家電
炊飯器
2018/8/3 22:51

話題の炊飯器「かまどさん電気」を家電ライターが渾身レビュー – 感激を全部書いたら1万字に…!

2000年創業の新進気鋭の家電メーカー、siroca(シロカ)から本物の炊飯土鍋を使った電気炊飯器「かまどさん電気」(実売価格8万6184円)が発売され、話題になっています。本機は、シロカと三重県・伊賀焼の窯元「長谷園」が共同開発した製品。「長谷園」は炊飯土鍋「かまどさん」を発売し、累計出荷台数80万台以上の大ヒットを記録したことで有名です。この「かまどさん」の利点を取り入れ、これまで技術的に難しかった本格土鍋の電化を実現したのが、この「かまどさん電気」。特に「土鍋で炊いたごはんが一番!」という人から大注目されているのです。

筆者は土鍋ごはんをいただくたびに「おいしい!」と感じるのですが、「土鍋炊飯は火加減や手入れが大変」というイメージがあり、ふだんは手軽なIH炊飯器を使っています。ところが、発売日の前後に「かまどさん電気」を取材する機会があり、本機で炊いたごはんのおいしさに感心していました。そんなタイミングでいただいた今回のレビューのお話……断る理由がありません。そして、どうせやるのであれば、徹底的にテストしたい……そして、いままで数多く試してきた高級炊飯器と何が違うのか、明らかにしたい……というわけで、今回は本機で炊いたごはんの味や食感、使い勝手に関する6項目を検証。希少な“本格土鍋炊飯器”である本機の「IH炊飯器と比較してのメリット・デメリット」に迫っていきます。

 

【今回テストするのはコチラ】

人気土鍋の優位性を活かすべく、技術を結集した本格土鍋電気炊飯器

長谷園×siroca

かまどさん電気 SR-E111

実売価格8万6184円

“呼吸する土鍋”として知られる三重県伊賀焼の炊飯土鍋「かまどさん」を搭載。火力の調整なしにボタンひとつでふっくら甘いごはんを炊き上げる。土鍋の優位性を活かすため、IHヒーターでなくあえてシーズヒーターを採用し、二重のふたや土鍋内の水温を計るセンサー、土鍋冷却用ファン採用など、多くの工夫で、直火炊きに負けないおいしさを実現した。土鍋の乾燥モードなど独自機能も搭載。

SPEC●炊飯容量:1~3合(白米)、1~2合(玄米)●最大消費電力:1300W●加熱方式:電熱ヒーター式●炊き分け機能:食感3通り(かため・ふつう・やわらか)、おこげ3通り(うすめ・ふつう・こいめ)●操作方式:タッチパネル式●コード長:約1.8m(マグネット着脱式)●サイズ/質量:約W300×H261×D300m/約7.6kg(土鍋含む)

 

【検証内容はコチラ】

「食感と味」のチェックは、本機で炊飯した白米のおいしさを確認。炊きたての味に加え、冷やごはん、冷凍再加熱したごはんの味もチェック。さらに、「食感炊き分け」「少量炊飯」の味・食感の違いも確認していきます。機能面では、「保温機能」「操作性と炊飯器の扱いやすさ」「メンテナンス性」と、さらに「独自機能」と「設置性」を検証します。

【テストその1 食感・味の傾向は?】

今回は、甘みや粘りが強い魚沼産コシヒカリ平成29年米を炊飯し、食感と味を確かめました。<炊き上がり>だけでなく、<冷やごはん(おにぎり)>や<冷凍・再加熱>もチェックします。

 

<炊き上がり>

ふっくら・しゃっきり、粒立ちの良さが他機種にない独自の仕上がり

まずは「白米・炊飯」メニューを選び、炊飯量は「3合」、仕上がりは「ふつう」を選択。「土鍋直火炊きのおいしさを電気で再現した」という炊き上がりは、抜けるような白さ。みずみずしい香りが食卓に広がります。

 

