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2019/1/8 21:00

『ウイイレ2019』プロデューサーに聞いた、iPhoneやiPadで遊べる新アプリの魅力とは?

KONAMIが提供する人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」がモバイルで遊べることをご存知だろうか? PlayStation 4は手元にないけれど、iPhoneやiPadで無料で楽しめるなら久しぶりに遊んでみたいーー。そう思う人も多いだろう。

 

同作品は、2018年12月中旬に『ウイニングイレブン 2019』へと大型アップデートを遂げた。今回、「ウイニングイレブン」シリーズ統括プロデューサーである細田真規人(ほそだ まのりと)さんにインタビューする機会を得たので、同作の魅力について伺った。

 

今回のアップデートで何が変わったのか?

そもそも、「ウイニングイレブン」(通称「ウイイレ」)が登場したのは1995年のこと。シリーズ第1作である『Jリーグ実況ウイニングイレブン』から始まり、その後23年間にわたり、数々のシリーズタイトルがリリースされてきた。

 

同シリーズでは、国内外のリーグが再現され、リアルな実況とともに試合が進む。まるでサッカー中継を見ているかのような構成は、世代を超えて多くのファンを生んだ。読者の中にもPlayStationシリーズや任天堂のゲーム機で、何かしらのタイトルをやり込んだことがある人は多いのではなかろうか。

 

こうした家庭用ゲーム機の印象が強い「ウイイレ」だが、実はモバイル版の歴史もそこそこ長い。携帯電話向けとしては2005年から提供されていたし、モバイル向けアプリは2010年から提供されている。近年では、2017年から「ウイニングイレブン」のタイトルでリリースされている。そして、今回2018年12月に『ウイニングイレブン 2018』から『ウイニングイレブン 2019』へのアップデートが実施された。

 

↑『ウイニングイレブン 2019』はPlayStation 4のほか、iOS版(無料)、Android版(無料)も提供されており、手持ちのスマートフォンで楽しめる。なお、対応バージョンはiOS 9以降、Android 5.0以降

 

冒頭で触れた通り、今回は細田氏にインタビューする機会を得た。『ウイニングイレブン 2019』が注目される理由について、じっくりと伺った。

 

--まず、『ウイニングイレブン 2019』では、何が大きく変わるのでしょうか?

 

細田 最も大きなポイントは、家庭用ゲーム機のゲームエンジンをそのままモバイル版に持ってきたことが挙げられます。要は、iPhoneでハイエンドの家庭用ゲームをそのまま遊べるようになったわけです。アニメーションの量は豊富ですし、選手の顔などのグラフィックも非常にリアルに作り込んでいます。

 

↑「ウイニングイレブン」シリーズ統括プロデューサーの細田真規人さん

 

細田 また、選手の中には、フェイススキャンを行なった人もいます。写真をいろんな角度からバババッと撮ってきて、それでCGを作る。家庭用ゲームではよくやる手法なんですけれど、それをモバイル用にコンバートしているので、フェイスのクオリティは非常に良いです。

 

--ゲームの内容としてはどんなアップデートがありますか?

 

細田 今回、「Featured Player」という機能を実装しています(※)。実際の試合で活躍した選手を、その翌週にその試合の写真を使って配信するんですね。

(※:家庭用ゲーム機版では、すでに9月から始めているが、モバイル版では今回のアップデートに合わせて提供開始となった)

 

細田 これの意図として、好きなチームで遊んで欲しいという想いがあります。従来のサッカーゲームの仕組みだと、ついつい能力の高い選手を集めてしまいますよね。でも、我々としては自分の好きなチームそのものを楽しんでほしいんです。

 

一般的なモバイルアプリでは、強いキャラクターはたとえ課金をしてもゲットしにくいのが相場というものだ。しかし、同作のFeatured Playerでは多くの人が楽しめるような工夫を凝らしているという。

 

細田 子ども達にも遊んでほしいゲームなので、ゲーム内でたまるコインを使って、3回まで引ける抽選を用意しました。1回100コインで、11人中の誰かが必ず当たります。

 

Featured Playerは、試合結果を受けて毎週木曜日に配信される。うまく活用すれば無課金でも選手を揃えることができるかもしれない。

 

細田 あとは、Jリーグ(J1・J2)がモバイル版だけに入ります。Jリーグ選手のFeatured Playerは能力も強化されているので、世界のスターに混ざってお気に入りの選手を活躍させることもできますよ。

 

実はJリーグのライセンス契約が復活したのは数年ぶり。日本のファンにとっては嬉しい情報である。開発陣としては「もう一度コアなファンにも遊んでほしい」との想いがあったそうだ。また、インドネシアやマレーシア、タイなどアジア圏のユーザーからもJリーグへの注目度が高いらしく、今回もどういった反応があるのか注目しているという。

モバイル向けに展開する意義は?

