ファッション
2016/11/26 17:00

新品レンタル、ツケ払い、リアル着用動画…常識にとらわれない発想がアパレル業界を変える

アース・ミュージックエコロジーを手がけるストライプインターナショナルが、昨年9月から自社製品のレンタルサービス「メチャカリ」を展開している。月額5800円(税別)で会員となり、手元に置いておけるアイテムは3点まで、返却手数料380円/回という規定はあるが、同社が展開する自社ブランドの新作をレンタルし放題なのだ。返却期限はなく、気に入ったアイテムは購入もできるうえ、60日間借り続けると返却不要、つまり自分のものになる。返却されたアイテムは、同社のOFFICIAL USED SHOPとZOZOUSEDで古着としてリサイクルされると、後処理まできっちり考えられているようだ。

出典:「メチャカリ」公式サイトより
画像出典:「メチャカリ」公式サイトより

 

■ますます進化する服の新品レンタル

今年頭の会員数は約2000人だったが、この夏には4000人を突破し、目標1万人を目指している。レンタルビデオの定額会員サービスのようだが、レンタルできるアイテムがすべて新品という点が同業他社にはないアドバンテージだ。オンラインファッションレンタルサービスとしてはエアークローゼットやサスティナ、リシェなど同様多種あるが、どれも「新品とは限らない」という点がメチャカリとは異なり、レンタル業の域を出ない。アパレルメーカーSPAとしての業態だからこそ転換できた画期的なビジネスモデルだと思う。

 

このテのサービスは女性向けばかりという点では、メンズアパレルの後進性を否めないが、フォーマルのレンタルサービスはビームス他でも扱いがあるはずで、スーツやジャケット、パンツなどメンズ・ドレスアイテムのレンタルサービスがあったら利用してみたいかと言われれば、しばし考えさせてもらいたいのが本音ではある。「着込んで味をだして、自分だけのものにする」という「デニム」的な思考に拘泥するわけではない。近年、製作段階で製品洗い・製品染め加工を施して「味出し済み」されているものが少なくないなかで前述の理屈は通らない。むしろ「微妙なサイズ感にこだわりたい」という動機が「フォーマルすらレンタルよりオーダー」という意識を生むだけに、レンタルへの抵抗感があるとすればここか。

 

ではカジュアルについてはどうかといえば、シャツやパーカ、マニア魂が特に無いのでスニーカーなどは定期的なレンタルでもいいように思う。都合3点までという縛りは、果たして多様なスタイルに対応できるのかどうかわからないが、ザッカーバーグよろしく「服はつねに同じ」がお洒落といわれることもあるうえ、自分のスタイルが固まっている大人の男性ならば、似たような、あるいは同じアイテムをつねに新品でレンタルしたほうが、ヨレヨレのダルダルの私服を着続けるより遥かにましかもしれない。

 

■ツケ払い、着用動画…、新進アパレルの斬新なビジネスモデル

レンタルという新しい服との付き合い方は、これから動向を見守りたいアパレル業界の1つの傾向であるのだが、ほかにもここ最近「新傾向」というか、まったく新しいアパレルのビジネスモデルが登場している。たとえばZOZOTOWNの「ツケ払い」なるシステムだ。分割払いはクレジットカードでもできるが、2ヶ月後の後払いというのは新しい。まるで馴染みの飲み屋か夜の店の売掛け払いのようだが、それこそ“飛んだら”というリスクについては「※ツケ払いによる代金の請求、並びに請求に関してご連絡が必要となる場合、GMOペイメントサービスがおこないます。」との一文が記されているのみで、さてこれはどんなこわいお兄さんがやってくるのかは知るべし由もないのだが。同じくZOZOTOWNには「買い替え割」というシステムがある。これはZOZOTOWNで購入した商品を下取りして、新たに割引価格で新品を購入できるサービスである。詳細はWEBをみていただきたいが、このテの新進アパレルの「従来のアパレルが考えもつかないことをやってのける」のは、枚挙に暇がない。

