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2018/9/15 20:00

【ムー究極の食】閲覧注意! 来ちゃうのか? まさかの「G」食時代(1)/グルメの錬金術師

ネットを見ていて、思わず声が出た。

ブラジルの大学で作られたゴキブリパンには、乾燥させたゴキブリが練り込まれる。

 

「焼くなよ、そんなもん!」

 

ゴキブリパンである。リオグランデ連邦大学で食品工学を専攻する女子大生、アンドレッサ・ルーカスとローレン・ミーガンの2人が、ゴキブリを乾燥させて粉末にし、パン生地に練り込んで焼いたのだ。

 

昆虫食を最初に食べてから、7~8年になる。ミルワーム、セミ、コオロギ、バッタ。マダガスカルゴキブリをマダゴキと略し、タガメの入った酒を洋ナシのにおいみたいだと飲む。

 

正直、飽きた。

 

最初はもの珍しさ、あるいは小さな冒険、度胸試し。でも歯に挟まるんだ、脚が。食べた後、歯に何か挟まっているなあとつまみ出したらゴキブリの脚だったこともある。

 

それに今や高田馬場のカフェ『米とサーカス』が昆虫食を常時出し、テレビ局のイベントでコオロギ入りのラーメンに列ができ、アマゾンでは食用コオロギの粉末が売られている。珍しくもなんともない。

 

国連食糧農業機関によれば、現在、人間が食べている昆虫は1990種類(!)。たまたま日本人が食べない、白人が食べない、それだけに過ぎず、世界の大半からすれば、「虫を食べないの? なんで?」なわけだ。

 

仕事で一緒になった中国人カメラマンに昆虫食のことを聞いたら、

 

「セミ食べますよ、おいしいよ、フライパンでチャーして塩コショウ、晩ごはんにうれしい」

 

中国じゃスーパーでパックに入って売られているんだそうですよ、セミ。

 

そんなものを奇食怪食扱いするなんて、アメリカ人が日本人に、おまえらフグ食べるんだな、毒あるのに食べるんだな、と好奇心ミチミチで訊くのと同じで、ただの田舎者だ。

 

かといって昆虫食を愛する人たちのように、まるで鮎の解禁のように夏のセミを楽しみに待つという情熱はない。たしかにセミは甘エビの頭みたいでおいしい。昆虫の中で、私が食べていいと思うのはセミとイナゴぐらいだ。しかしだからといって、夏を楽しみにするほどおいしいかといえば、私は甘エビが好き。

 

昆虫食は未来の食糧なのだという。

 

現在の世界人口は約76億人。2050年には90~98億人になるとみられている。人口が増えれば、それだけ食料の需要は高まる。しかし地球上の耕地面積が決まっている以上、耕地が人口増加に見合っただけ増えるとは考えにくい。やがて全世界で食糧供給が不足し、未曽有の食糧危機が訪れる。

 

その危機を乗り切る方法は、現在の家畜よりも高効率で繁殖し、栄養価が互角かそれ以上の畜産物が必要だろう。その筆頭が昆虫だという。未来には手ごろなタンパク源として昆虫が養殖され、肉や魚の代わりに日常的に食べられるようになるはずだ……。

 

2013年5月13日、国連食糧農業機関は昆虫の食糧化に関する報告書を公表した。それによると昆虫は<偏在性、餌料変換率[feed conversion rate]が>が高く、<生活環中に環境に与える被害が少ない生物>なのだそうだ。そして<たん白質及び良質の脂肪を多く含み、カルシウム、鉄分及び亜鉛の量>が豊富で、栄養価が高い。養殖方法によって食用としての衛生管理は可能とのこと。

 

……「生活環境に与える被害が少ない」って、わかりますけどね、言いたいことは。でもね、ゴキブリ一匹に悲鳴を上げて逃げ出す人たちにそれを食べさせる?

