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2021/8/5 5:30

森口博子インタビュー「“生きる力”につながる表現者でありたいと思っています」

1985年にテレビアニメ『機動戦士Zガンダム』オープニングテーマ「水の星へ愛をこめて」で、デビューを果たした森口博子さん。その後“バラエティアイドル”というジャンルを確立し数々のレギュラー番組を持ちながらも、NHK『紅白歌合戦』に6年連続出場するなど、歌手としても活躍を続けられてきました。2019・2020年にリリースされた『GUNDAM SONG COVERS』シリーズでは累計20万枚を超えるヒットを記録し、日本レコード大賞・企画賞を受賞する中、35周年イヤーをひた走る2021年になんと24年ぶりとなるオリジナルアルバムをリリース! 『蒼い生命』と題された新作発売を記念して、過去・現在・未来への想いをじっくりお聞きしました。

 

◆まずはデビュー35周年イヤーということで、おめでとうございます! これまで“歌手”を続けられてきたということが、ご自身の中でも大きいのでは?

ありがとうございます。やっぱり4歳から歌手になりたくて、(幼稚園の)卒園文集にも「歌手になる」と書いた夢の中で35年も生かされ続けているというのは本当に“ありがたい”のひとことに尽きます。これもブレないファンの皆さんが必要としてくださっているからこそで、スタッフの皆さんも含めて“ファミリー”として一丸となって支えてくださっていただき、心強い環境があってこそですね。

 

◆ここまで続けてこられたのは、人や楽曲などさまざまな“出会い”もあったからですよね。

まさにそうなんです! 私、17歳の頃のプロフィールに「好きな言葉は“出会い”」と書いたくらいで、どの出会いが欠けても今の自分はいないということを周年ごとに実感していて。それは本当に大きいですね。2000年代に入って「CDが売れない」と言われる時代になってからも、現在までずっとレコードやCDをキングレコードで作らせていただいてきたのは、私にとって最高の財産であり、誇りであると思っています。もちろんリリースしていない年もあるけれど、歌のお仕事が途絶えた時代はなかったんですよ。

 

◆35年間ずっと歌い続けてこられた。

それもこんなに厳しい世界で共に戦い、守ってくれるスタッフの皆さんがいたからこそですね。そしてファンの方々も「次の新曲は?」とか「新しいアルバムは?」といつも聞いてくださるように、自分たちの中で常に“更新”してくださっていることも大きくて。アップデートされた私の作品を求めてくださっているということが、前に向かう力になっていると思います。

 

◆世代を超えて愛されているのも、森口さんの特徴かと思います。

そこは、デビュー曲がアニメ『機動戦士Zガンダム』の曲(※後期オープニングテーマ「水の星へ愛をこめて」)ということもあって。同世代の人だけではなく、後追いで知った若い世代の人たちも聴いてくださったり、ライブに足を運んでくださったりしているんです。さまざまなオリジナル楽曲のファンの皆さん、バラエティのファンの皆さんと世代を超えての“出会い”に恵まれていますね。

 

◆2019・2020年にリリースされた『GUNDAM SONG COVERS』シリーズも、その歩みと重なる部分があるのでは?

もちろんです。『GUNDAM SONG COVERS2』のほうでセルフカバーした「君を見つめて -The time I’m seeing you-」では、落ちサビのところで(原曲をリリースした)当時20代の私の歌声と今の自分の歌声を重ねている部分があるんですよ。今までファンの皆さんと一緒にいろんなことを乗り越えながら歩んできた象徴が、そのフレーズに詰まっているんじゃないかなと思います。

 

◆その時しか出せない声の良さもありつつ、ちゃんと経験とともに自分の“歌”を更新し続けられているのもすごいなと。

私、よくエゴサーチをするんですけど(笑)、皆さんからのコメントでも「表現力が増した」とか「すごいボーカリストになった」と言っていただけているのは、本当にボーカリスト冥利につきるというか。特にアニソンを歌っていると、やっぱり当時のままをファンの皆さんは求められるものじゃないですか。もちろん私もそこは守っていて、歌い方を崩したりはしていなくて。作品の感動と楽曲のクオリティと“1+1=2”じゃない無限大の世界を大切にしたいと思っているので、歌い方に変なアレンジを加えたりは絶対にしないんです。

 

「みんなそれぞれの歌を歌って生きてほしいなと」

◆原曲のイメージを守られているわけですね。

もちろん声に関しては(デビュー当時)17歳の少女の声からやっぱり大人の声に成長するわけですけど、みんなが「今の声のほうが断然良い!」と言ってくださるんですよ。「表現力も増して、世界観がより伝わる」と言ってくださって。それを聞くと、人間は変化していくものだけれども、良いように変化していっていると受け止めてもらえていたんだなと思えますね。キーの高さも変わらずに歌えているので、そういった意味でも皆さんからの評価は本当にうれしいです。

 

◆そういったファンの声が、活動を続けるエネルギーにもなっているのでは?

