エンタメ
2016/7/17 13:00

高樹沙耶も名乗る“ナチュラリスト”って結局、ナニモノ?

編集部から「参院選出馬の高樹沙耶さんが名乗る“ナチュラリスト”って何ですかネ?」とのメールが飛んできた。「自然主義者、ということらしいですけど、マクロビとかビーガン食を入り口として傾倒していく人、最近多いですよね。SNSで饒舌なのも特徴ですよね。別に悪くないけど、なんか正体がよく分からないですよね?」。

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ナチュラリスト……それは自然主義者と訳されるらしいが、つまりは積極的に自然と関わり交わり、人間界と自然界の融合を図っていく人たち。人間による “ 不自然な”自然支配、地球環境の汚染を唾棄し、文明にまみれ汚れた現代人たちが失ってしまった野生の感覚や、自然を愛おしむ心、ひいては自己の自然治癒力を取り戻す。そういったライフスタイルの良さと美しさを賛美し、自然の力や「人間は自然の中で生かされているに過ぎないのだ」という原理にまだ気づいていない、無知で哀れな都会人たちへ啓蒙活動を行うのが自分の生かされている使命と信じてやまず、それゆえに “ SNSで饒舌”な人たちでもある。……って、SNSめっちゃ文明ですやん。

 

■つまりそれって、ファッションだよね

自然賛美、環境破壊ダメ農薬反対、だから “ ナチュラル”とか “ オーガニック”の言葉が大好き、みんなが好きな先進国よりもできればみんなの知らない発展途上国、ナチュラルだからヘンプ(大麻)もアリ、リアル世間は権力で汚れてるけど、SNSには権力はなくて平等で民主主義で世界中の人々と繋がれてピースフル。

 

で、コアじゃないマイルドなナチュラリストって、ハワイとかニュージーランドとかに移住しますよね。ハワイって超アメリカだし、ニュージーも先進国ですよ。「ナチュラル至上! 自然のあるべき姿を!」って言う割に、なんか社会的にも政治的にも整合性が取れてないんだよなぁ……。たぶん、ナチュラリストへの疑問ってそこにある気がする。「言ってることとやってること、都合良すぎない? つまるところ、それ、ファッションでしょ?」。

 

■「誰かに迷惑をかけたでしょうか?」

編集部からのメールは続く。「こだわりが強い分、食や行動など自らの生き方にかける制約も多くて、生きづらくないのでしょうか? でもやたら生き生きとしてはいる気がします」。

 

ナチュラリストの身上である、 “ 自然”へのこだわり。そのあり方は本当に健康なのだろうか、と私は常々思っている。高樹沙耶さんがかつて大麻使用をブログで告白した際の、「でも、誰かに迷惑をかけたでしょうか?」という一言に現れた違和感。その、自分と生き方や意見を異にする人々への「無知はあんたよ、これは私の生き方なんだから、ほっといてよ」な感じは、必ずしも健康な精神状態ではないからだ。

 

自由、自由と叫ぶ人間が最も不自由であるという警句がある。人は自分にもっとも足りないものを、足りないからこそ渇望し、だから無意識に口にするのだという。だから自然、自然と口にするひとは、かえって自らの自然への渇望を露呈し、とても不自然な状態にあるのではなかろうか。(ちなみに私は”知性”とか”ちゃんと”が口癖だ。わかってる、つまりそういうことだ。)

 

■都会人の消費行動の延長にある、高価格帯の消費領域

ストレス社会では体が弱って自己免疫力が下がる傾向にあるので、体の不調を機に健康志向が高まるのは先進国のどこにも見られる潮流だ。それゆえに自然ビジネスというのがあって、 “ 自然” “ 有機”を謳って従来の安価な普及品とは品質で差別化を図り、大衆相手の”規模の経済”を取らないのでコスト高となる。だが健康意識の高い人々は(すでに高いストレスにさらされるほど働いていることもあり)価格の高さをいとわないので、どこか値段の高い商品やブランドほどその効果や信用の高さ、さらには稀少性を担保するものと感じさせ、売れるのだ。

 

ナチュラリストという発想は、本当に自然豊かな社会環境で、それを当たり前として育ち暮らしてきた人々の中からは生まれない。都市生活やストレス社会での消費行動の延長に、化粧を施した “ ナチュラル” “ オーガニック”という高価格帯の消費領域があり、そこで自然の良さを”再発見”した人々がハマる考え方だ。掛け値なしの田舎暮らしで育った人々がよく言うような「へぇ、都会の人はそんなのがありがたいのかねぇ。ウチの周りにはどこでにもあるよ、良かったらちょっとくらい持っていったら。田舎なんて不便だし、アタシなら都会で暮らしたいわ」との言葉は、しかしファッションナチュラリストには皮肉ではなく褒め言葉に聞こえるのかもしれない。

 

■持続可能とアンチエイジング、はたぶん本質的なキーワード

高樹沙耶さんのブログには、大麻に対する思いがこう綴られる。「大麻は持続可能な暮らしをサポートする大切な天然資源の一つと以前から思っていました。私個人の感覚からしましては、お酒、たばこ、チョコレートよりも安心で安全で多幸感を得られる、そしてアンチエイジングには最高の植物」。「痲薬でなく、地球上に自然に生えている植物という事、そして人間の使い方によりとても生活に役立つ物なのです!これは揺るがぬ真実検証委員会は法が変わるまでしつこくやり続けます!」。

 

いみじくも、ナチュラリストを名乗る高木さんのこれらの言葉が「ナチュラリストとは何か」を何よりも的確に言い表しているような気がする。よりによって大麻まで行かずとも、ナチュラルなライフスタイルを消費対象として嗜好する都会の人々、特に女性にとって、入り口の多くはまず健康であり、その本質は “ 持続可能”にあるのだと思う。持続可能とは、環境の持続でもあり、核となる欲求は”自分の(フィジカルな)持続=アンチエイジング”だ。

 

だからナチュラリストの皆さんは、もういろいろなものを持ち出して正当化するのをやめて、ぺろっと素直に言っちゃった方が楽になると思う。これはファッション(あるいは音楽、文学、哲学でも、好きな言葉なら何でもいい)である。この生き方はファッション(あるいは音楽、文学……以下略)の一つの流派である。そして他は知らないけど、私はこれからも未来永劫美しくあるのだドヤ、と。ファッションって、(政治の方が上位概念だと思っている)ナチュラリスト本人たちが卑下するようなものではなくて、十分に人を動かす社会伝播性を持ったものなんだよ〜?

 

【著者プロフィール】

河崎 環

1973年京都生まれ神奈川育ち。乙女座B型。 部活:演劇部(男役など) 趣味:お笑いとロックと飲酒 特技:歌と飲酒 将来の夢:隠遁して飲酒 悩み:親が奇人。娘が2次元で迷子。ほうれい線。 寝床にある書:『疲れ過ぎて眠れぬ夜のために』内田樹 藤沢の田舎、海外遊学などで若さと人生を無駄遣いしたのち、予備校・学習塾講師を経て物書きの世界へ足を踏み入れ、いよいよ人生を棒に振る。2002年よりAll About「子育て事情」ガイドとして活動するも失踪。ふと気づくと何かの波にさらわれて渡欧、海を越えたのならと開き直りエレガントに理屈をこねた(自称)のち、最近再び日本の土を踏んだ様子が報告されている。