1980年代から家庭用ゲーム機が普及しだし、ポータブルのハードも多く登場してきた。そしてここ数年、スマートフォンがゲームの重要なプラットフォームになったのは言うまでもない。ゲーム業界を生き残ってきたKONAMIにとって、業界のパラダイムシフトなど何度も経験したことだろう。同社がここ数年、「ウイイレ」のモバイル版に力を入れているのもある種必然であり、納得できる。とは言え、プラットフォームとしてのスマートフォンの台頭は大きな変化だ。

 

--スマートフォンやタブレットで展開する狙いは何ですか?

細田 この理由は、家庭用ゲーム機で出すときと変わりません。やはり「我々の作ったサッカーゲームで多くの人に遊んでほしい」というシンプルな想いです。モバイル版だからと言って、簡易的なサッカーゲームにしたくなかったんです。我々が最高だと思う技術を集約して、ノウハウを貯めて作ってきたものをそのままスマートフォンで遊んでいただきたい。

 

細田 例えば、我々は試合時間を10分と定めていて、「その10分間で楽しいサッカーゲームって何か?」と考えてずっと作ってきました。それをそのままモバイル版に持ってきています。また、操作方法については、タッチパネルでスムーズに遊べることにこだわっています。

 

↑モバイル版に最適化された「アドバンス」操作では、タップやスワイプを駆使して選手を扱う。スワイプでパス、ダブルタップでシュートといった具合だ

 

モバイル向けの「ウイイレ」に関しては、まず2010年から2012年にかけて3タイトルがリリースされた。その後、2015年には『UEFA Champion League ウイニングイレブンフリック』と、『ウイニングイレブン クラブマネージャー』というスピンオフ的なゲームアプリが提供された。そして、2017年から2019年にかけて改めて純粋な「ウイイレ」が提供されている。

 

--モバイル向けの「ウイイレ」は第一段と第三段の提供時期にギャップがありますが、どういった試行錯誤があったのでしょうか?

 

細田 2010年のものは、PlayStation 2のソフトをそのまま移植したんです。当時のアプリはバーチャルパッドでの操作しかできなかったですし、PlayStation 3のソフトが出ている頃にPlayStation 2のソフトをモバイル版として出したので、やっぱりユーザーからすると、古いゲームをやっている感覚があったようでした。もちろん一部の方には気に入ってもらえたんですが、あまり大きく発展していかなかったんです。

 

細田 そのあとは「モバイルに最適化したゲームとは何か」という視点で色々出してみたんです。『ウイニングイレブン クラブマネージャー』はシミュレーションゲームでして、マッチする人は一定数います。今でも多くの人に遊んでもらっていまして、よく電車の中でもプレイしてくださっている人を目にします。

 

↑iPhone XRで『ウイニングイレブン 2019』をプレイしている様子。全画面にピッチを表示できて見やすい

 

細田 あとは先ほど言った通りなのですが、そこから「じゃあ我々の得意なものを出そう」という方針でモバイル版に取り組んだというのが経緯です。おかげで仕事の量は倍になりました(笑)

--2018年度版を2019年度版にアップデートで配信する理由はなんでしょうか?

細田 これに関しては色々議論がありまして。普通だったら別々に出すのもアリなんですが、数日間ゲームを止めて、新しい選手とか全部アップデートして、基本的な選手は引き継げるようにしたんです。そうすることでお客様は前作で持っていた選手を使ってずっと続けて遊んでもらえます。

 

モバイル版『ウイニングイレブン』シリーズの通算ダウンロード数は、1億5000万にのぼる。サーバに存在するそれだけのデータを、全部変換して新しいバージョンで動くようにしたのだからすごい。

 

細田 例えば、『ウイイレ 2018』でメッシを持っていたら、『ウイイレ 2019』でメッシが使えるんですよ。また上限は30になりますが、前作で育てていたレベルも多少反映できるようになりました。そのまますぐ遊べるようにしたかったんですよね。

 

確かに何百時間も遊んで育ててきたチームが使えなくなったら、ユーザー側からしても新作に手をだす気はなくなってしまうだろう。「アップデート」での提供はまさにイマドキな手法と言える。毎年アップデートで少しずつ改良されていく「ウイイレ」っぽさも活かせる意味で、相性も良い。もちろん大掛かりなメンテナンスには労力もかかるが、「喜んでもらえればそれで良い」と言い切るKONAMIの姿勢は好印象であった。

 

--ところで、モバイル版の普及に合わせてARやVRの活用は検討されていますか?

 

細田 はい。「ARを使って、テーブルの上で遊ぶ」みたいなことは、ちょうどいま研究しています。まだ出せるかどうかもわからない段階です。

--おー、期待できますね! どんな感じに仕上がったら面白いと思いますか?

 

細田 人がワイワイ集まって、同じものを見ながら対戦するっていうのは、ゲームというかスポーツの魅力ですよね。昔は”すごろく”とか色々やりましたけど、あれって駆け引きとか凄い燃えるじゃないですか。そういう大人数での楽しみ方ってのを再現できたら良いですね。

 

ARとスポーツゲームが連携したらかなり面白いだろう。「パブなどにある『テーブル・フットボール』を複数人同士で楽しむようなイメージを想像してほしい」と言われて、筆者としても登場を期待せずにはいられなかった。

端末の進化が追い風になったか

今年発売されたスマートフォンは、ディスプレイ上部にノッチを備えるなど大画面化していることがトレンドだ。チップセットはさらに高性能になり、グラフィック処理もかなり高度なことが対応できるようになっている。こうした端末の進化も、スマートフォン向けアプリを提供する追い風になっているのだろう。

--最新端末との相性はどうでしょうか?