さっそく茶碗によそってひと口食べると、ふっくら柔らかながら、しゃっきりとした粒立ちの良さを感じます。この食感はほかの電気炊飯器にはない唯一無二のもの。甘みは豊かですが「くどさ」がなく、あと味が良いため、「もうひと口、もうひと口」…と箸が進みます。

↑炊き立てを茶碗に盛ったごはんは、白く透明感があって見た目にもおいしそう。口に入れると、たっぷりと保水してふっくらした食感をまず感じますが、噛むとほどよい具合にほぐれてゆきます

 

<冷やごはん(おにぎり)>

冷めても独特のふっくら感が感じられる!

冷やごはんは炊きたてをラップで包んで、室内に5時間置いて冷ましたあとに試食。冷めても独特のふっくら感が残っているのが好印象でした。さすがに食べた瞬間に感じるしゃっきり感は減りましたが、それでも噛むうちに米粒がほどよくほぐれていくため、あと味がいいです。食べ進めるうちに甘みも強く感じるようになり、おにぎり1個食べ終わると大きな満足感が残りました。お弁当にも合う食感という印象です。

↑ラップに包んで5時間室内に置いたごはん。軽くおにぎり状にして食べたところ、しっとりした中にふっくら柔らかな余韻を感じました

 

<冷凍・再加熱>

柔らかさと粘りが出てきたが、ほどける粒感は残っていた

炊き立てを急速冷凍し、20時間経ったものを電子レンジで加熱して試食。試食。米一粒一粒のハリ感が弱くなり、かなり柔らかく粘りがある食感になりました。炊き立てのときほど食感の良さは感じられない、というのが素直な感想です。ただ、食べている間にほどよくほぐれる感覚は健在で、甘みもみずみずしさをキープしています。

 

とはいえ、冷凍後の食感と味の変化を伝えるため、やや厳しい表現を使っていますが、食事の際に出てくるごはんとしては何ら問題なし。「ごはんがちょっと柔らかめになったな」と感じる程度です。

↑白さが減って、表面に粘りが出始めているのがわかります。ただ、実際に食べたときのごはんの「ほどける」感じはまだまだ残っていました

 

【テストその2 食感炊き分けの幅は?】

その炊飯器で「最もしゃっきり硬めの食感に炊き上げるモード」と、「もっとももちもちに炊き上げるモード」で炊飯。それぞれの食感の違いを見ることで、食感の幅を確認しました。

 

「やわらか」ではほどける食感のなかにやや粘りが

本機の食感炊き分け機能は「かため・ふつう・やわらか」で、他社の高級IH炊飯器と比べると少なめです。一方、土鍋ごはんならではの「おこげ」モードも搭載し、「うすめ・ふつう・こいめ」の3段階でおこげのつき方を調整できます。まず、食感「やわらか」で炊いてみたところ、米粒にやや粘りを感じる炊き上がりになりました。それでも最後にごはんが「ほどける」食感は健在。甘みも豊かです。「ふつう」で炊いたごはんを冷凍・再加熱したときの食感に似ていますが、こちらのほうが、ごはんのみずみずしさを強く感じました。口の中でのほどけ具合も、冷凍・再加熱よりなめらかです。

↑食感「やわらか」で炊いたごはん。「ふつう」で炊いたごはんと、見た目の違いはほとんどありませんでしたが、食べてみると柔らかさと弾力が少し増していました

 

「かため」では、しゃっきり感がより際立つ食感に

一方、筆者の好みにもっとも合ったのが、「かため」に炊いたごはん。それほど硬い食感になることはなく、ほどよいふっくら感がありつつも、しゃっきりとした米の粒感が感じられる炊き上がりに。甘みもよりすっきりした印象で、特に和食などさっぱりしたおかずとの相性がいいと思います。

↑食感「かため」で炊いたごはん。見た目では、ごはんの周りの“おねば”が「ふつう」で炊いたときより少なく見えました

 

