ヘルスケア
2021/1/8 19:20

リモートワークと巣ごもりのストレスに効果抜群の「グルグル」って知ってる?

2020年はリモートワークが都市圏を中心に普及し、運動不足による体調不良やストレスを抱える人が多かった年でもありました。しかし、新型コロナウイルスが再び感染拡大を見せている今、リモートワークや巣ごもりは今後さらに強化されそうな気配もあります。

 

そんな中、リモートワークの疲れやストレスに対して「『混ぜる』『グルグルする』ことが癒しになる」と提言する精神科医の先生がいます。今回は杏林大学名誉教授・古賀良彦先生による「混ぜる」「グルグル」で得られる癒し効果、そしてリモートワークにおけるストレスの「対処」について語っていただきます。

↑古賀良彦先生。杏林大学名誉教授・医学博士。1971年慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部精神神経科学教室を経て、1976年杏林大学医学部精神神経科学教室に入室。1999年同教室主任教授。2016年より現職。専門はストレス障害、うつ病の治療。食品や香りの効果の精神生理学的研究。日本催眠学会名誉理事長、日本薬物脳波学会副理事長も務める

 

リモートワークでのストレスは「解消」の機会が少ない

ーーまずリモートワークについて、古賀先生が患者さんや周りの方から「よく聞く話」がありましたら、お聞かせください。

 

古賀良彦先生(以下、古賀) リモートワークが浸透し始めた頃、多くの人が必ずおっしゃっていたのが「楽になった」ということでした。「通勤がないから楽です。ただ、太りました」という話を皆さんよくおっしゃっていました。もちろん、「コロナ禍で電車に乗らなくて良い」「イヤな上司と会わないで済む」「家の中で自分のペースで仕事ができる」「メールはあったとしても、電話はあまりかかってこないし、仕事の妨害が少ない」とリモートワークにも利点があります。

しかし、リモート中の方の健康診断をすると、まず男性はコレステロールや中性脂肪など、生活習慣病絡みの値が上がっている人が多くなっている。対して女性はストレスによる過食や極端な食欲不振を示すもの少なくありません。いずれにしても身体的な実害が起きているケースがみられます。

また、「ずっと家で仕事をしている」ことでのストレスももちろんあります。例えば、ご夫婦で働いていらっしゃる家庭の場合、2人とも家の中にいて、それぞれの会社の仕事をリモートで行うことになります。そもそも家の構造自体が「仕事をするため」に作られていないことが大半ですから、リビングを使ってリモートワークをするケースは多いと思います。

 

そういう環境でリモートワークをしなければいけないし、なおかつ3度のご飯の支度をしなければならないと……これは随分な負担です。常に落ち着きがない状態が続いていることになりますから、当然ストレスは増えると思います。

また、コロナ以前のストレスは、「会社帰りに一杯飲んで上司の悪口などを言う」「休日にスポーツや遊びの時間を作る」といったことで解消できていたのですが、前述のようなリモートワークの環境では解消できない。気晴らしに外に出ることもできないので、ストレスのやり場がなくなってしまうんです。そういうやり場のないストレスが重なり、心理的な面、肉体的な面で不調が出ることは多いと思います。

 

ストレスを「ためない」「元を断つ」ではなく「対処する」

ーーストレス過多に陥ると「さらなるストレス」を加算してしまったり、連鎖することはありますか? 例えば普段なら気にならなかった音に対して、異常に不快を感じるなど。

 

古賀 それはあります。「ストレスはたまらないようにすれば良い」「ストレスの元を断てば良い」ということはよく言われていますが、しかし容易にできることではないですよね。特に前述のようなリモートワークでの家庭環境は簡単に変えられませんから。そういった環境下で心理的なストレスを溜め込んでいくうちに、そこからさらに連鎖して、それまでなら全く気にならなかった水道の音、洗濯機の音まで不快に感じるようになり、本来のストレスをさらに増幅させてしまうことはあります。

こういった、ストレスの元をなかなか断てないような場合、どうすると良いかと言うと、「元を断つ」「たまらないようにする」から「対処する」に切り替えることです。「コーピング」という専門用語があるのですが、これはストレスの元となるものを断つことはできないけれど、うまく対処していく、うまくやり過ごす方法を身につけることを指す言葉です。

今日、ストレスを感じたら翌日まで持ち越さず、今日のうちにコーピングしておくほうが良いです。なんとなくストレスを感じたまま翌日、さらに翌日と過ごしていると、最初はそれほど大きくなかったストレスが気付いたときにはうんと大きくなっていることがあります。「食欲がない」「眠れない」「動けない」といったはっきりした症状が出てから気付くのではなく、日頃からストレスに対してコーピングする意識を持つ、対処し実践すると良いと思います。

 