もう、それに尽きます! 本当に落ち込んでいる時にそういった声を読み返したりしていて。新作のリリースや購入特典の内容、そしてミュージックビデオの公開やコンサート情報といった何か新しい発表をするたびに、みんなの反応がすごいんですよ。ファンのみなさんが一緒に喜んでくれて、一緒に興奮してくれて、一緒に感動してくれて…そういう声があってこそですね。

 

◆ファンの声に支えられ続けている。

あとはやっぱり、私にとってライブが生命線なんです。ライブでファンの皆さんが涙を流されている姿やだんだん笑顔になっていく様子だったり、一緒に握りこぶしを掲げて1つになっている瞬間だったり…、あのエネルギーに私は突き動かされて生きていると実感しています。

 

◆ライブもそうですが、森口さんにとって“歌”というものが“譲れない居場所”になっているということを今作に収録の「ポジション」の歌詞からも感じました。

まさに今おっしゃられた通りで、私にとっての居場所は音楽であり、ライブであって。私だけに限らず、大人って日々揺れるものじゃないですか。その時のコンディションや仕事の人間関係だったり、夫婦仲や家庭環境だったり、いろんな原因があって、揺れ動いたり挫けそうになったりもする。そんな中でも“大人だし、揺れ動く日もあるよね。だけど今、自分がいる立ち位置は譲れないんだ!”と痛感しています。居場所を丁寧に生きる!! “核はブレないという気持ちで生きていくのが大切だ”という想いをこめて、「ポジション」の歌詞は書きました。

 

◆そういう想いもこめた曲なんですね。

この曲には“ため息をブレスに変え”という歌詞があって。マイナスな気持ちで息が漏れることもあるんですけど、その息を歌のためのブレスに変えて、みんなそれぞれの歌を歌って生きてほしいなと。自分自身へのエールでもあり、同世代の皆さんへのエールでもありますね。

 

◆この曲もそうですが、今作で森口さん自身が作詞している曲にはどれも“困難を乗り越えてきた”というメッセージが共通しているように感じられます。

デビュー曲『機動戦士Ζガンダム』のオープニングテーマのセルフカバー「水の星へ愛をこめて〜35人の森口博子によるアカペラヴァージョン〜」をレコーディングしている時に、まさにそれを感じたんです。35周年にちなんで35トラックを目指していこうということで、自分の声を1トラック1トラック重ねていく作業をやって。今までいろんなことがあって苦しいこともあったけど、それを乗り越えて1年1年を積み重ねてきたことがその作業にすごく重なりました。

 

◆これまでの1年1年で乗り越えて来た困難も思い返しながら、35トラックを重ねていったと。

それこそ私は17歳でデビューして、堀越学園を卒業間近に(当時の所属事務所から)リストラ宣告を受けたりもしたんです。でもどうしても歌が歌いたかったので、どんな仕事でも歌に繋げるという気持ちでバラエティのお仕事をやらせていただく中でレギュラー番組が増えていって。その先でまた2度目のガンダムのテーマソングに出会い、やっとオリコンのベスト10にランクイン!! それ以外にもいろんなアニメのテーマソングもいただいて、オリジナル曲もプリンセス プリンセスの岸谷 香さんをはじめ素晴らしい方々に楽曲を書いていただきながら、本当にたくさんのことを乗り越えてきたという想いはありますね。

 

「“つながる”ということがこんなにも心強いんだと思えた」

◆人だけではなく、曲との出会いも大きいんでしょうね。今作でも「陽だまりのある場所」では神前 暁さんと初タッグを組まれていますが、そういった新たな出会いも未来につながっているのでは?