食感の炊き分けについては、全体に「やわらか」~「かため」で食感が激変するということはなく、あくまで土鍋炊きのふっくらしたおいしさをベースに、より柔らかく食べやすい食感にするか、粒感の立った食感にするか、といった程度の違いに留められている印象です。

↑本機では、おこげも「うすめ・ふつう・こいめ」の3段階で調整可能。「ふつう」で炊飯したところ、おこげの色はやや薄めですが、香ばしい風味はしっかり感じられました

【テストその3 少量炊飯の炊き上がりは?】

本機は3合炊きモデルで少人数世帯などに最適ですが、なかには「ひとり暮らしだけど、毎日炊きたてを食べたい」という人もいるでしょう。そこで、最小炊飯量の1合でごはんを炊いて、3合で炊いた場合との食感と味の違いを調べてみました。

 

3合でも1合でも食感に違いを出さない炊飯技術は見事!

1合炊きにすると、炊きたての香りがやや弱まり、甘みも控えめになった印象。しかし、ごはんのふっくら感やしゃっきり感は、3合炊きとそれほど違いを感じませんでした。高級炊飯器のなかには、少量炊飯専用プログラムでおいしく炊けるモデルもありますが、本機はこれに劣ることはありません。「炊飯量によって食感や味に違いがない」という意味では、極めて優秀な部類に入るといえます。

↑炊飯量1合で炊いたごはん。見た目には、ほんのわずかだけごはんのおねばが少なく見えますが、白くみずみずしい炊き上がりは言うことなし

 

ちなみに、炊飯量2合で炊いたところ、わずかに1合炊きよりもちもち感が強くなった印象でしたが、ふっくらかつしゃっきりした食感はそのままでした。こうした微妙な食感の違いは、食感を厳密に比較したからわかる程度のもの。米の量に対する水の量のわずかな違いと考えられ、ほぼ違いはないといえるでしょう。

↑炊飯量2合で炊いたごはん。おねばの量は3合炊きより1合炊きに近いように見えましたが、食感は3合に近い印象です。いずれにせよ、ほとんど差はありません

 

【テストその4 保温性能は?】

はじめに断っておくと、この「かまどさん電気」にはヒーターによる「保温機能」は備わっていません。それは「できるだけ炊きたてを味わってほしい」というメーカーの考え方によるものです。また、土鍋は蓄熱性が高いので、1時間程度は温かいごはんが食べられるとのこと。そこで、ここでは炊飯後土鍋に1時間保存したごはんの食感と味をチェックしました。

 

1時間後はほの温かく、もっちり感は出るもののベタつきはナシ

茶碗によそったごはんは、さすがにヒーターで保温した場合のようにアツアツとはいきませんが、ほの温かさを保っています。食感はしゃっきり感がわずかに弱まり、そのぶんもっちり感が出て甘みがより感じられます。注目は、ごはんのベタつきがないこと。これは鍋本体が多孔質なため、炊飯直後で土鍋内に水蒸気が多いときは鍋が水分を吸収し、逆に鍋の内部が乾燥してくると、吸収していた水分をまた鍋に戻すというはたらきがあるからだといいます。

 

もちろん、ヒーター保温の余分な加熱がないので、ごはんの劣化はほとんどなく、臭みも感じられませんでした。どうしてもアツアツが食べたければ、このごはんを軽くレンジでチンしてもいいでしょう。

↑土鍋で1時間“保温”したあとのごはん。水分を適切に保っており、ベチャつくことなくツヤツヤ輝いています

 

【テストその5 操作性/メンテナンス性は?】

土鍋ごはんはそのおいしさには定評がある一方、使い勝手や土鍋の手入れの手間がネックという人も多いです。「かまどさん電気」はそれらの課題を解消できているのか……? ここでは気になる操作性/メンテナンス性を検証していきます。

 

