1995年、アメリカ合衆国自治領のプエルトリコで、家畜の連続惨殺事件が発生した。ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウサギ、イヌ、ニワトリ、ガチョウ……いずれも身体に小さな穴があけられており、そこから体内の血液だけがきれいに抜きとられていたのだ。

やがて目撃証言から、怪獣の姿が浮かびあがってきた。体長は約90センチ、頭は卵形、目は大きく真っ赤で、鼻孔らしき小さな穴があり、口からは牙が2本出ている。手足の指は3本しかなく、かぎ爪がのびていた。全身は茶褐色の毛で覆われているが、イメージとしては、尾のない恐竜のような姿をしていた。
動きは俊敏で、高さ5〜6メートルもある木立を軽くジャンプして越えて逃げていったケースもある。
マスコミは、この未知の怪獣に「チュパカブラ」と名づけた。スペイン語で「ヤギの血を吸うもの」という意味だ。
その後、チュパカブラは海を渡り、メキシコ、アメリカ、コスタリカ、チリなど、世界各地で目撃されはじめるのである。
ここでは、第2のチュパカブラとして怖れられるブルードッグについて紹介しよう。
2005年を境に、アメリカのテキサス州を中心に家畜を襲い、生き血を吸うUMAが出没。ヒツジやニワトリなどの家畜が喉笛を咬み切られ、血を吸われて殺されるという事件が相次いだ。現場では野犬ともコヨーテともつかない奇妙な動物が目撃されていたが、やがて青みがかった醜悪な姿がビデオやカメラに撮影されると、その体色から「ブルードッグ」と呼ばれるようになった。
よくチュパカブラと混同されるが、本来のチュパカブラとは姿形がまったく異なる別物であり、いわば新チュパカブラといった存在である。
そのブルードッグを殺害したという事件が、2011年9月6日に起こっている。ミシシッピー州シンプソン郡メンデル、ホールの住人トリット・バーナードが、敷地内に侵入してきた野獣をライフルで射殺。よく見ると体毛がなく青みがかった皮膚で、後ろ足が前足よりも少し短い。また、歯が牙のようにむきでていた。
2週間の間で、近所の家畜小屋が襲われるという事件が頻発しており、「犯人はこいつかも?」と、思ったという。だが、死体は詳しく調査されることもなく処分されてしまった。

ブルードッグの正体について動物学者や専門家は、悪性の疥癬にかかったコヨーテだという。だが、そうとはいい切れないと、アマチュア未確認動物学者ジョン・ダウンズは反論する。彼は、テキサス州の荒野には皮膚が青い種類、そして赤い種類が生息していると指摘。アメリカ南西部各州およびメキシコで写真やビデオに撮影されるのはこうした未知のオオカミ種の動物なのだという。
一説には、コヨーテと野犬などのハイブリッド=混血種ではないか、ともいわれているが、決め手はない。
2010年7月にはオクラホマ州ニーカムセで、高校生のグループによって、前足を高くあげて歩行するブルードッグの姿が撮影されている。野犬なら二足歩行はしないはずだ。死体がDNA鑑定されたという噂もあるが公表されておらず、ブルードッグの正体はミステリアスなままである。
(「ムー的未確認モンスター怪奇譚」より)
文=並木伸一郎
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