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2021/11/12 5:45

杉野希妃「しばらく赤やピンクのリップがつけられなくなってしまって…」 映画「愛のまなざしを」公開記念カウントダウン特集 第3弾

「UNloved」「接吻」を手がけた鬼才・万田邦敏監督による愛憎サスペンス「愛のまなざしを」が11月12日(金)に全国公開される。TV LIFE webでは、公開記念カウントダウン特集と題して、連日出演者のインタビューをご紹介! 第3弾に登場するのは、ひたすらに愛を求める女性・綾子を演じた、プロデューサーでもある杉野希妃さん。振付するように演出していく万田監督の撮影現場の様子など、興味深い話を聞かせてくれました。

 

◆プロデューサーとして作品に関わることになったきっかけを教えてください。

もともと万田邦敏監督の作品が大好きで、2013年に私がMCをしていた映画情報番組のゲストに来ていただいた時に「監督の作品が好きです」とお伝えし、2017年に韓国の富川国際ファンタスティック映画祭でお会いした時にも、「いつかご一緒にお仕事をしたいです」というお話をしていたんです。

 

◆それで、どうやって監督とコンタクトを?

富川の映画祭に監督と一緒にいらっしゃっていた娘さんとSNSで繋がって、娘さんから連絡先を教えていただきました(笑)。日本に帰ってきてから、あらためて監督とお会いして「万田監督と、脚本家である奥様の万田珠実さんがタッグを組まれた作品が大好きで、一緒に映画を作りたいです」とお伝えしました。お2人の作品は女性のキャラクターが強烈で異様な世界観があり、私の心にとても突き刺さるものがあったので、純粋にお2人の作品が見たいという気持ちから。

 

◆精神科医と患者の物語は、監督、奥様との話し合いから決まったんですか?

いくつかご相談した企画の中で精神科医と患者の話を進めることになり、珠実さんにシノプシスを書いていただくことになりました。なぜ精神科医と患者の話をやりたかったのかというと、ある本に、精神科医が患者の嘘を見破れなかったというエピソードが載っていて。どうして見破ることができなかったのかというと、そこに恋愛が絡んでいたからで、精神科医は「自分は人を疑うのが仕事ではない」と言うんです。そのエピソードに驚きましたし、“嘘って、なんだろう”って。自分を良く見せるために嘘をついてしまう人もいるし、人に寄り添うために嘘をつく人もいる。嘘が必要な人もいるかもしれないと。珠実さんの脚本で作られた万田監督の「UNloved」と「接吻」は嘘がない世界で、自分の感情に正直な人たちを描いてきた珠実さんが嘘をモチーフに脚本を書いたらどうなるんだろうって思ったんです。

 

◆杉野さんが演じた綾子は情緒が不安定だから、嘘をついているのか、精神科医である貴志の愛が欲しいがために嘘をついているのか、分かりづらい人だと思いました。

精神科医と患者の話を万田監督の作品で見たいとは言ったものの、珠実さんの脚本を読んで、私も綾子はすごく分かりにくいキャラクターだと思いましたし、彼女を全く理解できず悩みました。精神科の先生に脚本を読んでいただき、分析もしてもらいましたが、「躁鬱や演技性パーソナリティ障害があるかもしれないけど、自分が診察していないとなんとも言えない」とおっしゃって。でもそこで、病名って固有名詞にすぎないと思ったんです。綾子は綾子であり、何の病気なのかというのは演じる上では全く重要なことではないというか。それよりも“愛が欲しい”、彼女にとってはそれが全てで。それが、この映画にとって重要なことなのかなって思いました。

 

◆綾子を演じる上で、意識したことはありますか?

監督はリアリティーを全く求めていなくて、そもそも「日常会話的なせりふはすごく嫌いだ」とおっしゃっていて。近年の日本映画で流行っているような、会話の間もいらないと。現場に入る前、監督は俳優に自由に自然な芝居をさせるのではなく、振りを付けるように俳優を動かすというお話を聞いて。リハでも実際に監督がそうされていたので、監督の話を全部聞いて、自分の中の固定観念や自分が考える綾子像のようなものは手放したほうがいいと思いました。そのほうが監督の世界観が生きるのではないかと。だから現場では、監督のお話だけを聞いてましたね。

 