<操作性>

タッチパネルは快適だが、土鍋に水位線がない点に注意

本機のベースとなった炊飯用土鍋の「かまどさん」は、従来火加減調節が面倒だった直火炊き(ガス炊き)による土鍋炊飯を、一度中強火にかけたあと火を止めるだけ、あとはそのまま放っておくだけ…という工程に単純化し、大ヒット。「かまどさん電気」では、その手間をさらに減らしました。操作画面はタッチパネル式で、米の種類、炊飯メニュー、炊飯量、仕上がり(食感炊き分け)を選ぶだけ。

↑操作パネルはタッチ式。「米」キーで「白米/玄米/雑穀米」を切り替え、「メニュー」キーで「炊飯/おこげ/おかゆ」を、「炊飯量」キーで合数を、「仕上り」で炊飯時の食感と「おこげ」メニューでのおこげの濃さを調整します。

 

やや面倒なのは、金属製の炊飯器の内釜と比べて土鍋が重いことと、二重ぶたなのでふたを毎回二度セットする必要があること。また、土鍋に水位線がないため、専用の水カップで水の量を計って土鍋に給水する必要があることぐらいです。

↑土鍋のふたは二重になっています。重みのあるふたを二重にすることで、土鍋内を高圧に保て、高火力で炊飯しても吹きこぼれしない、中ぶたの2つの孔からうまみ成分の「おねば」が土鍋内に戻る、というメリットがありますが、炊飯時のふたのセットはやや面倒といえます。

 

↑本機の付属品。左上から水カップ、米カップ、しゃもじとしゃもじ置き、左下から鍋敷き、手ぬぐい。水カップには10㎖刻みの目盛りのほか、白米炊飯時の「1合・2合・3合」の水位線も入っています。本機でごはんを炊くときに水カップは必須ですね

 

使い始める前の作業「目止め」は「儀式」として楽しもう

ただし、炊飯後は二重ぶた(特に内ぶた)が熱いので、ミトンなどを使ってふたを取る必要があり、また取る際に蒸気が凝結したおつゆが垂れます。食卓にはふきんなどを用意しておいたほうがいいでしょう。

 

なお、本機を使い始める前には「目止め」を行う必要があります。これは土鍋表面の細かい気孔を米のでんぷん質で埋めて、水漏れを防ぐ作業のこと。と言っても、一度たっぷりの水でおかゆを炊いて水分を拭き取り、よく乾燥させるだけ。土鍋を使い始める前の“儀式”として、楽しむのがいいでしょう。ちなみに目止め工程で作ったおかゆは食べられます。

↑ちなみに本機は炊飯終了後に土鍋を本体から取り出して鍋敷きに乗せるのがオススメ。土鍋も本体も蓄熱性が高いため、炊飯後に土鍋を本体にセットしたままだと内部に残った熱でおこけができやすくなるそうです

 

<メンテナンス性>

土鍋の扱いには注意が必要だが「乾燥モード」が便利

本格土鍋を使う本機は、それなりにしっかりした手入れが不可欠です。まず、土鍋と2つのふたがかなり重く、また焼き物であるため、取り扱いに気をつけなければなりません。特に土鍋は約3.5kgあり、洗う際に流しにうっかり落とせば、土鍋が欠けるおそれもあります。

↑洗うパーツは土鍋、中ぶた、外ぶたの3つ。釉薬が塗られているので、汚れがそれほどこびりつきません

 

また、洗ったあとの乾燥も重要。一般的な土鍋は、しっかり乾く前に使うと、土鍋内部で水蒸気が膨張し、割れてしまう心配もあります。また、どこでどのくらいの時間乾燥させればいいのか、初心者にはわかりにくいもの。そんな方のために、本機には「乾燥モード」が搭載されています。土鍋を洗ったら水分をよく拭き取り、炊飯器本体に土鍋をセットして「乾燥モード」を選択するだけ。30分の乾燥時間で、しっかり土鍋を乾かしてくれます。

↑乾燥モードでは土鍋のみセットし、上ふたと中ふたは取り付けないようにします。乾燥モード終了後は土鍋を取り外し、風通しの良い場所で底面を上にしてしばらく自然乾燥させればOK

