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2020/2/18 21:00

ゲーミングスマホだからといって「キラキラ」する必要はない。「AQUOS zero2」開発陣が注力した「軽さ」という“答え”

1月31日(NTTドコモは1月30日)に発売された、シャープのスマートフォン「AQUOS zero2」。この端末の特徴は、ゲームに特化した“ゲーミングスマホ”であるということです。

↑AQUOS zero2(アストロブラック)。2018年12月に発売された「AQUOS zero」の後継機で、軽量ボディが特徴のスマートフォンです

 

昨今ではスマホゲームでもeスポーツが盛り上がりを見せており、ゲームが快適に遊べることをウリにしたスマホも、少しずつ増えています。しかしながら、この端末は、一体どのようなところが“ゲーミング”なのでしょうか? ゲーミングデバイスというと、ゴツい外観だったり、派手にビカビカ光るギミックだったり、そのように煌びやかなイメージを持っている人も少なくないと思いますが、AQUOS zero2は、一見すると、ごくごく普通のハイエンドスマートフォンで、シンプルな見た目からは“らしくない”という印象も受けますね。

 

そこで、今回はAQUOS zero2の“ゲーミングな魅力”について、AQUOS zero2開発チームの皆さんに聞いてみました!

↑左から、関文隆氏、楠田晃嗣氏、篠宮大樹氏、田邊弘樹氏。今回は“趣向を変えて”ユニフォームでインタビューに臨んだシャープの皆さん。このユニフォームからわかる通り、zero2は「ゲーミング」という点をフィーチャーしています

 

「ゲーミング」という枠にとらわれない“エンタメ系”スマホを目指した一台

— そもそも、今回なぜ「ゲーミング」というところにフォーカスしたのでしょうか?

 

シャープ(以下SH) 初代「AQUOS zero」(以下初代zero)は軽さとパフォーマンスを両立した、動画もゲームも楽しめる“エンタメ系”ガジェットとして推していましたが、初代zeroで様々なゲームイベントに出展した際に、来場していたゲーマーの皆様にアンケートを取ると、我々は高いパフォーマンスがウケるのかなと思っていましたが、「軽い」という点が大変評価されまして、イベントのタッチ&トライでも、自分の端末と比べて「全然軽いじゃん! なんだこれ」という声もあがっていました。

 

軽さとパフォーマンスを兼ね備えたところがゲーマーの方にかなり響きまして、「軽さとゲーム」は相性が予想以上に良いということがわかり、後継機種を作るにあたり、ゲームにフィーチャーしようという話になりました。

 

しかしながら、ゲームにフィーチャーした“ゲーミングスマホ”というのは既にいくつかありまして、そのターゲットは、端末のLEDの発光なども含めてファッション的にゲーマーをアピールしているような“コアな方々”が多いと考えています。我々としてはあくまで普通にコミュニケーション端末である「スマートフォン」として使っていただき、さらにゲームも楽しみやすいというコンセプトにして、そこに“軽さ”という、他のゲーミングスマホとは違う切り口を入れています。

↑「R」シリーズと「zero」シリーズでハイエンドモデルを展開するAQUOSシリーズの違いについて、Rシリーズはどちらかというと王道で、zeroシリーズは個性が尖った“良い意味でシャープらしくない”新しいコンセプトに挑戦するようなモデル、と語ってくれた楠田氏

 

最軽量への“挑戦”

— 軽さにこだわったとのことですが、実際、どのくらいの軽さなんでしょうか?

 

SH 重量は141gになります。zero2はハイエンド系のモデルの中では世界最軽量で、初代zeroからさらに5g軽くなっています。画面サイズも初代zeroの6.2インチから6.4インチになって、カメラもツインカメラになりましたが、軽量化に成功しました。

↑zero2と、一般的なスマートフォン(約200g)と同じくらいのモックを持ち比べてみたところ。劇的な軽さにビックリ! 初代zeroを昨年夏ごろに仕事で数か月ほど使っていたので、確かに前作よりたった“5g”の差とはいえ、気持ち軽くなっている印象を受けました

 

— それでは、なぜ画面サイズを大きくしたりカメラを増やしたりしているのに、軽量化できたのでしょうか?

