ファッション
2018/4/8 18:30

【大人の着こなし考】「しまむら」で買うものってあるの?

先日、『ダイヤモンド・オンライン』で掲載している「しまむらが仰天戦略転換、都心出店でユニクロとガチンコ勝負」という記事が話題になったそうです。

ユニクロに匹敵するブランドだったの?と驚いた人もいるかもしれませんが、都会に住んでいる人、特に男性だと「しまむら」の名前は知っていても、その実態は知らないというのは無理もありません。郊外のロードサイドに出店することでコストを抑えつつ、 プチプライスのレディスウェアを展開することで成長してきたブランドなのですから。

 

■「ユニクロとガチンコ勝負」はちょっと違う

メンズウェアの認知が低い証拠に、最近発売されたばかりの『メンズファッション完全ガイド』の「安く見えない服選び」なる特集では、「ユニクロ」「ジーユー」「無印良品」「ギャップ」「ザラ」「H&M」「グローバルワーク」の服が対象で、「しまむら」は候補にすら入っていませんでした。

 

では、しまむらが都心に出店して認知度がアップするとユニクロを脅かすほどの存在になるかと言えば、そうとも言い切れません。そもそも都内への出店ならすでに実現しています。2007年にオープンした高田馬場を皮切りに、繁華街では三軒茶屋とお台場にも出店。東京都内では80店舗ほど展開しています。

 

もちろん、冒頭の記事にもあるように新宿、原宿、東京、上野という超都心への出店が実現すれば、認知度アップにはつながるかもしれません。ただし、2011年時点のアパレル業界地図を記した『1秒でわかる! アパレル業界ハンドブック』を見ても、しまむらを紹介するページに“都心へ攻め上がる郊外型婦人服専門店”という見出しがありますので、今回の“都心出店”が大きな戦略転換なのかは疑問も残るところです。

 

そもそもユニクロとしまむらでは特徴やターゲットが異なるので真っ向勝負という状況にはならないはずです。

 

ユニクロはベーシックな服を大量生産することで低価格を実現したSPA (製造販売小売)ブランドであり、しまむらの軸はアパレルメーカーから仕入れた商品を販売しているファストファッションブランド。デザインの部分で見ると、ユニクロが長く着られるシンプルな定番の服が中心で、しまむらはトレンドを取り入れた一過性の服が中心です。つまり、多くの消費者にとっては購入する目的が異なるので、真っ向勝負となるではなく、共存もあり得るというわけです。

 

他にも、しまむらがユニクロの脅威にはならない理由はいくつか挙げられますが、ここでは割愛します。いずれにしても、低価格の衣類というだけですぐにユニクロを引き合いに出すのはナンセンス。業態やターゲット、消費者心理などを考慮しつつ読者にわかりやすく平易にまとめた記事であれば評価できるのですが「ユニクロとガチンコ勝負」というタイトルには同意しかねます。

 

■世間をにぎわす「しまむら人気」の実体はどこにある?

決して、しまむらを軽視しているわけではありません。ファストファッションならではのトレンド性に加えて、良くも悪くも“雑多”なラインナップが独自の魅力です。

 

とくにコラボは他の追随を許さないほどバラエティに富んでいます。過去にコラボしたことのある定番ブランドは「ラルフローレン」「チャンピオン」「アディダス」「フィラ」「ハリスツイード」など。「ディズニー(ミッキーマウス)」や「ピーナッツ(スヌーピー)」ともコラボしています。意外なところでは「ロエン」「エグザイル プロフェッショナル ジム」「新日本プロレス」アイドルグループ「仮面女子」、漫画雑誌の『モーニング』や「おそ松さん」「セガ」など。さらに「広島東洋カープ」や「阪神タイガース」といったプロ野球球団とも。

 

しまむらグループのブランドを含めると、「KISS」「AC/DC」「デヴィッド・ボウイ」「ジャスティン・ビーバー」などのアーティストTシャツも展開──ここで説明したものだけでも、ジャンルを越えて本当に盛りだくさん。しかもすべて“しまむら安心価格”というロープライスで手に入ります。

 

幸か不幸か、こうしたコラボ品の在庫をネットで調べることはできません。公式サイトにも“直接、お近くの店舗へお問い合わせください……”と明記してあります。現在ECサイトへの出店に向け動いているようですが、現状ではオンラインでの購入も不可能。だからこそ、実際に店舗を回って新作や掘り出し物などを探しだす楽しさがあり、“しまパト(=しまむらパトロール)”という言葉も広まりました。

 

レッドオーシャンの都心へ出店するよりも、地方店舗それぞれの特色を高めてコラボをいっそう充実させた方がしまむらの差別化、発展につながるのではないでしょうか。自分の趣味や好みに合うコラボ品にもし出合ったなら、都会に住む大人の男性でも興味を持つはずです。

 

ちなみに都会では、先に挙げたブランドに加えて「ウィゴー」や「コーエン」といったロープライスを特徴とするブランドがたくさんひしめいています。オンラインを含めればさらに激化。選ぶ側にとっては感謝すべき状況とも言えますが、ブランドだけでなくアイテム毎にきちんと吟味して、品質や自分との相性を見極めて服を選びたいものです。その延長として、自分にとっては価値がある独創的なコラボ品をしまむらで探してみるのは楽しそうです。

 

【著者プロフィール】

「着こなし工学」エバンジェリスト・平 格彦

1974年、東京都生まれ。O型。天秤座。ライター/編集者。コラムニスト。プランナー。AllAbout「メンズファッション」ガイド。[着こなし工学]ファウンダー。JAPAN MENSA会員。野菜ソムリエ。大学でマーケティングを専攻した後、新卒で出版社へ入社して広告部、ファッション誌編集部を経て退職。2年間のニート期間を経て転職した出版社を1日で辞めた伝説を持つ。その後、フリーランスに。メンズファッション関連だけで35以上のメディアに関わってきた実績を持ち、客観的、横断的、俯瞰的にファッションを分析するのが得意。そんな視点を活かして[着こなし工学]を構築中。編集力を応用して他分野でも活動。

分散型個人メディア[Masahiko Taira](プロトタイプ) : www.masahikotaira.com

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