【テストその6 独自機能/設置性は?】

「独自機能」は各炊飯器に搭載されている、ごはんのおいしさにつながる独自の機能や技術、炊飯のバリエーションを広げる機能などをチェックします。また、使い勝手向上やお手入れの手間を省く便利機能も見ていきます。

 

「設置性」に関しては、横幅と奥行き、重さを確認します。また、炊飯中の蒸気の出方もチェック。さらに、設置性を高める独自の工夫があれば、それもチェックしていきます。

 

<独自機能>

本物の土鍋を使い、「多孔質」の良さを活かしているのが最大の独自機能

本機の独自性は、なんといっても本物の土鍋を使っていること。しかも、伊賀焼の人気炊飯用土鍋「かまどさん」を電気炊飯器用に調整したものを採用しています。先の「食感と味」の項でも触れましたが、本機の土鍋は“呼吸する”のが特徴。三重県の伊賀でとれた古琵琶湖層の土を使用しており、焼成の際に土に含まれた微生物の化石(遺骸)が焼け、土鍋の中に細かな気孔が多く生まれます。この気泡が炊飯時の蓄熱性を高め、同時に炊飯後の土鍋内の湿度を絶妙に調節してくれるのです。

↑伊賀焼の土鍋「かまどさん」を電気炊飯器用にチューニング。本来土鍋は手工芸品なので、個体ごとに微妙にサイズが変わるものですが、本機の土鍋は工業製品である本体にぴったり収まるよう、誤差1mmの範囲で作るそうです

 

ただし、この土鍋を使うには、課題も多かったとか。ひとつは発熱効率の高いIHが使えないこと。IHを使うには、土鍋の中に発熱するための金属を埋め込んだり、金属を土鍋に溶射したりする必要がありますが、それだと土鍋の孔がふさがれて、呼吸できなくなります。そのため、本機ではあえて昔ながらの加熱機器である「シーズヒーター」を採用。さらに、土鍋内の水温を検知し、適切な炊飯制御をするための温度センサーを土鍋に装着しました。

↑底面にあるグレーの円盤の下がシーズヒーター。通常のシーズヒーターでは出力1300Wの熱に耐えきれず溶けてしまうため、熱に強いステンレス製のものが使われています

 

また、蓄熱性の高さゆえ、短時間で温まりにくく冷めにくい土鍋内を急速に高温化するために、プログラムに予熱工程を加えたり、蒸らし工程で熱が入りすぎるのを防ぐために本体下部に冷却専用ファンを搭載したりしています。このような、他の炊飯器にはない機能を結集することで、本格的な土鍋炊飯の電気化を実現したわけですね。

↑土鍋底面の「長谷園」と刻印された部分にセンサー受光部が埋め込まれています。このセンサー受光部があるため、「かまどさん電気」の土鍋は、直火では使えません

 

↑炊飯器の本体穂ひっくり返すと、冷却用ファンが設置されています。土鍋は金属製の内釜と違って熱が逃げにくいので、ファンによる強制的な冷却が不可欠なのです

 

乾燥モードが便利なほか、玄米が驚くほど美味しく炊ける

一方、使い勝手の面では、土鍋の乾燥機能を搭載している点に注目です。「メンテナンス」の項でも触れたように、土鍋は毎回しっかり乾燥させることが不可欠ですが、本機には「乾燥モード」があるので、ボタンひとつでしっかり乾燥できます。30分経ったら土鍋を取り出して裏返し、残った湿気を飛ばせばOKです。これまで土鍋直火で乾燥の作業を負担に感じていた人こそ、そのメリットを感じることができるでしょう。

↑操作パネルの「乾燥」キーを押し、その後「炊飯」キーを押せば、乾燥開始。洗ったあとの土鍋をしっかり乾かします

 