 

SH 初代zeroもzero2も、有機ELディスプレイと、側面はマグネシウムフレームを採用している点はあまり変わりませんが、外観ではなくて内部重量を削減しました。

↑初代zero(左)とzero2(右)の基盤。並べてみてもパッと見では軽量化の詳細はわかりにくいですが、基盤の一部をカットし、重量を約25%くらい削減しています

 

↑篠宮氏曰く、内部重量の軽量化は基盤をどんどん小さくしていく作業の積み重ねですが、究極的に言ってしまうと「気合い(笑)」だそうです

 

これ以外にも、細かい積み重ねで、共同的な試験を重ねたり、パーツの必要性なども議論したりしながら、結果的にここまで軽量化できました。初代zeroの軽量化の知見を活かしながら、いろいろと試すことができたのは大きなポイントだと思っています。もう0.1g単位で必死に取り組みました。端末を軽くするためにスペックを下げたりするのは簡単ですが、パフォーマンスもしっかり追求した上で軽量化というのがポイントで、これはもう一朝一夕でできるものではないです。

 

— すごい…しかしながら、これまで「ゲーミングスマホ」に軽さって求められていたのでしょうか?

 

SH やっぱりゲームってどうしても肩の力が入ってしまうので、終わった後に疲れがどっと出てしまうというのもあって、実際にプレイしていただいて、お客様からも「軽い」と「疲れないね」って声がけっこう多かったです。開発メンバーも、初代zeroでゲームをプレイして、zero2に持ち替えた瞬間に「軽い! もう戻れない」って。それくらい作っている側も軽さに対して感動しているんです。スマホゲームの「エンジョイ層」と呼ばれる方々も、それなりにゲーム時間は長いです。そこで皆さん本当に「軽い」って感動されることは、誰に触らせても「良い」と言われるような軽さなんじゃないかと思います。

 

— さて、先ほどディスプレイの話が出ましたが、続いてディスプレイについても詳しくお話をお伺いしましょう。

 

SH はい。今回は“ゲーミングスマホ”ということで、ディスプレイにも力を入れました。“ゲーミング”に最適なディスプレイは何かというところから始まり、「ハイレスポンス」で、「画面の見やすさ」と「ゲームに最適な画質」に重きを置きました。

 

まずはハイレスポンス。こちらは4倍速の240Hz、1秒間に120回フレームを更新。間に黒を挿入し、240Hzを実現することによって残像感を減らしているんですけども、連続して同じフレームがあると、前後のフレームが残像に見えてしまう網膜残像という現象がありまして、それを除去するために、黒いフレームを入れています。表示の次に黒いフレームを挿入する方式ですが、上から下にローリングする「ローリング方式」を採用しています。

 

ローリング方式にはいろいろメリットがありまして、ひとつは画面内の画質の均一化。残像が少なく輝度も均一化できます。もうひとつは、一般的なスマホのディスプレイに採用されている「フラッシュ方式」に比べて、表示されるまでが速いという点。最後は、OLED(有機EL)と非常に相性が良く、OLED自体がローリング方式で描画を繰り返してるというのがあり、黒フレームを挿入する形を採りました。

↑同社製端末比較。左からzero2(240Hz)、ハイスピードIGZO端末、初代zero(60Hz)。黒フレームはカメラのファインダー越しにははっきり見えるのに、写真にはうまく収められず…無念!

 

240Hzになりますと、タッチパネルの反応も4倍速になります。内部処理の時間も4分の1に短縮されますので、レスポンスが速くなります。ハイレスポンスモードでは表示が60Hzに落ちたとしても、タッチパネルは4倍速のままです。残像感の大幅な軽減とタッチレスポンスで、両方合わせると結果的に、リズム系のゲームでは特に大きな効果を発揮すると思います。リズム系ゲームのように、ギリギリのところで勝負する、ちょっとした操作がスコアに影響してくるゲームだと、すごく威力を発揮してくれるでしょう。

 

また、初代zeroに比べて、輝度も1.5倍にして、画面が見やすくなっています。「AQUOS R3」で採用した「アウトドアビュー」を、OLEDで初めて搭載しています。最近は特に、外でプレイすることが前提のゲームが増えています。外だと日が当たって画面に入ったり角度を変えたりとか、頑張れば見えるっていうものはあるかもしれないんですけども、今回目指したのは、頑張らずに見える、しっかりした明るさのディスプレイです。輝度を上げて明るくするだけではダメで、それを画像処理でサポートするのが非常に重要となり、その役割を果たすのがアウトドアビューなので、無理せずに外でゲームが楽しめます。

 

作り手の“見ている世界”がそのまま“ユーザーの目”に届く

SH 最後が、ゲーム画質ですね。ここは重要な部分になります。zero2は10億色を表現できる端末ですが、特に画質のチューニングに力を入れています。実際にゲームメーカーさんやゲームクリエイターさんのお話を聞く機会があり、それぞれ立場もあると思いますが、画質やポリシーに違いがあるのがわかりまして、ぜひとも“作り手の想いを伝えたい”ということで、今回力を入れることになりました。

 

