一度ゲットし「五穀豊穣 極み」をご試食ください。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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