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ムー
2018/9/23 20:00

【ムー究極の食】閲覧注意! 焼くぞゴキブリパン!「G」食時代(2)/グルメの錬金術師

ゴキブリパンを作るのはいいが、ゴキブリをどうするか? 当たり前だが、そこらをチョロチョロするゴキブリなんて食べられない。雑菌の塊なのだ。

液体窒素で冷却され、真空チェンバーに格納されるデュビア。

 

幸いなことに私の友人は某メーカーのエンジニアにしてゴキブリ養殖会社『ヒールリッチ』の経営者である。話せば長くなるが、いろいろと事情があり、彼はゴキブリの養殖を副業にしている。

 

ゴキブリを養殖してどうするかと言えば、魚や爬虫類のエサにする。一番のマーケットはアロワナ。デュビアという小型のゴキブリがアロワナのエサに適しているのだ。

 

アロワナは中国の金持ちに大変人気が高い。龍魚と呼ばれ、富と幸運をもたらす魚とされている。当然、個体の価格も高い。そうであるならエサにもこだわるだろう、生き餌を与えるだろう、生き餌で一番人気はデュビア。そこでデュビアでひと儲けをたくらみ、会社を作ったわけだ。

 

彼はエンジニアとしての知識と人脈をフルに使い、世界最高品質のデュビアを作ってしまった。通常のデュビアに比べて脂質が3倍、タンパク質が1.4倍である。いわばアメリカ牛に対する神戸牛。さらに、その品質保証にNASAによる栄養分析表をつけている。三ツ星レストランが採用みたいなものと思えばいい。アロワナのエサとしては文字通りに世界唯一かつ最高品質である。

 

そういう雅な育ちのゴキブリ様なので、生育環境も清潔。清潔だが、部屋の中に置かれた数十のコンテナの中がすべてゴキブリで、全部で推定10万匹と聞き、足がすくんだのは内緒だ。生理的にダメ。私は極めて普通の日本人なので、ゴキブリがお金に見えたり食べ物に見えたりはしない。

 

彼にかくかくしかじかと内容を伝え、ゴキブリパンを作るためのゴキブリ粉末を作れるか、相談する。

 

「デュビアの体重の60%を急速乾燥すればアンモニア臭を抑えた良粉が得られると思います。凍結乾燥の検討が必要でしょうか。何グラム必要ですか?」

 

素晴らしいレスポンス。50グラムあれば余裕です、と伝える。凍結乾燥、ようするにフリーズドライにすれば、あとはフードプロセッサーで簡単に粉末にできる。しかしそんな設備ある? 食品加工会社でもないのに。

 

「大丈夫ですよ、会社の使うから」

 

会社の? 本業の方の?

 

超真空でゴキブリを乾燥させる

フリーズドライの基本は真空と超低温。気圧が下がると100度以下でも水は沸騰する。山でごはんを炊くと失敗するのは70度前後で水が沸騰してしまうからだ。

 

気圧がどんどん下がっていくと沸点はどんどん下がる。そして真空中では零度以下で水が沸騰する。つまり氷がそのまま水蒸気になってしまうのだ。

 

まず対象を氷点下で急速に凍結させる。カチコチになったところで真空にすると、含まれている水分=氷がすべて蒸発、対象の形状はそのままにカラカラに乾燥させることができるわけだ。

 

真空にするには専用の機械が必要だが?

 

「電子顕微鏡の真空チェンバー使うので大丈夫ですよ」

 

さらっとスゴイこと言いましたね、今。電子顕微鏡の標本作る機械でゴキブリのフリーズドライ作るの?

 

「3億円ですよ、3億円」

 

3億円の電子顕微鏡でゴキブリのフリーズドライ。

 

「凍結用の液体窒素も手配しました」

 

あはは、バカじゃなかろうか。ちょっとした好奇心のために、ゴキブリを液体窒素でマイナス196℃に凍結、絶対真空で乾燥させる。大掛かりにもほどがある。

 

翌週、液体窒素が届くのを待って実験開始。作業が進むごとにメールで作業風景の画像を送ってもらった。

 

最初はゴキブリの液体窒素漬け。もうもうと白い煙が上がり、やがてそれが晴れるとゴキブリ。だははは、面白すぎる。

 

続いて真空。ごつい真空容器にゴキブリを入れ、排気する。

 

「2時間ほどするとデュビア 体内の氷がガスへと真空中で昇華するはずです」

 

ゴキブリは外骨格だから、鎧を着ているようなものだ。真空でフリーズドライにしても、形が変わらず、うまくいっているのかいないのか、外見からはまったくわからない。どこが止め時なのかわからず、結局20時間も超真空状態にさらしていた。

 

「暇だったんで、プラズマ中でデュビアが生きてるかどうかやってみたら、あいつら生きてましたよ」

 

何をやってるんですかね、この人は。デュビアを別の真空容器に入れて高電圧をかけ、プラズマを発生させてもデュビアは死なないって、何も役に立たない情報ですね。

 

数日後、自宅に乾燥してパリパリになったデュビアが届いた。さすが超真空。ゴキブリパンの製作開始である。

20時間後、デュビアはフリーズドライになった。

 

*続きは9月14日に公開です。

 

取材協力:ヒールリッチ http://heal-rich.com/

 

文=川口友万

 

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