もうひとつ、独自機能と言うべきかはわかりませんが、本機は玄米がとてもおいしく炊けます。玄米1合を仕上がり「ふつう」で炊飯すると、炊き上がりまで86分かかりましたが、米を洗ってすぐ炊飯し始めたのに、玄米としては驚くほどふっくら柔らかく炊き上がりました。

↑玄米の炊き上がり。玄米特有のヌカくさいニオイは抑えられ、甘みといい風味だけ残ったおいしいたきあがりでした。プチプチした食感もいいアクセントに。なお、玄米を洗う際は、硬い殻をあえて傷つけるように洗うとおいしく炊き上がります

 

<設置性>

本体と土鍋の大きさ・重さが購入のハードルになりそう

本機でメンテナンス性とともに購入の際のハードルになりそうなのが設置性です。3合炊きタイプながら直径は約30cm、重さは土鍋を含めて約7.6kgと、5合炊きタイプと比べても、かなり大きく重いです。本体に取っ手がついていないので、炊飯のたびに収納場所から取り出すのではなく、設置場所をあらかじめ決めておくほうが現実的でしょう。

↑「かまどさん電気」(左)と、筆者の自宅で使っている三菱電機 本炭釜KAMADO(右・5合炊き)との比較。これで3合炊きということで、かなりのサイズ感です

 

さらに、本機は炊飯中に蒸気をかなり放出します。特に玄米炊飯の際は、かなりの蒸気が出ますので、レンジ棚など天井の低い場所に置くのは避ける必要があります。ただし、デザインは黒~グレーのモノトーンで統一され、かなりスタイリッシュ。「見せ家電」として、対面式キッチンやテーブルの上に堂々と置いておくのもオススメです。

↑玄米炊飯時の様子。二重ふたのせいで噴きこぼれはありませんが、蒸気がかなり盛大に出ていました

 

↑釉薬を塗った土鍋のつやつやした光沢感と本体のつや消しのグレーの組み合わせがオシャレです

 

【テストのまとめ】

「もちもち」ではなく、ふっくら・しゃっきりした食感を楽しめるのが魅力!

炊飯用土鍋をまるごと使い、それに合わせて加熱方法から炊飯プログラム、冷却方法まですべてをチューニングした「かまどさん電気」。「ふっくらしながらもしゃっきり粒立ちのいい炊き上がり」が特徴です。高級炊飯器、特に圧力IH系のモデルはふっくら感が強いと同時にもちもち感が強く、やや柔らかめの炊き上がりになりますが、本機はそれらと一線を画した食感。個人的な印象で言えば、三菱電機の本炭釜KAMADOがやや近い食感だと感じました。また、今回3合/2合/1合の3種類の炊飯量で味と食感を比較しましたが、1合を炊いた際に炊きたての香りと甘みがわずかに弱いと感じた以外は、それほどの違いを感じませんでした。他のIH炊飯器と比較しても、本機の炊飯量による食感の変化は少ないと思います。

↑炊飯量1合で炊いたごはんは、白くみずみずしい炊き上がり

 

また、土鍋で炊いたごはんは冷めてもおいしいと言いますが、本機で炊いたごはんは冷めてもふっくら感が残っていた点が驚き。一方、炊飯直後のごはんを急速冷凍・再加熱したごはんは、他のIH炊飯器で炊いたごはんとの差がそれほどない印象でした。当たり前のことですが、やはり土鍋ごはんのおいしさを100%堪能したいなら炊きたてに越したことはありません。

 

炊き分けの幅や土鍋の保温能力にはそこまで期待できない

食感炊き分けは3通りですが、他の多彩な食感炊き分けができる機種に比べて、食感の幅は広くありません。ただし、本機の食感を「やわらか」や「かため」にすることで、ごはんの“かたさ”はそのままに、みずみずしさや粒感を微妙に変化させることが可能。おかずや気分に合わせて、食感を炊き分けるのも楽しそうです。

 

