グルメ
2016/10/10 11:00

まさにメシ泥棒! 極上の新米に合う、極上のコメのアテ、ベスト3

いよいよ新米の季節がやってきた。例年、米農家を営んでいる友人の実家に、田植えと稲刈りの手伝い(と称して、おいしいものを食べ)に伺っているが、新米とどうやって付き合うかは実に難しい。というのも、コシヒカリに代表される本州のいい米は米自体が主役で、ついついコメばかりを食べ進んでしまうからだ。

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例えば、関西から九州圏ならばヒノヒカリという品種がある。「おかずを超おいしく食べさせるコメ」だ。デキのいいヒノヒカリで定食フォーメーションを組むと、おかずがおいしく感じられて、ついおかずをもりもり食べ進んでしまう。つまり欲望のまま食べ進んでも、結果として食事の栄養バランスはいいところに落ち着く。

 

ところが、デキのいいコシヒカリはどうかというと、もうコメ単体だけで強力にうまい。何もなくてもうまいし、ちょっと塩気のある漬物や佃煮などがあったら、なおうまい。おかずなどには目もくれず、ついついコメばかりをかっこみたくなってしまう。旬となればますますテンションも上がる。どうしたらいいのか。

 

……。

 

あきらめよう。

 

この時期の新米は仕方がない。新米自体が新米を食べさせるメシ泥棒みたいなものだ。むしろこの時期に限っては、新米祭りを華々しく開催し、新米欲を成仏させるのが吉に違いない!(※「コメに限らず、年中そういう祭りを開催しているのでは」というツッコミはご自重ください)

 

そうやって欲望をなだめながら、己が煩悩と付き合っていく。それもまた人生である。

 

と、なんだか話が大きくなったが、せっかくなので、この時期のコシヒカリをさらにおいしく食べられる、アテの条件について考えてみたい。

 

まずコシヒカリの味わいを考えてみると、濃厚な味と強い粘りが特徴で、白米だけ食べていてもおいしい。つまり味が単体である程度完成されている。コメの味に力があるので、甘みやうま味の強いおかずも受け止めるが、むしろコシヒカリ由来の甘みや粘りを活かすすっきりした相手のほうが、よりコシヒカリのおいしさを存分に引き出すことができる。つまりコシヒカリの味と対抗するような甘みの強いおかずや、コメの「味度」(※)にもつながる粘りを損なうようなものを避けて組み立てるのが常道だ。

 

※保水膜(炊飯膜の表面を覆う粘液状物質――俗に言う「おねば」)の量によって、コメのおいしさを表す指標で「味度メーター」によって測定される。一般に保水膜量が多いほどおいしいとされる。

 

さて、コシヒカリのおいしさを存分に引き出すという観点から、ベスト3を考えてみたい。まず最初のエントリーはこちら。

 

 

■塩昆布+卵黄だけの卵かけごはん

数年前、約100種の卵かけごはんと格闘した某誌の卵かけごはん特集で、とある星つきの和食店のご店主から教えていただいたもの。土鍋炊きの炊きたてごはんを混ぜずに、すくうように茶碗に盛る。そこに卵黄を落とし、塩昆布をパラリ。箸で数回、切るように混ぜたら、即かっこむ。混ぜムラ上等! むしろムラがあったほうがいい。

 

「コメとコメをつなぐ、おねばが凝縮された部分が新米の一番のごちそう」とご店主も言うように、凝縮されたおねばを口内の感覚&咀しゃく器官を総動員して噛み締める。余計な水分を加えていないから、コメの一粒一粒をしっかり捉えて逃がさない。卵黄の味と香りは、新米の味わいに新たな官能を加え、塩昆布はコシヒカリの味を膨らませながら引き締める。『ミスター味っ子』(寺沢大介)に登場する味皇ならば「うーーまーーぁぁあいいいいいぞおおおおおおお!!!!!!!」と叫びながら、口からビームを放射するに違いない。

 

書いていると腹が減るので次に行こう。

 

 

■ちりめん山椒

ごはんといえば、なにはなくともちりめん山椒だ。特に新米の時期には、少しだけやわらかく炊いたごはんをちりめん山椒でかっこみたい。ほのかな塩気、じゃこのうま味、その向こうからやってくる新米の味と香り。噛みしめるたびに膨らむコシヒカリの甘みと、きりりとした実山椒の味わいがせめぎ合う。どっちが勝つのか目をつぶってもぐもぐしていると、気づいたときにはそのおいしいものは喉を通り過ぎて行ってしまっている。いかん。反省して、次の一口をすぐさまかっこむが、同じことの繰り返し。旨さとはなんと刹那的なものか、切ないことだ。

 

できれば京都あたりのやさしく繊細なちりめん山椒をちょっとぜいたくに使いたい。狙うは「やよい」か「しののめ」か。いや、「藤村屋」や「正法院力彌」もいいな。ああ、このメシ泥棒……というのは失礼か。彼らはきっとメシ義賊なのだ。そう。正義のためなら仕方がない。盛られたメシをじゃんじゃん盗んでいっていただきたい!

 

 

■炙りたての乾海苔

そして最後に登場するのが、炙りたての乾海苔だ。ちょうど昼時のいまのお腹と相談したところ、ぶっちぎりである。最近では、炙りたての海苔自体、食べたことがない人もいると思うが、炙りたての海苔×新米の相性は最強だと声を大にして申し上げたい。

 

もちろん市販の焼き海苔も悪くはない。だが、炙りたての乾海苔を醤油にちょんとつける。そして炊きたての新米に巻くやいなや、口のなかに放り込む。すると口のなかで海苔のうま味が暴発する。決して大げさではない。

 

海苔のうま味はアミノ酸のうま味だ。焼きの香ばしさも含め、揮発性だから炙りたてが最高なのは当たり前。海苔の細胞壁は、乾燥状態ではもろくなる成分からできている。炙りたてのもろくなった海苔が醤油やコメの水分と出会うと、そこから揮発性の高いうま味成分が飛び出してくる。その瞬間を逃さず噛めば、今度は唾液の水分でうま味が大海原のように広がるのだ。日本人なら誰もが知る、海苔とコメという好相性。炙りたて×炊きたては、互いを最高に引き立て合う唯一無二のベストタイミングなのだ。

 

要諦は3点。ごはんは炊きたて、乾海苔は炙りたて、そして新米の粘りを活かすべく醤油をつけすぎない。これだけで新米は別次元のうまさを見せてくれるのだ。

 

【著書プロフィール】

松浦達也

フードアクティビスト/編集者&ライター
『dancyu』などの食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで、「調理の仕組みと科学」「食文化」「食から見た地方論」など幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオでの食トレンド/ニュース解説も。著書『大人の肉ドリル』(マガジンハウス)などのほか、経営者や政治家、アーティストなどの書籍・コンテンツの企画・構成も多数。マンガ大賞選考員。

うまいものばか!:http://umaimonoholic.blogspot.jp/

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