家電
炊飯器
2017/1/14 11:00

【BALMUDA The Gohan開発秘話】「高い米を買えば…」バルミューダ社長、蒸気炊飯器に至る迷走の日々を振り返る

既報の通り、バルミューダは12日に炊飯器「BALMUDA The Gohan(バルミューダ ザ・ゴハン)」を発表しました。本機は、食パンのおいしさにこだわったトースター、コーヒーの淹れ方にこだわった電気ケトルに続くキッチンシリーズ第3弾として投入されたもの。色はブラックとホワイトの2色展開で、価格は4万4820円。発売は2月下旬で、1月12日よりバルミューダオンラインストアで先行予約受付を開始しています。今回は、その開発秘話も含め、東京都内で開催された製品発表会の詳細をレポートします。

 

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【SPEC】●サイズ/質量:W275×H194×D251mm/約4.0kg●付属品:本体、水計量カップ、米計量カップ●消費電力:670W●コード長:約1.2m●炊飯モード:白米、白米平炊、玄米、炊込、おかゆ●炊飯容量:0.5~3合(白米)●炊飯時間:白米53~68分(早炊32~39分)●2月下旬発売

 

「冷凍ごはん」開発など紆余曲折を経て蒸気炊飯にたどり着く

炊飯器開発の直接のきっかけは、2015年6月に発売したトースター「BALMUDA The Toaster」。バルミューダの寺尾 玄(てらお・げん)社長によると「パンがおいしくなったのだから、ごはんもおいしくなるべきだろう。私たちは日本人なのだから。ただ、私はそれまで土鍋で炊飯していたので、開発チームには土鍋よりおいしいごはんを作れと注文した」とのこと。開発チームはおいしい炊飯方式を求めて調査に乗り出しますが、途中、「おいしいごはんは炊飯方式ではなく、高い米を買うことだ」と結論付け、液体窒素などごはんの急速冷凍技術を研究。冷凍ごはんと解凍専用の超小型電子レンジのパッケージ販売などという、あらぬ方向に行きかけたそうです。しかし、冷凍よりも炊きたてのほうがはるかにおいしい、という当たり前のことを思い至り、炊飯器開発に軌道を戻しました。

 

試行錯誤の末にたどりついたのが「蒸気炊飯」という方式。「ガスの炎に比べて3分の1しかない電気エネルギーで、土鍋のようにおいしく炊けるのはこれしかなかった。もしかしたら土鍋よりおいしくできたかもしれない」(寺尾社長)。

↑BALMUDA The Gohanとバルミューダの寺尾 玄社長
↑BALMUDA The Gohanとバルミューダの寺尾 玄社長

 

食感と旨みを保つため米はあえて踊らせない

仕組みはこうです。本体内には2つの釜がセットされ、内釜にはいつものように米と水、外釜には水だけを入れる。外釜の水が電気の力によって蒸気に変わり、内釜に入り込んで米を炊きます。内釜の中で米はあえて“踊らせる”ことはしません。

 

その点について、同社は「踊ることで米同士がぶつかり合うと、米表面に傷がついてザラっとした食感になり、傷から米の旨みが外に逃げてしまう。踊らせないことで、つるっとした食感、噛んだときに中からにじみ出る旨みを楽しめる」と説明しています。温度については、「炊飯時に温度が100℃を超えないこともポイント。無理なくゆっくりと熱を入れることで、米表面が崩れていないふっくらとしたおいしいごはんになる」と寺尾社長。

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↑2つの釜が付属。上の内釜に米と水、下の外釜に水だけを入れてセットします

 

↑外釜の水が熱せられて蒸気となり、内釜に入って米を炊く仕組み
↑外釜の水が熱せられて蒸気となり、内釜に入って米を炊く仕組み

 

↑一般的な炊飯器は、炊き上げ時に100℃を超える温度で沸騰させて米を躍らせる。これに対し、バルミューダは炊き上げ時には高火力をかけずに、あえて“踊らせない”炊飯方式を採用
↑一般的な炊飯器は、炊き上げ時に100℃を超える温度で沸騰させて米を躍らせます。これに対し、バルミューダは炊き上げ時には高火力をかけずに、あえて“踊らせない”炊飯方式を採用

 

