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2018/11/27 18:00

このAIの使い方は新しい! 「気象データを使うエアコン」が花粉を「即キャッチ」できるワケ

2018年のエアコンは、AI(人工知能)の搭載が流行になっています。三菱電機は輻射熱や日射熱から少し先の体感温度の変化を予測して、自動的に快適温度をキープ。ダイキンはユーザーのリモコン操作を学習して、個人に合った最適な快適設定を探ります。

 

対して、今回紹介するパナソニックの新モデルは、これらとは全く違う角度からAIを活用し、快適性を追求しています。同社が注目したのは、お部屋の空気の質。特に、花粉やPM2.5といった、人体に悪影響を与える微粒子にフォーカスしました。その機能を解説するセミナーが開催されたので、以下でレポートしていきます。

 

2019年は花粉の飛散量が爆発的に増加する!

気象情報会社のウェザーニューズによると、「今年は記録的な猛暑で、しかも暑い時期が長かった。これにより、植物の生育が活性化したため、来年の春は花粉の飛散が増えます。全国平均で平年の6割増、今年の2.7倍。関東では今年の2~7倍にもなると予想されています」(メディア・放送気象事業本部の坂田真一さん)。

↑来年春の花粉は平年の6割増。特に関東で大量飛散が予想されています

 

↑今年も飛散量が多かったのですが、来年は今年をさらに大きく上回る予想です

 

同社の気象予報士、依田 司(よだ・つかさ)さんも「2018年の猛暑(※)に加えて、『表の年』(花粉の飛散量が多い年)ということもあって、来年の花粉飛散量は爆発的に増加するでしょう。これにより、これまでは花粉症が軽症で済んでいた方も重症化し、初めて花粉症を発症する方も増えてくるでしょう」と太鼓判(?)を押します。

※前年の夏が猛暑だと、翌年の春の花粉の飛散量が増えます

↑ウェザーニューズの坂田さん

 

空気清浄機がフル稼働するまでは、花粉の脅威にさらされる

花粉症患者の数は増加傾向にあり、特に30歳以下の若年層患者が急増しています。また、PM2.5による健康被害も無視できなくなっています。花粉やPM2.5に対しては自己防衛するしかなく、室内の自己防衛策としては空気清浄機が一般的。これまでは外出先から帰ってきた時に自分で空気清浄機のスイッチを入れるしかありません。

 

しかし、換気扇やドアの開け閉めで花粉・PM2.5はすんなりと室内に入ってきてしまい、空気清浄機がフル稼働するまでの時間は花粉の脅威にさらされ続けることになります。最近の空気清浄機は最近のWi-Fi機能搭載で外出先から運転スタートができますが、忘れてしまう時もあるでしょう。

↑29歳以下の花粉症患者が年々増加しています

 

↑最近知られるようになったPM2.5はさまざまな健康被害のもととなります

 

花粉とPM2.5の侵入量を判断し、エアコンが自動で空気清浄運転を開始

花粉の飛散が多い日でも、家に帰ったらキレイな空気の中で過ごしたい…そんな切実な願いを叶えるべくパナソニックが開発したのが新型エアコン、エオリアの「AI先読み空気清浄」機能です。

 

その仕組みは以下の通り。まず、ウェザーニューズとの提携により、本機が花粉とPM2.5の飛散データを丸1日ぶん取得。その飛散量のうち、どのくらいが家の中に侵入するのか、エアコンが蓄積した運転状況から個々の住宅性能を見定め、AIが判断します。その結果、侵入量が多くなると予想される場合、自動的に空気清浄運転を開始。つまり、家の中にPM2.5や花粉が溜まってから運転するのではなく、侵入する前から運転を始めて、侵入してもすぐに取り除くというわけです。

↑ウェザーニューズのデータを取得し、PM2.5と花粉が増え始めるタイミングで空清運転をスタート

 

↑ホコリセンサーで実際に室内に侵入した花粉とPM2.5を計測し、予測と差がある場合は自動的に住宅環境を補正し、次の運転を変化させます

 

↑AI先読み空気清浄運転のデモ。従来モデルはホコリセンサーが反応するまでにかなりの量のPM2.5がボックス内に溜まってしまいます。新モデルでは先に運転をしているので、PM2.5が侵入してもすぐにエアコンが吸い込むので、ボックス内には溜まりません

