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2019/10/13 20:15

【ムーグルメの錬金術師】時価総額4兆円越え! 未来の肉『ビヨンドミート』を試食

フードテックの先駆けとなった代替肉『ビヨンド・ミート』。開発・販売を行っているビヨンド・ミート社は、アメリカで2019年に上場するなり38億ドルをつけ、半年後には時価総額400億ドル(4兆5000億円)になろうというモンスター企業である。

パッと見は肉だが、よく見るとなんとも見たことのない奇妙な食品。

 

ビヨンド・ミート社の『ビヨンド・ミート』は、えんどう豆を主原料をした肉もどきなのだが、それがなぜここまでフードテックの雄となったのか?

 

創業者で同社CEOのイーサン・ブラウンは元燃料電池のエンジニア。電力グリッドの構築にも携わった経験があり、環境問題を技術によって解決することを実践してきた人物だ。そんな彼の長年の疑問は、本当に肉には動物は必要なのか? ということだった。

 

科学の目で見れば、肉はタンパク質と脂肪とミネラルの複合体だ。栄養素だけであれば、すべて植物由来の原料でそろえることができる。もし植物の栄養素を組み合わせて、肉を再構築することができたら?

 

イーサン・ブラウンは肉食がもたらすマイナス面を考えた。まず健康。動物由来のタンパク質や脂肪は心疾患やガンなどの大きな要因だ。肉を再構築する課程で、こうした疾患の原因を取り除くことは可能だろう。

 

畜産が環境に与える負荷は大きい。牧草地を確保するために多大な面積の森林が伐採され、本来なら森林が吸収するはずの二酸化炭素を大気中に滞留させる上に森林という資源を失うことになる。また同じ面積の畑でとれる大豆タンパク質と牧畜地の牛のタンパク質量は10倍も開きがあるという。牛はそれだけ非効率な栄養源なのだ。さらに牛の出す二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスは他の畜産を上回り、全世界の温室効果ガス排出量の18%に達する(米国科学振興協会による)。これを削減することは大きな意味を持つ。

 

畜産は動物を殺す。アメリカでは9割のベジタリアンが動物を殺したくないためにベジタリアンになる。代替肉は動物を殺さずに肉を生産可能にする。これからは動物の肉ではなく、植物の肉を食べるのだ。

 

つまり現在の代替肉は、日本の大豆ミートのように食糧危機に備えて生まれたものでもなければ、台湾素食のように宗教上の理由から作られるものでもない。環境問題の解決策なのだ。代替肉を食べることは、そうしたソリューションに参加することであり、エコバックや無農薬野菜と同じファッションだ。食べて応援というコピーがあったが、食べて地球を救おうという、食べ物の形をした思想なのだ。

 

焼くと激変、これは未来の肉だ!

アメリカで大人気のビヨンド・ミートだが、日本では発売未定。三井物産がビヨンド・ミート社に出資、日本での発売を予定していたが中止したとのアナウンスがあった。だから当分の間、日本でビヨンド・ミートを食べることはできない。

 

食べられないと思うと無性に食べたくなるのが人の性である。アメリカへ出張する友人に買ってきてもらうことにした。

 

大手のスーパーならどこでも売っているそうで、単なるミンチからハンバーグやミートボールに成形したものなど種類は豊富。これは画期的なことで、これまで家庭で調理できる大豆ミートは存在しなかった。ビヨンド・ミートは本当に肉を目指しているのだ。

 

450グラム入りのミンチ肉バージョンを買って来てもらった。食肉コーナーで売られているそうで、それはすごい。原料は大豆なのに。

 

日本まで冷凍で持って来てくれたビヨンド・ミート、解凍した姿は正直いえばマズそう。封を開けるとさらにマズそう感が高まる。これまでの大豆ミートが肉の食感や味を代替させようとしてきたのに対して、イーサン・ブラウンは大豆を使って肉を再構築するという表現をしている。味や食感が肉に近くなるのは結果であり、目的は植物性タンパク質や植物性油脂で肉を再構築することだという。

 

(再構築するとこうなるのか)

 

ドッグフードである。缶から出して食べさせるタイプの。

 

ビヨンド・ミートに触るとさらにその感が強い。脂肪のような白い粒が練り込まれていて、人間が食べる感じがしない。それに肉は混ぜるとまとまっていくが、その感じがない。バラバラである。比較のために同じグラム数の牛肉ミンチを用意したが、ここまで触った感じが違うのかと驚いた。

混ぜると非常に強く残飯感がある。解凍のせいか、色も悪い。

 

とてもこんなものが肉をビヨンドできるとは思えないが、とりあえず焼いてみる。塩コショウだけのシンプルなハンバーグを作って焼く。焼き始めて5分、牛肉のハンバーグはふっくらと中央部分が盛り上がり、じんわり染み出る肉汁がおいしそうだが、ビヨンド・ミートは平らでまったく変化がない。表面に肉汁も出てこない。

 

アメリカで人気でも日本で不人気のお菓子や食べ物はいくらでもある。謎のゴムみたいなお菓子とか青いケーキとか。ビヨンド・ミートもその類いで、だから三井物産は手を引いたのか?

 

焼き上がったビヨンド・ミートは、それでも生の状態よりはずっとマシではあった。香ばしい匂いがおいしそうだが……。

 

「なんだこれ、うまっ!」

 

肉だ肉、なんだ、うまっ!

 

すごいぞ、科学!

 

ドッグフードなどと茶化して申し訳ない。肉のミンチの噛んだ粒子の感じ、染み出す肉汁、完全に肉だ。そして肉なのだが、何の肉かと言われれば、牛肉が一番近い。これは売れるわけだ。

左がビヨンド・ミート、右が牛肉。

 

原料は大豆やエンドウ豆、米のタンパク質、ココナツオイル、キャノーラ油、酵母エキス、ココアパウダー、りんごエキス、コーンスターチ、レモンジュース、マルチデキストリン、セルロース、レシチンなど。肉汁はビートを使い、極力、自然素材で揃えている。

焼いてみる。左がビヨンド・ミート。肉汁がまったく出ない。

 

味の決め手は酵母エキス、酵母に作らせた化学調味料だが、これで味がバシッと決まっている。うまいのだ。後味がいつまでも尾を引くのは、大量に使われている証拠だ。さらにコハク酸(貝類のうま味成分)で味に奥行きを出している。

 

無添加主義の人は食べられないが、動物愛護の観点でベジタリアンになっている人にこれはおススメ。そこらのファーストフードのハンバーグよりよほどおいしい。

 

日本でビヨンドさせるとすれば、トロだろうと思う。ビヨンド・ファッティツナだ。カニカマを生み出した日本のフェイク食品技術は、今こそ海産資源へと向くべきだろう。

 

それにしてもすごい。これが大豆から? 信じられない。

焼いたら肉である。驚いて各所に電話したぐらいに肉。信じられない。

 

文=久野友萬

 

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