保温機能に関しては、本機は保温モード非搭載ですが、土鍋の蓄熱性が高いため、炊飯後もしばらくは温かいごはんを楽しめます。また、土鍋が炊飯直後の余分な水分を吸収、鍋内が乾燥し始めるとまた水分を戻すので、ごはんの最適な水分量を長く維持できるのもメリットです。ちなみに、紹介記事などで「1時間はごはんの温かさを維持できる」と書かれることもありますが、ヒーターで保温する炊飯器と違い、さすがに“アツアツ”の状態を維持するわけではないことは理解しておきましょう。

↑アツアツとまではいきませんが、蓄熱性がいいので、一定時間温かさを保つことができます

 

土鍋の扱いはやや手間だが、直感的に操作できて乾燥モードも便利

では一方の「使い勝手」についてはどうでしょうか? まず、操作パネルの使いやすさについては、他のIH炊飯器とまったく遜色ありません。炊飯モードが他の高級モデルより少ないこともあり、取扱説明書を見なくても直感的に操作できます。ただし、土鍋に洗った米と水を入れ、本体にセットするまでに少々手間がかかります。それは、土鍋に水位線がないので、専用カップで水の量を測る必要があるため。もうひとつは土鍋及び二重ぶたが少々重いことです。さらに炊飯直後の中ぶたはかなり熱く、素手で掴むと火傷するので注意しましょう。

↑水位線がないので、専用カップで水を計量する必要があります

 

メンテナンス性に関しても、土鍋及び2枚の陶器ぶたが重いので、洗うときに注意が必要。また、洗った土鍋をしっかり乾燥させる必要がありますが、本機には土鍋を30分で乾かせる「乾燥モード」も搭載されており、これまで土鍋の炊飯で不便を感じていた人には大きなメリットと言えます。

 

炊飯機能は唯一無二だが、設置性が最大のネックになりそう

本機の独自性は、何と言っても土鍋を使っていること。その特性を活かすべく、現行の高級炊飯器とは異なる技術を結集したことこそ、本機の独自機能の最たるものです。また上でも触れましたが、土鍋を自然乾燥する手間を省ける乾燥機能も本機ならでは。

↑伊賀焼の炊飯土鍋のメリットを活かすために、技術を結集

 

設置性については、実はこれが一番のネックになるかもしれません。3合炊きモデルながら、5合炊き高級炊飯器に匹敵する大きさと重さ(どちらかというと5合炊きのなかでも大きめで重めです)。通常の炊飯土鍋と比べても、こちらは土鍋の周りにヒーターや断熱素材、冷却ファンなどが入った本体があるのですから、圧倒的に場所を取ります。特に土鍋を洗ったあとは、本体とは別にその土鍋を乾燥させる場所を確保しなくてはなりません。炊飯中に蒸気も出ますから、ひとつの場所に置きっぱなしで使うなら、炊飯器の上に広い空間があって、換気もしやすい場所を選ぶ必要あり。購入を考える人は、その設置場所もしっかり考えておいたほうがいいでしょう。

↑乾燥モードの使用後、残った湿気を飛ばすための場所も必要になってきます

 

土鍋ごはんの再現性でいえば、現状でもっともオススメのモデル

本機は本物の土鍋を使用している以上、メンテナンスでIH炊飯器より手間がかかるのは事実。設置のハードルもやや高い本機は、正直言って、万人にオススメできる炊飯器とはいえません。ですが、他の炊飯器では味わえない食感は、なにものにも替えがたい唯一無二の魅力。なによりも土鍋ごはんのおいしさを求める人には、現状でもっともオススメできるモデルといえるでしょう。火加減の調節が不要で、乾燥モードを使えばワンボタンかつ短時間で土鍋を乾燥できるため、省手間という面でも魅力的。特に、すでにガスコンロで土鍋炊飯を行っていて不便を感じている人は、本機に乗り換えるのも大いにアリ。少量炊飯でもおいしく炊けるので、新婚夫婦や中高年の二人世帯にとっても、狙い目のモデルと言えるでしょう。

 

協力:楽天市場