 

アクティブクリーンフィルターとナノイーXで室内もエアコンも清潔に

エオリアは昨年モデルから大容量の「アクティブクリーンフィルター」(可動式の空気清浄フィルター)を搭載しており、PM2.5や花粉だけでなく、カビ、細菌、タバコの煙、ホコリも除去します。この技術とウェザーニューズのデータ、AIの掛け合わせで可能となったのが「AI先読み空気清浄」なのです。また、脱臭効果や花粉・菌・ウイルスなどの抑制効果のある微粒子イオン「ナノイーX」も搭載しているので、カーテンや壁紙に付着した菌を不活性化するとともに、エアコン内部を清潔に保ってくれます。

↑アクティブクリーンフィルターの効果。20畳相当の広さもしっかり空気清浄します

 

↑アクティブクリーンフィルター。2-4年で交換となりますが、交換時期はエアコンが自動でお知らせしてくれます

 

つけっぱなしにすべきか否か、判定してくれる機能も

ウェザーニューズと共同開発した機能はもう一つあります。「つけっぱなし判定」です。近年、インターネットやテレビの情報番組などで、“エアコンはこまめにオン/オフするより、運転し続けたほうが電気代は安くなる”という話題が出ています。この情報を聞いて、外出する時にエアコンをオフにするかどうか悩む人も多いでしょう。しかし、家を開ける時間や外気温によって条件は大きく異なるため、電気代が安くなるかどうかは一概には言えません。

 

そこで、ウェザーニューズから市区町村ごとの天候・気温データを入手し、それにエアコンの設定温度、外出時間、エオリアが蓄積した個々の住宅環境をかけ合わせ、独自のアルゴリズムでつけっぱなしにすべきか否か、AIが判定してくれる仕組みが「つけっぱなし判定」です。具体的には、スマホの「エアリアアプリ」で外出時間などを入力すると、運転したまま外出して帰宅したときの電気代と、運転停止し帰宅後に再開して設定温度に到達するまでにかかった時間ぶんの電気代を比較表示してくれます。

↑運転したままの電気代と帰宅時の室温、運転停止して外出した場合の帰宅時の室温と設定温度に達するまでの時間・電気代が示されます

 

↑説明会場では実際に滋賀県と北海道で「つけっぱなし判定」のデモを見せてくれました。滋賀県草津市の場合、外気温22℃の天候時に、30分の外出でエアコンつっぱなしでは電気代6円、帰宅時の室温は28℃、運転停止した場合の帰宅時の室温は21℃まで下がり、設定温度の27℃に達するのに時間として10分、電気代は9円かかります。これにより、つけっぱなしのほうが電気代が安いことが分かります

 

↑北海道札幌市西区では、運転停止した場合には設定温度27℃まで達するのに20分かかり、電気代は15円かかります。滋賀県同様、30分の外出ならばつけっぱなしがお得

 

エオリアの新機能に「家が快適空間を作る」未来を見た

「AI先読み空気清浄」「つけっぱなし判定」機能を搭載したエオリアは、WXシリーズとXシリーズの2つのラインを用意しています。Wxシリーズは冷房能力4.0~9.0kWの6モデルで実売価格は32万円~43万円(税別)、Xシリーズは冷房能力2.2~9.0kWの11モデルで実売価格は26万円~41万円(税別)となります。

 

外部のデータと家電機器が蓄積したデータをAIが解析することで、家庭内の様々な機器が自動で判断し、ユーザーに先んじて快適な空間を作り出す……そんな未来がそう遠くない未来にやってくるでしょう。

 

まだ今のところはエアコンの空気清浄運転だけですが、パナソニックは家の中にあるほぼすべての電気機器を販売しており、家そのものもグループ会社が作っています。いずれ、すべてを連動させて空調や照明の調整をはじめ、カーテンの開け閉めからお掃除、お風呂やベッドの用意まで、何もかもを自動で行ってくれる時代になるかも。パナソニックの今回の取り組みは、SFの世界がすぐそこまで近づいていることを感じさせてくれます。