こうした炊飯方式によりBALMUDA The Gohanで炊いたご飯は、①ハリがあるけど中はふっくらとした食感②べたつきがない、ほぐれの良さ③抜けるような香り④お米本来の素直で深い味わい–この4つの特徴があると説明しています。べたつかずほぐれがよいので、すし飯やチャーハン、カレーにも合うとのこと。

 

保温機能はないが二重の釜のおかげで冷めにくい

なお、本機には保温機能がありません。「理由は簡単。保温すると、どうしてもごはんの味が落ちてしまうから」(寺尾社長)。ただ、内外2つの釜によって魔法瓶のような構造となっているため、1時間ほどはホカホカごはんが食べられるそうです。

 

炊飯モードは、白米/白米早炊き/玄米/炊きこみごはん/お粥の5つ。タイマーによる予約炊飯機能も搭載。高級炊飯器に搭載されている、もちもち/しゃっきり、かため/やわらかめ、といった食感の炊き分け機能はありません。

 

また今回、3合炊きのみの発売ですが、最もニーズがある5.5合炊きを出さなかった理由について寺尾社長は、「蒸気炊飯で3合以上がおいしく炊けないから。現在、5.5合炊きを鋭意開発中」としています。

↑枡形の米の計量カップと、円筒形をした外釜用水の計量カップを付属。2つの釜は薄いアルミ製でとても軽い。内釜・外釜ともに水量目盛付き
↑枡形の米の計量カップと、円筒形をした外釜用水の計量カップが付属。2つの釜は薄いアルミ製で軽量です。内釜・外釜ともに水量目盛付き

 

↑本体はトースターより小さく、体積はトースターの約半分
↑本体はトースターより小さく、体積はトースターの約半分

 

↑お手入れは2つの釜のほか、内ブタ1枚を洗えばOK。内ブタについている小さなボックスは、蒸気が水分となって内釜の中に戻るのを防ぐもの。小さなフタを開ければボックスの中を洗えます
↑お手入れは2つの釜のほか、内ブタ1枚を洗えばOK。内ブタについている小さなボックスは、蒸気が水分となって内釜の中に戻るのを防ぐもの。小さなフタを開ければボックスの中を洗えます

 

今後はBALMUDA The Gohanに合うレトルトカレーも開発する!?

製品説明の後にはお楽しみの試食会が開催されました。炊きたての釜の中を覗いてみると、割れや崩れがなく、一粒一粒が立ったツヤツヤの炊きあがり。ベタつき感もありません。食感はというと、他メーカーのほとんどが圧力炊飯方式を採用しているため、最近のIH炊飯器ごはんはやわらかく“もちもち”した食感に仕上がりますが、BALMUDA The Gohanは圧力をかけていないため、比較的に硬く、ハリのある仕上がりになっています。昔のガス釜に近い感触。噛みごたえがあるというか、ちゃんと噛んで食べるごはんです。噛めば噛むほどに中からお米の甘みが出てきます。また、雑味がなくすっきりとしており、おかずや薬味の邪魔をしません。

↑粒が立っており、ベタつきがなく口の中でほぐれる感触が味わえます。しっかりとした歯ごたえで、“ご飯を噛んで食べる”ことを意識させてくれます
↑粒が立っており、ベタつきがなく口の中でほぐれる感触が味わえます。しっかりとした歯ごたえで、“ご飯を噛んで食べる”ことを意識させてくれます

 

↑冷やご飯のおにぎりも試食。硬くなることはなく、炊きたて時の食感を維持しながら、ほんのりとごはん本来の甘みも楽しめました
↑冷やご飯のおにぎりも試食。硬くなることはなく、炊きたて時の食感を維持しながら、ほんのりとごはん本来の甘みも楽しめました

 

寺尾社長は今後、電子レンジとコーヒーメーカーの開発を明言していますが、今年の秋にも第4弾を発表できるだろうとしています。さらに、今回の炊飯器の開発中に美味しいカレーのレシピにも思い当たり、寺尾社長としてはオリジナルのレトルトカレーを開発したいと、個人的にレトルトメーカーに会いに行ったそう。社内のマーケティング会議、商品企画会議、経営会議ではことごとく反対されたそうですが、寺尾社長は「私はあきらめません」とニヤリ。それはそれで楽しみです。