もちろんどの出会いが欠けても今の私にはたどり着けていないし、その時々のご縁を大切にしたいなといつも思っています。私がレギュラー出演している『Anison Days』(BS11)という番組に、アニソン界の神様であります、作曲家の神前 暁さんがゲストに来てくださった時に、神前さんの楽曲をカバーさせていただいて。あまりにも温かくて切ない、その美しい世界に心が震えて涙が出たんです。その時からいつか神前さんに曲を書いていただきたいなと思っていたので今回オファーさせていただいたら、快く引き受けてくださって。実は、初対面の時に神前さんも私に「曲を書きたい」とおっしゃってくださっていたんです! もう“神曲誕生!”でしたね。

 

◆そのくらいの感動があったと。

初めて聴かせていただいた時に、理屈では説明できない涙があふれてきて…。私は細胞レベルで(神前さんの曲が)好きなんだなと思いましたね。それで歌詞を自分で書かせていただいたんですが、ちょうどその制作中に故郷・福岡の長年愛され続けた遊園地が閉園するというニュースが入ってきたんです。すごく胸を痛めたんですが、そのことを作詞しました。

 

◆実体験にもとづいて書かれた歌詞なんですね。

始まりから終わりまで1粒残らず、全部実話です。福岡の「かしいかえん シルバニアガーデン」は昭和30年代に開園してからずっと愛され続けてきた場所だったんです。私は2歳から家族とよく行ったんですが、緊急事態宣言などの影響で幕を閉じることになって。失うことへのやるせない気持ちとこれまでの感謝の気持ちと。日常生活が一変していく中で“私たちはどうやって目標や夢に向かって生きていくのか”。祈るような気持ちで紡いでいった歌詞ですね。

◆どの曲にも森口さんの“人生”を感じるというか。ただ歌が上手いだけではできない、深い感情をこめた表現だからこそ、聴いた人の心も動かせるんだと思います。

一番うれしいコメントですね。やっぱり「歌が上手いね」と言われるより、「感情が動く」と言われるほうがうれしいんです。この曲には“こういうことを伝えたい”というものをこめて、歌っているわけだから。なので単に「歌が上手い」と言われているうちは、まだまだだなと思っています。

 

◆技術だけではなく、今までの人生で積み重ねてきた経験がこめられた歌だからこそなのかなと。

私よりも歌が上手い人たちが地球上にたくさんいるにもかかわらず、ファンの皆さんが私を選んでくれたということもすごくうれしくて。言葉を超えた何かを感じてくれたんだなと思うし、その想いに支えられたきた35年間でしたね。例えばデビュー曲としてオープニングテーマを歌わせていただいた『機動戦士Zガンダム』は、作品自体も長年愛されているわけじゃないですか。そしてこの年齢になったからこそ、売野雅勇さんの哲学的な美しい歌詞の意味がやっと分かりはじめました。私、毎日エゴサーチするんですが、SNSなどで「あの曲自体もすごく良いけど、森口博子があの声で歌うから良いんだよな」というコメントとかを見ると、私が歌う意味というものも確認できてホッとするというか。

 

◆「陽だまりのある場所」の“距離を超えた声に 励まされここに立ってる”という歌詞が象徴的ですよね。

まさにそうです! このアルバムには、今、世界中の人たちが戦っているこの昨今だからこその心情が表れた曲ばかりが入っていて。昔から温めていたというよりは、この状況で感じることをそのまま詰め込みました。日常生活が様変わりする中で“つながる”ということが、こんなにも心強いんだと思えたんですよね。故郷の家族や友人の存在も含めて。そしてファンの皆さんのコメントを見ることで温かい気持ちになれたり、“大丈夫だ。私だけじゃないんだ”と感じられたりもして、みんな同じ気持ちでいられるというのを確認できたことがすごく大きかったなと思います。

 

「1分前の歌声がもう古いと感じているんですよ」

◆アルバムタイトルの『蒼い生命』にも、そういった想いが込められているのでしょうか?