コンテンツが進化することで、ゲーム画質も変化してきました。例えば、映像系になりますと、SDRからHDRになったり、カメラが高性能になったり。ゲームに関しても、グラフィカルなものが増えてきて、画(え)がキレイになっています。そういったところで、クリエイターさんが制作現場で見ているコンテンツをお客様にそのまま見ていただきたいと思いました。元々我々はメリハリの効いた、もっと色の濃く鮮やかなものを表現しようと思ったのですが、クリエイターさんに「色味が違う」ということを言われて考えを改めまして、直々にアドバイスをいただきながらそのままの通りになるように色味を調整しました。

↑実際にお客様が遊んでいる室内の、蛍光灯の光が入って色味がちょっと浅くなるところなど、クリエイターとお客様の環境の差も加味したと語る関氏

 

— 作り手の“想い”というか、目に見えている世界がダイレクトにユーザーさんに伝わるなんて、デザイナーさんやイラストレーターさんにとっては、この上なく幸せなことだと思います! 軽さやディスプレイだけでなく、パフォーマンスについての「こだわり」も聞かせてください。

 

SH 我々開発陣も子どものころからゲームが好きで、よく遊んでいました。しかし、端末の開発にあたって、これまでは「スマホでゲーム」という感じではなかったのですが、ここにきて漸く、スマホでがっつりゲームをするような時代が来たのかなっていう感じです。

 

「ゲーム専用機(ハード)」と「スマホでゲームをすること」、私としては両者には大きな違いがあると思っていて、もともとゲーム専用機ってのは、ハードがあって、そのハードに合わせてソフトを作っているという仕組みですが、スマホは、ソフトはiOSとかAndroidっていうベース上に作って、ハードが後から出てくる。ゲーム専用機の逆なんですね。そしてスマホのハードも大分進化しています。zero2では新しいSnapdragonを搭載したり、RAMも8GBありますし、UFSも3.0っていう従来より読み出しの速いものを使っており、そのスペックを如何に使いこなすかというところが、端末メーカー側の仕事です。

 

一方ゲームアプリを作っている側は、それほどパフォーマンスの高くない端末でも、フラッグシップ級の端末でも、スペックに関係なくどんな端末でも遊んでもらわないといけないわけです。だからアプリ内で、フレームレートとか、解像度とか、画質とかに対しての設定ができる仕組みになっています。これは大体デフォルトで起動すると、低めの設定になっています。

↑このように、オプションでグラフック品質やフレームレートの設定が可能なゲームも。(画像は最高設定にした「Call of Duty:Mobile」)

 

そして、スマホのもうひとつ大きな特徴が体感温度で、ゲーム専用機はコントローラー部分が別にあって、触っていてもあまり熱いと感じませんね。しかしスマホは、ゲームをプレイする端末を直接触るので、CPUとかGPUの熱をお客様はストレスに感じます。なので、温度は上げたくないけども、アプリで用意してる最高設定でしっかり遊ばせてあげたい、っていうところがzero2の期待値だと思いまして、体感温度をしっかり抑えて、それぞれのゲームが用意してる最高設定で、しっかりフレームレートを維持したいというところを目指しました。

↑ゲーム内の最高設定で、リズムゲームならば1曲は最後まで遊べるか、バトルロワイヤル系シューティングゲームだったら1バトルできるか、端末が適正な温度のうちに遊べるようにしたいというのが調整のポイントと語る田邊氏。せっかく240Hzで、黒フレームを挿入してしっかり見えるディスプレイがあるので、それが適切な温度でしっかり長く遊べるようにしたいという想いがあったと語りました

 

そのために、放熱構造も、どうすれば温度が下がりやすいか、単純にCPUやGPUの調整だけでなく、何パターン以上も試して、体感で1度2度下がるような調整もして、温度を抑えています。もうひとつ、初代zeroから「パラレル充電」を搭載しておりまして、充電ICを通常1つのところ2つ搭載することで発熱源を分散させるというのも引き続きzero2でも対応しているので、先ほどの放熱構造と合わせて、より発熱しにくい構造を実現しています。

 

— 熱さってバッテリーの問題だとも思うんですけど、体感の熱さって?

 

SH 社内でもいろいろ触ってもらってテストをしましたが、こればかりは千差万別ですね。なので、とある負荷の重いゲームでずっと放置して、不特定多数に触ってもらったんですよ。そしたら、全然問題なかった人と絶対触れないって人に分かれました。同じ温度でも感じ方がすごい違って、耐性のある人が設計すると高い温度まで引っ張ってしまい、冬でも手に汗をかいて、そうするとすごいストレスを感じてしまうんですよ。せっかく軽くて、ストレスないパフォーマンスを謳っているのに、端末が熱ければものすごくマイナスになるので、温度はこだわって抑えるようにしました。

 

パフォーマンスグループのメンバーは、毎日会社に来てゲームをやっております。今回240Hzをしっかり訴求したかったので、240Hzで遊べるゲームを探しました。ゲームによって遊べるフレームって違うのですが、それは一般のお客様には大抵わからないことです。しかし、それを調べながら、これは遊べる、これは出ないというのを調べ、出るものを選び、それがしっかり遊べるようにというのを、4~5人のメンバーで遊んでいます。

 

ゲーマーにも、そうでない人にも使ってもらいたい

— ところで、ゲームってけっこういろいろなジャンルがあると思いますが、どういうゲームでの使用を想定して開発されましたか?

