デジタル
2017/1/22 19:00

新春のラスベガスで、現役レーシングドライバーがゲーマーに負けた!?

新年早々にアメリカ・ネバダ州ラスベガスで開催されるCES(Consumer Electronics Show)は、1967年の初開催以来、世界最大級の家電見本市として歴史を刻んできた。レザーディスクやCDプレーヤー、高解像度のテレビなど、最先端のホームエレクトロニクスがCESから世界に発信された。

↑新春のラスベガスで、リアルレーシングドライバーとゲーマーが激突!
↑新春のラスベガスで、リアルレーシングドライバーとゲーマーが激突!

 

ところが近年は自動車の存在感が増している。例えば1月5日~8日に行われた2017年のショーでは、日産自動車のカルロス・ゴーン会長兼CEOが基調講演を行い、自動運転技術を核にした技術開発の成果とロードマップを発表した。CESは今や、電動化や人工知能といった領域で、クルマの最先端技術を発表する場にもなっている。

 

レースも例外ではない。電動車両で争うフォーミュラEが、2017年のCESに乗り込んだ。といっても、会場にマシンを展示したわけでも、ラスベガスの市街地でレースを行ったわけでもない。現役のフォーミュラEドライバーとシムレーサーが集結し、シミュレーターで腕を競ったのである。賞金総額はカジノの街らしく(?)、100万ドルである。

 

シムレーサーと表現すると何やら新しい職種のようだが、俗っぽく言えばゲーマーだ。シミュレーターと表現すると実験装置のようだが、写真を見ればわかるように、アーケードゲームのようなものである。

 

■たった1日でゲーマーが2500万円稼ぐ!

「ベガスeレース」と名付けられたイベントは、CESの会場で行われた。参加したのは、フォーミュラEに参戦する10チーム20名の現役ドライバーに加え、オンラインで予選を勝ち抜いたシムレーサー10名である。このシムレーサー10名を、フォーミュラEの10チームにひとりずつ割り当ててチームを構成。リアルなレーシングドライバーと同様、シムレーサーもレーシングスーツに身を包んでバーチャルレースに臨んだ。

 

画面の中で走ったのは、ラスベガスの公道を元にデザインされた全長3.13kmのコースである。フリー走行を経てタイムアタック形式の予選を行うなど、eレースはフォーミュラEと同じフォーマットを基本にプログラムを進めた。ただし、シミュレーターの最大稼働数が限られていたことから、独自のアレンジを必要とした。

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↑アーケードゲームのようなシミュレーター20台で戦う。ゲーマーもレーシングスーツ着用でプレイする
↑アーケードゲームのようなシミュレーター20台で戦う。ゲーマーもレーシングスーツ着用でプレイする

 

レースに出走するのは30人だが、同時に稼動できるシミュレーターは20台しかなかった。そこで、予選11位以下の20名で準決勝レースを行い、上位10人が決勝レースに進出。予選上位10人と準決勝レース上位10人を合わせた20人が「本」決勝レースに進んだ。

 

初のeレースを制したのは、22歳のプロゲーマー、いやプロシムレーサー、ボノ・フイスだった。オランダからやって来たフイスは予選を制して2万5000ドルを手にし、レースに勝って20万ドルを手にした。たった1日で22万5000ドル(1ドル113円として2542万5000円)を稼いだことになる。

 

2位にフェリクス・ローセンクイスト(マヒンドラ)が入り、リアルなレーシングドライバーの面目を保った。気になる賞金は10万ドル。3位はシムレーサーのオリ・パカラ(フィンランド)で賞金5万ドルを手にした。また、ファステストラップを記録したシムレーサーのダビッド・グレコ(イタリア)が賞金1万ドルを受け取っている。

↑優勝したのは22歳のゲーマー。なんと1日で2542万円を手に入れた
↑優勝したのは22歳のゲーマー。なんと1日で2542万円を手に入れた

 

■リアルレーサーの才能を見くびってはいけない

ゲーム慣れしているシムレーサーの方が有利だと思うかもしれないが、リアルなレーシングドライバーの能力もあなどれない。あるフォーミュラEドライバーがスポンサー企業のオフィスを訪れた際、社員とシミュレーター対決をしようということになった。手を挙げた社員は腕自慢で、「勝っちゃっていいんスかね」と、ドライバーのプライドを傷つけないか、場をしらけさせることになりはしないか真剣に心配していたという。

 

ところがいざレースが始まってみると、ドライバーの圧勝。レースの終盤は遊ばれる状態だったという。リアルなレーシングドライバーは、ゲームではなくマシン開発に使う本格的なドライビングシミュレーターでバーチャルな走行環境に慣れているし、反射神経に秀で、順応性が高い。だから、プロドライバーとしてやっていけるのである。

↑普段からプレイに慣れているゲーマーのほうが有利に思えるが……
↑普段からプレイに慣れているゲーマーのほうが有利に思えるが……

 

eレース上位10人のうち、フォーミュラEドライバーは5人で、数のうえではシムレーサーと互角だった。CES開催でにぎわうラスベガスで開催された史上初のeレースは、シムレーサーの勝利に終わったが、リアルな世界で戦うレーシングドライバーがバーチャルな環境でも能力の高いことを証明したイベントでもあった。逆に言えば、バーチャルな環境なら、シムレーサーはリアルなレーシングドライバーと互角に争うことができる。

 

フォーミュラEドライバーのひとり、ルーカス・ディ・グラッシ(アプト・シェフラー・アウディ・スポーツ)は、「シミュレーターはゲームに近い。シムレーサーは家で何時間もゲームをしているから、僕らより彼らの方が有利だ。でも、僕らは慣れるのが早いから、次は違う結果になると思うよ」とコメントした。

 

負けず嫌いな点は、シムレーサーよりリアルなレーシングドライバーの方が上か。

 

【著者プロフィール】

世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など

世良耕太のときどきF1その他いろいろな日々:http://serakota.blog.so-net.ne.jp/

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