直接会えない閉塞的な中でも、ファンの皆さんの声や、家族の声は届いていて。“心でつながっている”ということが生命線だなという想いをアルバムに込めたかったんです。これ(※コロナ禍)は、地球規模の問題じゃないですか。その“地球”のイメージから、まず『蒼い生命』というイメージが浮かんで。“蒼”という字にはくさかんむりが付いているように、緑が青々と生い茂るイメージがあるんですよね。海の色と緑の自然の色というイメージがあって、“地球の色だ”と思ったんです。このアルバムのメイン曲もこのタイトルで。シンフォニックで荘厳なバラードが誕生しました。

◆地球のイメージから発想したんですね。

それに加えて、デビュー曲の歌い出しが“蒼く眠る水の星にそっと”という歌詞で“蒼”という字が使われていて。デビューシングルの壮大なテーマともシンクロするし、裏テーマとしてオマージュも。蒼い“地球”という1つの生命でつながっていると思って、このタイトルにしました。

 

◆全てはつながっているというか。今作ラストの「水の星へ愛をこめて」に関しても単に35トラックの声を重ねれば同じようなことができるわけではなく、1つ1つの想いをこめた声をつなげられたからこそ、この形になったのかなと思います。

先ほどもお話ししたように35のトラックを1つ1つ重ねていく作業をしている時は、1年1年でいろんなことを乗り越えてきた自分がそこにいて。35人の自分と一緒に歌っているような感覚があったし、“35人の私”=”みんなとの歴史”でもあるんですよ。その中には少女の自分もいれば、ガムシャラに走ってきた時期も、ちょっと心が傷ついて休憩したくなる時期もあったけれど、やっぱり1人では乗り越えられなかったから。この曲の35トラックは、いろんな出会いに支えられてきたことの象徴ですよね。

 

◆それほど大切な曲だから、ラストに持ってきたのでしょうか?

この曲を一番最後に持ってきたのには、理由があって。声を重ねていくことは、神聖な作業だと私は思うんですよね。声って、神様からのギフトじゃないですか。1人として同じ声はない、みんなが唯一無二の声だから。そういう意味で“私の声をこれからも届けていくんだ”という決心もこめて、アルバムの最後は声のみの…歴史を重ねてきた35トラックで締めくくりたいと思ったんです。

 

◆なるほど。

懐かしいデビュー曲を歌うことで、ノスタルジーに浸っているだけでは決してなくて。この曲には“地球に愛をこめて”という壮大なテーマがあるんですが、そういうテーマの曲を17歳の時からいただいていたんですよね。一生歌える普遍的な楽曲をいただけたということは、それが私の使命でもあると。この時代にそんな意味合いも込めて、最後は声だけの曲で締めるという構成にしました。

 

◆この曲を最後に持ってきた意味として、歌手・森口博子の道はまだまだ先に続いているという意味もあるのかなと思いました。

そうです! いつも私は周年の時に“(ここはまだ)通過点”だと思っているので、今回も35周年でありながら、40周年・45周年に気持ちは常に向かっているし、1分前の歌声がもう古いと感じているんですよ。一番新鮮な自分の声で歌ったはずなのに1分後にはそれを“古いな”と感じているくらい、常に“通過点だな”と感じています。

 

◆だからこそファンの方の中でも、常に更新し続けられているんでしょうね。

コンサートを行うたびにファンのみんなが、歌声や楽曲を育んでくれています。コンサート会場で私の歌声を聴いてくださったファンの皆さんからは、「ちょっと体調が悪かったんですけど、すごく調子良くなりました」とか「今度手術があるんですけど、前向きに受けられるようになりました」とか「登校拒否の息子が学校に行くようになりました」とか言っていただけていて。本当に“生きる力”につながる表現者でありたいと、そのたびに思いますね。

 

◆そういう言葉からもらった力を新たな歌にして、またファンに返すという良い循環が生まれているのでは?

私はステージに立つたびに、いつも“また生命をいただいた”ということを実感しているんです。歌うことでエネルギーの交換ができた時に、大袈裟じゃなく“また寿命が延びた”と感じられていて。そのいただいたエネルギーをまた音楽に託して、これからも届けていきたいなと思っています。

 

リリース情報

New Album『蒼い生命』
2021年8月4日(水)発売

初回限定盤(CD+Blu-ray):3,850円(税込)
通常盤(CD only):2,750円(税込)

アルバム特設サイト:https://kinkurido.jp/shop/pages/hm35th.aspx

 

ライブ情報

「森口博子35周年アニバーサリーコンサート〜蒼い生命〜」
2021年10月3日(日)東京国際フォーラム ホールC

 

WEB

公式サイト:https://www.mogeshan.net/
公式Twitter:https://twitter.com/hiloko_m
公式ブログ:https://ameblo.jp/hiroko-moriguchi/

 

●text/大浦実千

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