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音楽
2017/1/17 21:00

渚ゆう子「東京に三日 田舎に四日」が提案するこれからのライフスタイル

ギャランティーク和恵の歌謡案内「TOKYO夜ふかし気分」第7夜

あけましておめでとうございます。ギャランティーク和恵です。皆さんどんなお正月を迎えましたか? ワタシは、前回のコラムにも書いたように、大晦日は我がお店「夜間飛行」でカウントダウンをして朝まで営業、そのまま酒の匂いを漂わせながら飛行機に飛び乗り、故郷の福岡までひとっ飛びで帰りました。到着するや否や、実家に向かう前に行きつけの長浜ラーメンの暖簾をくぐるワタシ……。福岡に帰ると、まるでノルマを達成するかのように、意地でもラーメンを食べないと気が済まないのです。

 

そして、可愛い甥っ子ちゃん姪っ子ちゃんにお年玉をあげて、一緒にお買い物に行ったりドッヂボールをやったりバドミントンをやったり、結構なハードスケジュールでした。はしゃぎ過ぎて久々に犬のウ○コも踏みました。田舎ならではの出来事です。甥っ子ちゃんが心配そうにワタシを見つめていました……。

 

正月を含めて、福岡へは年に3回ほど帰るようにしています。でもその帰省のペースもここ3年くらいの話で、それまではむしろ実家には足を運ぶことはありませんでした。ワタシのHPのなかに「夜の七変化」というタイトルで、2003年から2013年の10年間に書きためていったコラムがあるのですが、そこには、貧乏生活をしながら歌手活動を始めたころから現在に至るまでの苦楽が綴られています。特にそのなかで常々出てくるトピックが、福岡に住む両親との確執です。ゲイであり、そして女装癖があり、さらには歌手という堅気ではない職業を選んだワタシが両親を納得させることなどできるわけもなく、故郷に帰っても実家には立ち寄らず、ただただ接触を避け、両親に対し頑なに心を閉ざしていた時期がありました。

 

しかし、歌手を始めて10年が経ったころでしょうか。ワタシが参加するユニット「星屑スキャット」のメンバー、ミッツ・マングローブさんがテレビに出演することが多くなっていき、それに合わせて星屑スキャットもテレビ出演することが増えていきました。わたしがテレビ番組に出演しているところ偶然見ていた母が、女装して歌っているワタシの姿を見て、「この声はワタシの息子よ! 私には分かるわ。だって、私が産んだ子ですもの!」と、母親の本能で見抜いてしまったのです。

 

ワタシがゲイとして目覚めた12歳くらいから、かれこれ25年くらいものあいだ、親を悲しませたくないという想いで、自分の素性がバレることを恐れて生きてきたはずだったのですが、星屑スキャットでのワタシの活動を知ってから母親は、悲しむどころか「ミッツさんに会いたい」だの、「女装すると私に似てない?」だの、こちらの心配をよそに結構楽しんでくれていて、ずっと悩んでいたカミングアウトが思っていた以上にすんなりと受け入れられ、これもミッツさんが有名になってくれたおかげだな……と、いつも揉めてばっかりの彼女にも、このときばかりは神様のように思え、天に向かって手を合わせたものでした。

 

それからというもの、いままで一切出来なかった親孝行というものを実行すべく、年に3回ほど実家に帰るようになりました。元気なうちに、たくさん美味しいものを食べて、たくさん話して、それくらいしかワタシには出来ませんが、なるべく時間を見つけては帰るようにしています。しかし、最近は飛行機も随分と安くなりましたね。LCCのおかげで、往復1万円で帰省することも可能になり、週1のペースで行き来出来るくらいになりました。なんなら、実家を拠点にして東京へ仕事に通うことだって出来そうです。そこで頭に過ぎったのが、渚ゆう子さんの「東京に三日 田舎に四日」という曲。なかなかに斬新なタイトル、そして斬新なライフスタイルの提案です。この曲がリリースされた1973年頃は、飛行機や新幹線だって相当高かったでしょうが、そんな贅沢な暮らし方も、いまならば可能かもしれません。