 

細田 最新のiPhone XS/XS Max/XRやiPad Proには、ホームボタンがないんですよね。ディスプレイが広がった分、表示できる試合画面も拡大しました。ユーザーからすると非常に遊びやすいと思います。スタジアムをより横長で見られるので、没入感というか操作感が全然違います。

 

↑iPad Pro 11インチとiPhone XRでのピッチの表示を比較。後者の方が横に広く表示されているのがわかる

 

旧機種に比べて視野が広い分、新しいiPhoneやiPadで操作した方が有利なのは間違いなさそうだ。前述の通り、アドバンス操作では画面全体で操作できるため、サイズが異なっても扱いやすさは変わらない。なお、3D Touchを用いた操作はないため、同機能を備えないiPhone XRでも特にハンデなく扱える。

 

細田 また、アニメーションのクオリティは、モバイル端末の方が上げられるかもしれません。家庭用のゲーム機が60fpsなのですが、iPad Proは120fpsになります。春くらいにはアップデートで提供できたら良いなと企んでいます。

 

既存のソフトは60fps向けに作成しているので、そのまま提供するとアニメーションに”アラ”が出るという。120fpsで表示できるアニメーションを用意し、ハイエンド機向けだけに提供する仕組みが必要だ。

 

細田 あとは、フォトリアルで作成しているので、ライティングが多ければ多いほど凄いリアルに見えるんですよね。これが一番容量を必要とするので、スペックが高い端末であるほど、ライティングを増やせるメリットもありますね。

 

↑iPad Proの新モデルのポテンシャルには驚いたという

--シリーズとしてサウンドにこだわっている印象がありますが、今作ではどうでしょうか?

 

細田 日本だと実況はジョン・カビラさんにお願いしています。23年くらいやってくれているので、開発側の都合もよくご存知なんですよ。なので、こういうこと喋ってください、とお願いするとちゃんと10分間というゲームのバランスのまま言ってくれるんです。これが普通の実況の方だと、テレビ用の間になってゲームに合わなかったりするんですよ。

 

実況の音声は、アプリ内で無料で追加ダウンロードできるようになっている。「ぜひ追加して楽しんでほしい」とのことだ。最新のiPhoneはステレオスピーカーになっているし、iPad Proは4隅にそれぞれスピーカーを備えている。モバイル版とはいえ、迫力あるサウンドでプレイできるのはイマドキ感がある。

 

細田 実は歓声は、スタジアムに行ってリアルな音を録音して使用しています。だから、「イギリス人とドイツ人の歓声」みたいな微妙な差もわかると思いますよ。昔はスタジオで観戦する声を収録したりしたんですけど、普段からサッカー中継を見ている人には「なんかおかしいぞ」ってバレてしまうんですよね。ハードウェアの進化によって、こういうところも分かるようになってきたのでしょう。

--カメラのアングルも凄いリアルになりましたよね

 

細田 はい。実はこれが凄い重要で、カメラの動き一つでボールのリアルさが全然違うんです。テレビ中継の動きと比べると、プレイしやすいように配慮しているせいでゲームの中のカメラワークって異なります。常に毎作変えているんですけれど、これでゲームのクオリティがごろっと変わりますね。今回はやや上側から俯瞰するような動きになっているので、ぜひ実際にプレイして確かめてみてください。

 

さて、全てのユーザーが最新端末で遊べたら素晴らしいが、現実的にはそうはいかない。その点は、「デバイスに合わせてグラフィックのレベルを設定できるようにしてある」といい、開発に抜かりはない。また、基本的に「前作が遊べていた機種では、継続して最新作を利用できるように作っている」そうだ(iOSの場合9以降、端末としてはiPhone 5s以降)。ただし、開発陣としてはパフォーマンスを鑑みて、iOS 10以降をお勧めするという。

 

ぜひ、こんな楽しみ方を。

モバイル版『ウイニングイレブン 2019』は、前述の通りすでに配信が開始されている。手元のiPhone、iPadなどでインストール(またはアップデート)して、まずは遊んでみよう。細田氏としては、「自分の好きな選手とチームを集めて、外で対戦して盛り上がってほしい」とのこと。Bluetoothで端末同士を接続して遊べるので、直接友達と遊ぶのもオススメだそうだ。

--最後に、今後面白い試みがあれば教えてください

細田 モバイル版でオンラインでの対戦ができるので、それを活用してeスポーツを始めようと思っています。来年の2月から3月に開始する予定です。オンライン通信対戦で予選が進んでいって、その上位者が決勝大会に参加してオフラインで対戦するイメージですね。

 

話題のeスポーツにiPhoneから参戦できるとなると興味深い。詳細は未公開だが、腕に自信のある人は、ぜひ態勢を整えておき、来るべきタイミングで挑戦してほしいと思う。