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2018/10/13 7:00

【西田宗千佳連載】「日本のインフラ」を支えるコストは誰が支出するのか

筆者はこの数年、少なくとも2か月に一度は海外に取材に出る。そして、日本に帰ってくるたびに思う。

 

「なんてこの国の通信回線は速くて、エリアがしっかりしているんだろう!」と。これほど均質に高速で、通信不可能なエリアがない国はあまりない。韓国やシンガポールなど、アジアの先進国は似た特徴を持っているので、こうしたインフラ構築は、国土的にも気質的にも、アジア人に共通のなにかがあるのかもしれない。

 

そして、9月の初めに関西と北海道で相次いで起きた災害時でも、携帯電話のネットワークは維持された。もちろん、混み合ったり電力維持が難しい地域が生まれたりもしたようだが、概ね多くの地域で、スマートフォンは「人々の安全と安心を支えるインフラ」として活躍した。あの規模の災害でもインフラが維持される、そしてすばやく復旧するのは、阪神大震災や東日本大震災といった、「携帯電話普及以後」の災害での経験に学び、携帯電話事業者と電力各社、ネットワーク事業者が努力した結果だ。

 

残念ながら日本は災害の多い国であり、こうしたインフラ維持にかかるコストは他国より多くなる。また、エリア維持についても高水準を維持しており、そこも他国とは違う部分が多い。国土が比較的狭く、エリアカバーが簡単な部分もあるのだが、一方で非常に山間部が多く、そうした地域のエリアカバーは、平地が多い国に比べ困難である。

 

同じように見えて、それぞれの国にはそれぞれの事情がある。かかるコストも、ニーズもまちまちだ。技術がさらに魔法のように進化すれば、世界をあまねく均質にネットワークが覆い、災害や事故にも負けない時代が来るかも知れない。だが、当面はそんなことはない。「その国の国土と文化」に合わせたサービスを提供するしかない。そこで、単純に横並びに料金を比較することに、本当に意味があるのだろうか?

 

重要なのは、「事業者間で競争が起きて、価格やサービスで選べること」だ。安いが低速で割引はなく、いざという時のサポートも最低限というサービスもあれば、高い代わりに速度も容量も十分で、災害時にもサポートが厚い、という事業者があってもいい。

 

そうした競争は、MVNOとMNO、という形で行われてきたが、実際のところ、MVNOはみな小規模で脆弱な事業者が多く、MNOと正面から競争できる状態にはない。「ニッチを埋める」サービスといったほうがいい。となると、MNOをもう1社増やし、競争の加速を……、ということになる。楽天の携帯電話参入は、そうした部分に期待がかかる。

 

だが、楽天が現状明かしている投資形態では、現在のトップ3社のようなインフラをすぐに作るのは難しい。MNOではあるが、トップ3社と同じ信頼性になる、とは言えない状況だ。一方で、料金については安くなる可能性が高い。

 

「政府首脳が携帯電話料金の値下げに繰り返し言及するのは、楽天側からの働きかけがあるのでは」という観測がある。少々うがった見方だが、料金だけに注目するのであれば、投資を抑えると明言している楽天には有利な状況だ。もちろん、料金を安くすることも重要な競争要因ではあるが……。

 

さて、こうした新規参入なども含め、携帯電話の料金は今後どうなるのだろう? 簡単には結論を出せないが、少なくとも、単純に「下げる」ことありきの議論は日本全体にとってあまり良いことではない、と筆者は考えている。

 

●次回Vol.72-1は「ゲットナビ」12月号(10月24日発売)に掲載されます。

 

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