 

それに食糧危機って本当に来るのか? もし本当に食糧危機が近いのなら、農作物の輸入自由化反対どころの騒ぎじゃなくて、農業の法人化を認めるとか漁協や農協の利権を解体するとか、虫を食べる前にやることが山積みなのに、その気配はまったくない。

 

石油と同じではないのか。毎年毎年、石油は30年後に枯渇する。なぜいつまでも枯渇しないかといえば、技術革新が深海の油田開発を可能にしたから。今後、技術さえできれば、石油はほぼ無限に採掘可能らしい。食料もまたそうではないのか?

 

農林水産省大臣官房食料安全保障課の『2050年における世界の食料需給見通し』によれば、92億人を養うためには、食料生産全体を1.55倍引き上げる必要があり、特に穀物は2倍の生産量が必要になる。

 

これを可能にするのが化学肥料だ。

 

19世紀から20世紀にかけて16億人から60億人まで世界の人口は増加した。ほぼ4倍である。にもかかわらず世界的な食糧危機は起きていない。なぜかといえば、穀物生産量の増加が人口増加を常に上回ったからだ。その秘密が化学肥料なのだ。収穫量が横ばいのアフリカや人口の急激増が見込まれる中国・インドで、化学肥料の利用が進めば、生産量は飛躍的に増加する。当面、食糧が不足する心配はない。

 

エコロジーだの有機農法だのが一面的で情緒的だと思うのは、こういうシンプルな事実を知った時である。科学って素晴らしい。

 

だから今後、昆虫を食糧生産に利用するとしても、せいぜい牛豚ニワトリの飼料に配合する程度で、人間が食べる必要はないのだ。

 

高栄養のゴキブリパン

ブラジル人の学生は、なぜゴキブリパンを作ろうと思ったのか?

 

報道によれば、ゴキブリが高蛋白源(自重の70%を占める)で9種類の必須アミノ酸のうち8種類を含み、オメガ3やオメガ9など高品質の脂肪酸も有しているからだという。そしてゴキブリ粉末を小麦に対して約10%加えることで、パンのタンパク質含有量を1.5倍にすることができたそうである。

 

養殖面積が小さくエネルギー効率のいい昆虫の食用化を考えることは、食糧危機に対しての備えとして重要だという。

 

それなりのインテリがこうした考えだとすると、貧乏人に虫を食べさせるためにありもしない食糧危機が来るんじゃないかと疑ってしまう。諸星大二郎のマンガ『食事の時間』は、貧乏人にゴミを消化できる細菌を植え付け、金持ちは食事を楽しみ、貧乏人はゴミを食べるという未来の話だった。そしてゴミの次は糞尿を食べさせようし、そのために作られた人工細菌が暴走する。

 

シャーデンフロイデ、ドイツ語で他人を貶めることで感じる快感。他人の不幸は蜜の味だ。

 

昆虫食に対する愛は私にはないが、昆虫食が未来の食としてあり得るか否かを検証したいという好奇心と義務感はある。

 

10%程度なら小麦粉に入れても味は変わらないのだそうだ。

 

……信用ならない。高蛋白質ということは強力にダシが強いということだ。そんなものを混ぜて味が変わらない? ウソをつけ。パンにかつお節を混ぜるようなものではないか。それに私が昆虫食を好きになれないのは、独特の臭いがあるからだ。牛肉には牛肉の、魚には魚の臭いがある。昆虫にもある。虫かごの臭いだ。カブトムシやスズムシを飼うときにただようあの臭いを、おいしそうだとは私は思えない。ゴキブリにあの臭いがない? 信じられない。

 

ゴキブリパン。それは本当に未来を予感させる、おいしいパンなのか? ブラジルの女学生たちは新しい食の可能性を拓いたのか?

 

私はうれしくなる。シャーデンフロイデとは別の感情、他人が正義と信じることを突き崩すことで感じる感情を何と呼べばいいのか。

 

さあ、ゴキブリパンを焼くぞ!

ゴキブリパンを食べる開発者の女学生(YouTubeより)。

*次回は9月7日公開です。

 

文=川口友万

 

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