ストレス解消に役立つ「グルグルする料理」

ーー特にリモートワークや巣ごもりですと、ストレスへの対処の仕方も限界があるような気がします。外にも出られない、自宅には家族もいる環境ですので……。

 

古賀 おっしゃる通りですが、こういったリモートワークや巣ごもりでもストレスを和らげる方法はあります。一瞬忘れられるようなこと、楽しく没頭できることをすることをすれば良いんです。お金や手間がかからず、気軽に楽しめて没頭できるものが良いです。そこで私が良いなと考えているのが、まず料理です。それもこだわりを持ったものでなく、お金をかけるものでなく、冷蔵庫の中にあるちょっとした余りものを上手に組み合わせて作るようなものが良いですね。

余っているいくつかの食材で、どんな料理ができるかを考えてみる。そうすると、「あ、こんなものができそうだ」みたいなひらめきがありますよね。こういうときは、さっきまで感じていたストレスを一瞬忘れているはずです。これは良いコーピングだと思います。

また、ここで言う料理は必ずしも立派なお皿に乗る、シェフが作るようなものでなくても良くて、「えーい! 混ぜちゃえ!」といった料理で十分です。納豆を混ぜていく、メレンゲを混ぜていくことでも良いですが、より良いのは「混ぜる」「グルグルする」ことで変化が起きる、違うものになっていくものです。最初は具材がバラバラだけど、混ぜることで一つの料理になる混ぜご飯なんかも良いと思います。「魚を焼く」「肉を焼く」という単品の料理よりも「混ぜる」ものは没頭できると思います。

自分の「混ぜる」というちょっとした努力によって、別のものができあがったときは嬉しいものだと思います。リモートワークで外出できない状況だったとしても、食事だけは毎日変わらず摂りますから。このようにリモートワークでストレスを感じている方は、混ぜる料理をやってみると良いと思います。

 

料理が面倒な人はお菓子でのグルグルでも良い

ーー「混ぜる」「グルグルする」ことに特化したお菓子なども出ていますが、こういった商品を楽しむのもストレス解消になりますか?

 

古賀 なると思います。従来のものが「混ぜる」「グルグルする」したことで別ものに変化するのであれば、十分な効果を得られるはずです。プロセスも楽しいじゃないですか。より簡単にできるでしょうし、こういった「混ぜる」お菓子を使ってストレスを解消するのも良いと思います。

↑お湯を入れてスプーンでまぜ練って食べる即席マッシュポテト「じゃがネル」(ポッカサッポロ)150円(税別)。写真のピザ味のほか、コロッケ味もあります

 

↑左から、グルグルするお菓子のヒット商品「ねるねるねるね」(クラシエ)120円(税別)。写真のブドウ味のほか、ソーダ味、スイカ味もあります。「ねるねるねるね」から派生した「まじょまじょねるねる」(クラシエ)160円(税別)。グルグルさせることに加え、トッピングもできるタイプです

 

↑スプーンでグルグル混ぜ合わせながら、味の変化を楽しめる「ベルギーヨーグルト ピュアナチュール ブルーベリー」(カネカ食品)148円(税別)

 

ストレスを溜めないための一歩は「早寝・早起き・三度の飯」

ーー一番怖いなと思うのは、自分で気づかないうちにストレスを溜め込んでいってしまうことです。特にリモートワークは、仕事と仕事外の境目が曖昧で、自然とストレスを溜め込んでいくケースもあるように思います。

 

古賀 自覚しないままストレスを溜め込んで現れることの一つは気力、意欲、モチベーションが落ちていくということです。それから、体に症状として異変が起こること。「なんとなく頭が痛い」「目が回る」「耳鳴りがする」「肩がこる」「おなかの具合が悪い」「胃が痛い」など。うんと重い症状ではないけど、ちょっとした体の不調が起き始めたら、自分の生活をいったん見直したほうが良いです。

これまでの「何時に起きて、何時の電車に乗って、何時に会社に行く」といったことが決まっていると、人の生活にはメリハリがつくのですが、リモートワークだと、たしかに生活のリズムがなくなりがちです。

でも、だからこそ「早寝・早起き・三度の飯」を意識するのが良いと思います。

そして「午前中の日に当たる」ほうが良いですね。この背景には脳の生理学として理屈はありますが、そんなことは難しいから「ともかく朝か午前中に日に当たるよう」に心がける。そうすると、ちゃんと昼間は働く体調になって、夜は休むという体になっていきます。これはストレスに対処する意味でも、リモートワークでは意識的に取り入れて欲しいリズムです。

 

これに加え、先ほど話にあった料理などでの「混ぜる」「グルグル」する楽しみを加えると良いと思います。ストレスの元を断つことはできないかもしれないですけど、良いコーピングになると思いますよ。

 

撮影/我妻慶一

 

 

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