◆監督の演出は、コンテンポラリーダンスの振付みたいなイメージなのかなと思いました。

そうですね、現場では自分がアクターというより、パフォーマーだという感覚がすごくありました。監督は自分の振付でどんな化学反応が生まれるか、その場で見て調整しているんだと思います。監督は変わった動きが好きなんですよ。“これはしないよね、でも映画ならありえるかもしれない”っていうギリギリのラインを狙って動きをつけていくんです。例えば、役者に自由にやらせたらソファを飛び越える動きなんて、絶対にしないわけですよ(笑)。一歩間違えたらギャグになりかねない。そのギリギリのラインを狙っていらっしゃるのかなと思いました(笑)。

 

◆仲村トオルさん演じる貴志と綾子の関係は共依存ですよね。2人の関係性についても皆さんで話し合われたのでしょうか。

「もう離れたほうが…」って思いますよね(笑)。2人の関係についても、珠実さんといろいろ話しました。一見すると綾子はファム・ファタールなんじゃないかと思われる方がいますが、珠実さんは「それは絶対に嫌だ」とおっしゃっていて。映画でファム・ファタールを見たい方も多いと思います。でも今回の物語において「単純に男を惑わす、記号的なキャラクターに思われたくない」と。私が病名で人を縛りつけたくないと思ったのと同じように、珠実さんもファム・ファタールという呼称で人を決めつけたくない気持ちがあったんだと思うんです。だからファム・ファタールの話ではなく、共依存の話だと強くおっしゃっていましたね。

 

◆鮮やかなリップをつけていた綾子が、ラストだけ何もつけていないのが印象的でした。

綾子はもともと悪い女性ではなく、「愛が欲しい」という切実さのみが彼女を生かしていたのが分かるシーンになったと思います。私は綾子を演じた後、しばらく赤やピンクのリップがつけられなくなってしまって…。もともと濃い色はつけないんですけど、ある意味トラウマのような。綾子から本当に離れたいなって(笑)。

 

◆「見たい」という気持ちから始まった監督の作品で綾子という女性を生きてみて、いかがでしたか?

今までとは全く違う感覚が得られたと思います。私は憑依型の女優ではないし、現場でも役と自分をすごく客観的に見ているタイプだったんです。でも、なんて言うのかな…全く共感できないから突き放していたのに、いつの間にか自分の内側に潜んでいたような感覚というか(笑)。それによって精神的なダメージも受けましたが、監督が(感情面を)全然語らずとも、(付けられた)動きによって得られる感情があるということが、すごく分かりました。監督のその手法は、人間の心理を突いているなって。自分で動いてみて、すごく感じましたね。

 

PROFILE

杉野希妃
●すぎの・きき…1984年3月12日生まれ。広島県出身。慶應義塾大学在学中にソウルに留学。2005年、韓国映画「まぶしい一日」で映画デビュー。「歓待」(10年)「おだやかな日常」(12年)「ほとりの朔子」(13年)などをプロデュース兼出演し、2014年には「マンガ肉と僕」で監督としてもデビュー。近年の出演作は「海の底からモナムール」「夏、至るころ」「ユキとの写真」など。

 

作品情報

©Love Mooning Film Partners

「愛のまなざしを」
2021年11月12日(金)全国公開

(STAFF&CAST)
監督:万田邦敏
脚本:万田珠実、万田邦敏
出演:仲村トオル、杉野希妃、斎藤工、中村ゆり、藤原大祐、万田祐介、松林うらら、ベンガル、森口瑤子、片桐はいり
配給:イオンエンターテイメント 朝日新聞社 和エンタテインメント

 

(STORY)
貴志(仲村トオル)は患者の話に耳を傾けてくれると評判の精神科医。6年前に亡くした妻・薫(中村ゆり)に囚われ、薬で精神を安定させる日々を送っていた。ある日、患者としてやってきた綾子(杉野)は、治療関係を越えて、貴志と愛し合うようになる。しかし綾子は、貴志の薫への断ち切れない思いや、薫との子である祐樹(藤原大祐)の存在を知ると、猛烈な嫉妬し、独占欲を抱くようになる。そして前妻の弟・茂(斎藤工)に近づき…。

 

公式HP:https://aimana-movie.com

公式Twitter:@aimana_movie

公式Instagram:@aimana_movie

©︎Love Mooning Film Partners

 

photo/TOMO(tweety) text/佐久間裕子 hair&make/平林純子(CLEO) 衣装協力/Jancidium

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