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2019/8/23 21:30

消費電力7割減、馬もなんだかキレイに見える…? 東京シティ競馬がナイター設備を一新したら「違い」がエライことに

東京シティ競馬(東京・大井競馬場)が本馬場のナイター照明を一新。さらに、日本最大規模の照明演出「LIGHTNING RUN(ライトニング ラン)」を7月31日からスタートしました。

東京シティ競馬とパナソニックがコラボしたらどうなる?

東京シティ競馬といえば、日本初のナイター競馬、「トゥインクルレース」で有名。時は昭和61年(1986年)、バブル時代の幕開けの年にスタートしました。夜の競馬場の独特の雰囲気とエキサイティングなレースの相乗効果により、トゥインクルレースはオシャレな男女のオシャレなデートスポットとして瞬く間に人気となったのです。

 

…と、あたかも自分が経験したかのように書いていますが、バブル世代ながらオシャレな生活というものに全く縁がなかった筆者。当然、トゥインクルレースはおろか、大井競馬場にすら行ったことがありません。でも今回、ライトニング ランのメディアお披露目会に参加してきたのは、この照明設備をパナソニックが手掛けたと聞いたから。同社が家庭の照明設備を手掛けているのは知っていましたが、こうした大規模施設の照明も手掛けているなんて知らなかった……。というわけで、パナソニックと東京シティ競馬(TCK)がコラボしたらどんな光の演出が見られるのか、期待してお披露目会に参加しました。

 

パナソニックのノウハウを注ぎ込んだダイナミックな光の演出

大井競馬場では、LEDを使ったカラフルなイルミネーション演出自体はこれまでも実施していましたが、トラック内のイベントスペースのみで行われるものでした。というのも、トラック照明に使われていた水銀燈やメタルハライドランプは瞬時に明暗の切り替えができないため、イルミネーションプログラムと同期させることが難しかったからです。

 

一方、パナソニックは舞台エンターテイメントの演出照明で50年の実績があり、現在の舞台演出では瞬時に暗転、瞬時にフル光量は当たり前。さらに同社は東京スカイツリーの照明も手掛けるなど、ダイナミックな空間照明演出のノウハウもありました。こうした技術を注ぎ込んだのが、今回のライトニング ラン。パナソニックによって新設された馬場照明と既設のイルミネーション、音響が連動し、あたかも競走馬がトラックを駆け抜けるような、疾走感あふれるダイナミックな光の演出が可能になりました。

↑ライトニング ランのイメージ。トラックを走る閃光と中央のイルミネーション、音響が融合した総合演出となります

 

写真ではわかりづらいので、以下の公式イメージ動画を見てください。真っ暗から100%明るさに瞬時に移行したり、光がトラックを走ったり、それに合わせて中央のイルミネーションが鮮やかに動き回ったりと、とても楽しいショーとなっています。なお、このライトニング ランはトゥインクルレース開催日に、レースとレースの間に行われます。

 

【動画】2019TCK新照明演出イメージVTR(公式)

 

色再現範囲が広がった4K・8K放送に対応し、自然光に近い見え方を実現

今回、パナソニック ライフソリューションズ社が手掛けたのは「ライトニング ラン」だけではありません。東京シティ競馬の基本的なナイター設備についても、時代の変化に合わせて大規模な改修を行いました。それは、4K・8K対応。4K・8K放送は従来のハイビジョン放送に比べて色の再現範囲が拡大し、実際に人間の目で見える色に近くなります。そのため、パナソニックはNHK放送技術研究所と共同で4K・8K放送に対応した演色性を持つLED照明を研究し、このほど東京シティ競馬に導入したものです。

↑4K・8K放送に対応した最新LED照明器具を設置

 

↑色の再現範囲が広がった4K・8K放送に対応し、演色性(自然光と比較した指標。自然光が当たったときと同じ色の場合はRa100とします)をRa90以上に高めています

 

チラツキを抑えてスーパースロー映像をキレイに映すのをサポート

さらに、ハイビジョン放送が1秒30コマなのに対して、4K・8K放送は最大で1秒120コマと高速再現が可能になりました。このため4K・8Kはスーパースロー再生が可能になったのですが、従来の水銀燈やメタルハライドランプでは光出力に波形があるため120コマのスーパースロー再生時にその波形によるチラツキが起こってしまうのです。一方、今回照明として導入したLEDは最適点灯技術を搭載したことで光出力に波形がないため、モニター側でスーパースローを再生したとしても、チラツキなくスムーズな映像を楽しめるようになったのです。

↑馬場照明全体を4K・8K放送対応に改修。照明演色性とスーパースロー再生に対応し、テレビ中継が見やすくなります

 

光を絞って「光の重なり」を抑え、まぶしさを軽減

競技場ならではの照明空間設計も施されました。一つは、まぶしさの低減。競技場に設置される照明は多数の光源が搭載されますが、明かりを強くした場合に光が塊となって大きくなり、それがまぶしさを感じさせる原因となっていました。そこでパナソニックでは個々の光源の光の範囲を狭く絞り、出力を強くしても光が重なりにくく、光が塊になりにくい構造としました。騎手、競走馬、観客それぞれの位置でまぶしさを感じることなく、くっきりと周囲が見渡せるようになったのです。

↑競馬場内の見やすさも改善。光を狭い範囲に絞り、光が塊になりにくい仕様に。騎手、競走馬、観客すべてが眩しくないよう配慮しました

 

↑メインとなる馬場照明に加え、ライトニング ランに向けてムービングライトや操作卓も納入。複数の機器の連携を可能としています

 

このほか、パナソニック独自のバーチャルリアリティ検証システムを利用して、周辺地域への光漏れ検証も行うなど、内に外に最適な照明環境を作り上げました。なお今回の改修により、照明設備台数は従来の1319台から1152台へと13%削減、消費電力は70%もの大幅削減となります。

↑馬場照明用のLED投光器。これが馬場全体に1152台設置されています

 

照明演出を通じて競馬+αの魅力を高める狙い

大井競馬場はインターネット投票などにより昨年度は2350億円を売り上げて業績は好調です。しかし、来場者数は平成21年度の1日8500人をピークに下がり続け、現在は6000人前後で横ばいを続けています。往時の賑わいを取り戻すべく、「アミューズメントパーク大井」構想の下でカップルや家族連れ向けのイベントを開催するなど、これまでも競馬+αの魅力を提供してきました。今回のライトニング ランもその一環で、照明演出を通じてトゥインクルレースの魅力を伝えていきたい考えです。

 

東京シティ競馬のトゥインクルレース開催中の入場料は100円で、フードやドリンクメニューはかなり充実しています。夕涼みがてら、会社帰りにちょっと寄ってみてはいかがでしょうか。私もこれを機に、ビール片手にたこ焼きをつまみつつ、バブル時代にできなかったおしゃれなアーバンライフ(?)を楽しんでみたいと思います!