 

【今夜の歌謡曲】

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07.「東京に三日 田舎に四日」/渚ゆう子
(作詞・作曲/浜口庫之助)

 

もしも、ワタシの両親のどちらかが倒れてしまい、介護が必要な時がやってきたとしたら、実家を拠点とした生活も視野に入れなければいけません。歌手は身体ひとつで出来ますから、どこに住んでいようと関係ありませんし、あとは新宿のお店「夜間飛行」をどうするかです。毎週4日はお店のカウンターに立っているワタシですが、それを週末の3日だけにして、あとの4日はバイトちゃんにお任せしようかな、なんて考えています。まさに「東京に三日 田舎に四日」の実現です。

 

そうなると、福岡での4日で何もしないわけにもいかないし……。そこで考えたのが、ワタシが育った町にもう一軒スナックを出すことです。東京で暮らしてきて約20年、ワタシが東京で得たものを何か地元に還元したい……そういう気持ちがここ最近強く湧くようになりました。家族や田舎から逃げるように住み始めた「東京」という街にワタシは随分と救われましたし、ワタシはもう充分「東京」という都会の恩恵を受けたつもりです。あとはその恩恵を地元へ還元して……と、まぁ地元の方たちにとってはいい迷惑かもしれませんが、ワタシにとって当時必要だった「逃げ場」を地元にひっそりと作れたら、なんて思ってます。小さな町での人間関係に疲れた主婦から、家庭に息が詰まる旦那さん、反抗期のヤンキーたちに、誰にも言えない性癖を持つ方まで、いろんな人たちの息抜きの場として、週に4日だけ地元でスナックのカウンターに立つ、そんな生活を送るのも悪くないな……なんて妄想しているこのごろ。まぁ、それよりも親がずっと元気でいてくれることが何よりなんですけどね。

 

<和恵のチェックポイント>

作詞・作曲はハマクラさんこと、浜口庫之助さん。島倉千代子さんの「愛のさざなみ」や石原裕次郎さんの「夜霧よ今夜もありがとう」、マイク真木さんの「バラが咲いた」など、たくさんのヒット曲を作られた昭和歌謡の名手です。ハマクラさんのお人柄なのでしょうか、素朴でやさしい歌を数多く作られています。

 

「愛のさざなみ」にも使われているパヤパヤコーラスでヒッピーな空気のAメロから、グイっと歌謡グルーヴに展開されるサビなんかに、つい腰が揺れてしまいます。2番で「大阪に三日 田舎に四日」と、ちゃんと大阪への気配りもしているところもポイント。東京以外田舎だといったら大阪の人、怒りますもんね……。もしくは大阪出身でもある渚ゆう子さんへの気配りかもしれません。1973年にリリースされたこの曲は、高度経済成長の中で目まぐるしく都市化してゆく社会への警鐘のようにも思えますが、今の時代にこそ共感を得るライフスタイルなのではないでしょうか。ヒッピー歌謡の名盤です。

 

【INFORMATION】

ギャランティーク和恵さんが昭和歌謡の名曲をカバーする企画「ANTHOLOGY」の第4集「ANTHOLOGY #4」が、2017年2月1日(水)に配信&CDでリリースされます。それに合わせて、ライブも連動して開催。詳しくはANTHOLOGY特設ページをご覧ください。

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「ANTHOLOGY #4」

2017年2月1日(水)発売
配信:600円(税込)日本コロムビアより
CD:1000円(税込)モアモアラヴより
iTunes store、amazon、他インターネットショップにて

 

<曲目>
01. マイ・ジュエリー・ラブ(作詞:篠塚満由美 作曲:馬飼野康二)
02. 孔雀の羽根(作詞:千家和也 作曲:筒美京平)
03. エレガンス(作詞:橋本 淳 作曲:三枝成章)

 

20161231-i01(2)

LIVE「anthology vol.4」

日時:2017年1月28日(土)
会場:南青山MANDALA(外苑前)
時間:開場18:00 開演:19:00
料金:4500円(1d付)