 

SH それはやはりシューティングゲームですね。近年増えつつあるTPS・FPSとかは、フレームレートが高い方が有利なので、「PUBG MOBILE」や「荒野行動」、「Call of Duty:Mobile」などの、Playストアのランキング上位のゲームを主に見ています。ただ、それだけではなく、いろいろなジャンルがあって、ゲームごとに負荷が違うわけですから。このゲームはCPUが重い、GPUが重い、などCPUとGPUの使い方も全然違っていて、数を見ていくしかないんです。なので、PUBGに特化した端末というのもあってもいいと思いますよ(笑)。ただスマートフォンはあくまでプラットフォームであって、いろんなゲームができてこそなので、様々なジャンルで240Hzで遊べる調整を探しています。

 

— 240Hzで遊べるゲームって、けっこうあるんですか? 240Hzに対応していないゲームでも何か恩恵はあるんでしょうか?

 

SH ゲーム側のフレームレートで言うと、120Hzに対応しているゲームがzero2の240Hzで遊べるということになりますが、調べていくと、駆動条件も合わせて、けっこういろんな種類があります。120Hzフレームレート非対応のゲームでも120Hzの更新に黒フレーム挿入はされますが、見た目に差はありません。ただ、タッチ操作の方は、ハイレスポンスで240Hzでしたら、それは表示関係ないので、反応は速いです。

 

— 昨今ではスマホのeスポーツも俄かに盛り上がりを見せていますが、やはり良い端末を使ったら良い練習になるのでしょうか?

 

SH プロゲーマーの方曰く、シューティングゲーム(FPSなど)で視認性が上がるので、すごくやりやすいそうです。一般的に、シューティングゲームが好きなゲーマーの方は、画質落としてでもフレームレートを上げる工夫をしている方が多いそうです。なので、デフォルトはフルHDの画質設定なんですけども、今回「ゲーミングメニュー」で、HD設定が選べます。HDに設定すると、もっと240Hzで遊べる時間が長くなりますので、そこがゲーマーが期待してる期待値だと思います。真剣勝負の世界では、もう画質よりフレームレートなんですよ。そこに合わせて240Hzは、やっぱり使えると思いますよ。

↑ゲーミングメニューでは、解像度切り替えの他、4倍速の「ハイレスポンスモード」やゲームに集中したい時の「通知ブロック」機能のオン・オフ、そして、プレイ中のゲームの攻略情報を簡単に探せたり、ゲーム動画が手軽に録画できたりします

 

— 今後は“ゲーミングスマホ”AQUOS zeroシリーズは、どう進化していくでしょうか!? 2020年以降の展望を教えてください!

 

SH 初代zeroから今回のzero2にかけて、開発で意識したのは、ゲームというのは“時間かけたらなんとなく強くなれる”ゲームと、“プレイヤースキルが問われる”ゲームの2種類があると思っていて、zero2の仕様は、後者の方に対して大きく貢献する仕様だと思います。なので、よりプレイヤースキルをサポートできる端末に進化をしていきたいと思っていて、まだ具体的なことは言えないんですけども、もっとプレイヤースキルをよりアップできるような端末を提供できるようになりたいですね。

 

前者と後者の具体的な割合はわかりませんが、前者のようなタイプは「軽量」というように、わかりやすい訴求ができるのですが、後者になると、当人のすごい練習量とかもあると思うんですけれども、メーカーでは本当に本腰を入れて開発しないとそういうものは作れないと思っています。逆にzeroシリーズはそういうコンセプトを持って勝ちにいけるモデルだと考えていて、そこに答えを出しながら、ゲームに興味のないお客様でも使ってもらいたい思っています。

 

やっぱり“普通のAQUOS”が欲しい人も、“軽いAQUOS”が欲しい人もいるだろうし、そういった人たちにも届けたいと思って、軽さだけ追及するならカメラ1個でいいのですが、ちゃんとカメラも2眼搭載して、“ハイエンドのスマートフォン”としての日常使いで使えるというポイントもしっかりキープしつつ、最軽量を更新していけたらと思います!

 

— シャープの皆さん、ありがとうございました!

 

次回は筆者が実際に、約1か月間使ってみた感触をお伝えします。お楽しみに!

 

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