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2019/8/18 20:15

【ムー的グルメの錬金術師】石油肉がタンパク質クライシスを救う!? 代替肉最前線・補足

かつて石油からタンパク質が作られていたことを知る人は少ない。今、その技術の復活が期待されている。

人間向けでは植物由来の代替肉を各国が発売を始めている。

 

食糧危機を危惧するようなニュースが増えている。それも道理、1970年代に40億人台だった世界人口が、今や75億人を超えているのだ。しかもかつての発展途上国が中進国、先進国へと成長し、爆発的な消費社会を作り出している。いずれ現状の食糧生産力では世界人口を養えなくなるだろう。

 

タンパク質クライシスとは、そうした食糧危機のひとつの側面だ。人口増やライフスタイルの変化により肉や魚などの動物性タンパク質が不足する。

 

実際のところ、食糧をカロリーベースだけで見れば、広義な意味での食糧危機はそうそう起こらないらしい。耕地面積当たりの生産性は60年代から現在まで2倍以上伸びている。省力化も進み、少ない人数が狭い耕地で大量の収穫をあげられるようになった。アフリカや中近東、中国の内陸部などに近代農業を導入すれば、生産量は桁違いに伸びるだろう。しかし人間は野菜と小麦だけで生きているわけではない。

 

食肉の供給はすでに需要に追いつかなくなっている。このままでは食肉市場は高騰、文字通りのタンパク質クライシスが起きるだろう。では食肉の生産を増やすことは可能なのか?

 

食肉の増産には、頭数の増やすとともに低価格で肉質を上げる飼料が欠かせない。狂牛病が流行する前、畜産業界では肉骨粉を飼料に混ぜていた。成長が早くなるからだ。現在、肉骨粉は一部を除きほぼ使えないため、魚粉への切り替えが進んだ。

 

しかし魚粉は畜産以前に魚の養殖にも使われる。そのため、畜産と養殖の双方の需要を満たすだけの魚粉を確保することは、すでに難しくなり始めている。さらに魚粉は為替変動や不漁の影響を受けやすく、原価が安定しない。販売価格も流動的になり、使いづらい。動物性タンパク質の増産には、価格が安定し、なおかつ安価で魚粉の代用となる飼料用タンパク質が必要なのだ。

 

当然、昆虫もタンパク質である

魚粉の代用として注目されているのが昆虫だ。食糧難で昆虫が食卓に上るという意見もあるが、現実的ではない。昆虫を食べなくとも、昆虫を飼料に使った鶏なら、タンパク質の総量に差はない。コオロギと鶏なら、ほとんどの人は鶏を食べるだろう。

 

飼料としての昆虫は、特に養殖魚には非常に適している。ハエのウジを工業的に無菌培養し、飼料にする株式会社ムスカによると、ウジを与えた養殖の真鯛では、最大40パーセントも大きくなる個体もあった。抗生物質や抗菌剤を使わなくても、罹患率が極端に下がる。伊藤忠商事が提携、市場から資金も集まり、順調に成長している。

 

他にも酒粕や焼酎粕、ユーグリナなど新しいタンパク源が次々に見つかっているが、中でもダークホースと呼べるのが石油タンパクだ。1970年代に石油からタンパク質が作られたのだ。

 

化学製品を扱う大手メーカーから話を聞くことができた。それによると原料は天然ガスや石油だ。天然ガスを酸化させたものがメタノールであり、アクリル樹脂などプラスチック製品の原料となる。そしてある種の酵母菌を使い、石油の場合はノルマルパラフィン、天然ガスの場合メタノールをエサとして食べさせる。そして増やした酵母菌を食用にする。

 

できあがった石油タンパクは、養殖魚や家畜の飼料に魚粉の代わりとして添加された。水産庁の試験では、魚粉のエサよりも30%も成長が良いことがわかった。特に高水温で生育するコイ、ウナギで良い結果が出たという。豚の場合、エサとする大豆粉の3%を石油タンパクに置き換え可能と試算された。

 

ところが量産を始めるなり、消費者団体からクレームが入った。石油は人体に有害で、それを家畜のエサに使ったら、飼料に残留した化学物質が肉にも残り、健康を害するのではないか? というのだ。

 

決定的になったのは旧厚生省の課長による国会答弁だった。

 

「消費者の抱く不安を除けない中で、そういうものを開発しようとしていることはよろしくないと。それが決定的になって、今は、これはできないと」(担当者)

 

こうして石油タンパクは市場に出ることなく消えてしまったのだが、ノウハウはいまだ健在だ。今後、飼料用タンパク質が不足するとすれば、石油タンパク質の出番である。魚粉の代わりに、実績もある石油タンパクがタンパク質クライシスから世界を救うかもしれない。

 

温故知新、忘れ去られた技術、石油タンパクに注目である。

大塚製薬は健康食として代替肉『ゼンミート』を発売した。食肉市場の需要を減らせるか?

 

文=久野友萬

 

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