 

EVERLANEはサンフランシスコ発のEC特化型アパレルメーカー。WEBサイト上で販売価格とともに、原材料費、人件費、物流コスト、さらには他ブランドの同様商品の価格まで掲載して、自社の製品がいかにリーズナブルプライスかを明確化しているのだ。さらに驚いたのは、各商品ページで、いくつかのディテールカットとともに着用モデルの動画が掲載されていて、アクセスするとこれが即時再生される点だ。国内ECサイトで、これほどまでにスムーズにリアルな着用動画が見られるサイトはあるだろうか。「大人の嘘」でシルエットを修正し、ウェストを詰めたりシワを伸ばして、シルエットを良く見せるファッションビジュアルを作り続けてきた立場としては、過去の努力を一瞬で無にする行為に白旗を上げざるを得ないが、着用モデルは細身だがそれほどスタイルがよいほうではない点がリアリティがあって好感度も高い。

 

今年11月には日本を含む海外42カ国へのテスト販売を期間限定で展開。そのうえで、どこの国の購入量が多かったかをランキング掲載している。期間終了後、上位国での展開が決定することは目に見えているが、現在7位につけている日本は十分マーケットとしての魅力をアピールできているのかはわからない。

 

■大手メーカーにこそ期待したいアパレルの未来

昨年は、バーバリーがミラノの、トム・フォードがロンドンでのランウェイショーを取りやめたことが話題になった。翌年の春夏の新作発表を、前年の夏に行い、各国バイヤーのオーダーをとって生産販売を行うシステムを中止し、同年同時期に自社で生産管理した数の商品を売り切るというビジネスモデルへの転換は、つまり1シーズン飛ばすと同時に、在庫リスクを同時に抱えることになるため、どこのメーカーでも簡単に乗り換えられるものではない。この急転換ができる改革力と資金的な余裕と身軽さと統率力と牽引力と、とにかくもうありとあらゆる“力”があってこそ可能となるもので、既存のアパレルメーカーには考えつくことはもちろんのこと、教えられても理解できるものでもないうえに、「そんなものは失敗するに決まってる」といわれて終わるだろう。しかし絶対的に言えるのは、「今のままで上向くの?」ということだ。これまでどおり、半年周期のコレクション作成と受注と生産と流通で、果たしてアパレル業界に未来があるかと聞かれれば、胸を張って「あります」と言える人間がいるだろうか。危機感が業界全体をじんわりと包んでいるのに、なにもできないアパレルメーカーは、その時を待つだけのホスピスでしか無い。

 

だが現在、大手といわれるアパレルメーカーの創業者たち然り、相応の地位にあるアパレル業界人はセレクトショップにしろデザイナーズブランドにしろ、立ち上げ当初は大胆な発想とクリエイティブな思考で現在の地位を気づき上げて来た一廉の人物だったはずだ。時代が違えどファッションというファンタジーをビジネスというリアリティに変換する力を備えた人物だったに違いない。あの頃の次々と斬新なスタイルとコレクションを作り上げてきた発想力で、新たな突破口を見出して欲しいと切に願う。ファッションを創造する人々の開拓力を信じたい。「既存のアパレルに未来はない」とは、少しも思わない。

 

【著者プロフィール】

池田保行

神奈川県横浜市出身。ファッションエディター・ライター。大学卒業後、出版社勤務を経てフリー。 2004年よりファッション エディター & ライター ユニット ZEROYON 04(ゼロヨン)を主催。 毎年1月と6月にイタリア・フィレンツェで開かれる世界最大級のメンズファッション展示会ピッティ・イマジネ・ウォモへ毎年足を運ぶなど海外取材も豊富。メンズファッション誌をはじめ、WEB、広告、カタログなどあらゆるテキスト媒体を中心に活動している。ブログやYouTubeは、たまに更新中。

ZEROYON LABORATORY:http://www.zeroyonlab.com/blog

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