デジタル
2018/7/31 17:00

利用規約、ちゃんと読んでる? 「泣き寝入り」を避ける最低限のポイント

利用規約と法的効力は別次元!?

−−多くの人たちにきちんと読んでもらえるように、利用規約は簡略化できないものでしょうか?

 

渡邉:利用規約は、事業者によってサービスが異なり、それに合わせて内容もそれぞれ作られるため、簡単なものに統一することは難しいでしょう。ただし、仮に利用規約にとんでもない文言が入っていたとしても、消費者契約法などの特別法というものによりユーザーの権利が守られることもあります。

 

例えば、一般の方には理解し難い文章で、提供側にとって一方的に有益なことが利用規約に記載されていたとします。しかし、そんなものを理解してサービスを利用する人はほとんどいません。そういった利用規約を巡ってトラブルが起きた場合は、裁判所の判断で「利用規約には書いてあるけど、それは認められせんよ」となる場合があります。

 

また、SNSを運営する企業側が、「企業側の故意過失により利用者に損害が生じたとしても一切の責任を負わない」という趣旨の文言を利用規約に入れていた場合などで、その企業の社員が利用者の個人情報を抜いて悪用して損害を出したとしましょう。

 

利用規約上でいえばこのようなケースも免責されてしまいそうです。しかし、このような結果は明らかに不当でしょう。こういった場合も利用規約の文言から離れて、法的に守ってもらえることがあります。

 

つまり、利用規約に書いてあることがすべて法的にまかり通るわけではないということです。「利用規約に書いてあること」と「裁判所による法的な判断」というのは、必ずしもイコールではなく、次元が異なるものになります。

 

泣き寝入りする前にやるべきこと

−−そうなると、利用規約にともなう万一のトラブルが起きた際は、法的な判断に委ねることも視野に入れるのが得策となりますね。

 

渡邉:そうですね。不安な方はまず弁護士、またはその問題に詳しい人に相談するというのがよいと思います。重要なのはトラブルになってしまったときには、専門家の力も借りながら、法的に争える条項なのかどうかを見極めることです。

 

そういった行動を起こさないと、裁判で争いうる条項であるにも関わらず、「利用規約を最初によく見ず、こんな文言が入っていたことに後で気付いた。書かれている以上は見落として同意した自分が悪いので規約に従うしかない」などと泣き寝入りして終わってしまいます。

 

よく街中の駐車場で「無断駐車は罰金10万円いただきます」と書かれている看板を見かけますよね。ですが、あのような看板は、法的にみれば「事前にそう書いてあって、それを守らずに駐車したのだから10万円払わないといけない」という話にはなりません。私人が勝手に罰則や罰金といったものを決めることはできず、これには法的根拠がないからです。それでもあのような看板がなぜあるかといえば、具体的に10万円を回収しようと考えているからではなく、ある種の抑止的効果を期待しているからなのです。

 

インターネットの利用規約でも、このような考え方に基づいて無茶な条項が盛り込まれていることは少なくありません。利用規約にとんでもない文言が入っていたとしても、それは法的には無効の可能性があります。利用規約にかかわってトラブルに発展した場合は、まず法的な専門家に相談するのがよいと思います。

 

インターネットでの利用規約はすべての文言をきちんと読んで、理解したうえで同意するに越したことはありません。ただ、日々これだけ新しいアプリやサービスが生まれていっている現状で、利用規約を隅から隅まできちんと読んでからアプリやサービスを利用するなどというのは、現実的には難しいでしょう。

 

ですので、事前の対策として利用規約を読んでみようというときは、準拠法と管轄、著作権の帰属、責任の所在と範囲等といったあたりを最低限確認しておくことをおすすめします。そして、実際にトラブルが起きてしまった場合には、事後的な対応としては弁護士に相談してみることをおすすめします。そうすることで法的手段を検討して泣き寝入りを避けることもできるのです。

利用規約をきちんと読まなくても同意してしまうことができますが、そこには個人情報/データの悪用や、知的財産の所有権に関するリスクがあります。インターネットのサービスの多くは無料ですが、このような利用規約は「タダほど怖いものはない」ということを物語っているようにも見えます。利用規約はポイントを押さえて読み、できる限り事前にトラブルを防ぐように日ごろから意識しておくことが賢明かもしれません。

 

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