家電
掃除機
2019/10/16 21:15

「ようやくルンバを脅かす製品が…」5万円台のロボット掃除機が、家電のプロの想像を超えていた【徹底比較】

アンカー・ジャパンは9月13日より、自社の家電ブランド「Eufy(ユーフィー)」からロボット掃除機の最上位モデル「Eufy RoboVac L70 Hybrid」を発売しました。こちらは実売価格5万4800円ながら、吸引と水拭きの両方ができるハイブリッド設計で、しかも先進機能のSLAM(※)も搭載しているとのこと。とはいえ、それにしては価格が安すぎる……実際のところ、その実力はどうなんだ?

※SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)…自己位置認識と地図作成を同時に行う技術のこと

…というわけで今回は、ご自宅でも複数のロボット掃除機を使いこなす家電のプロ・戸井田園子さんに協力を依頼。本機を1か月間、ご自宅でじっくりとテストしてもらいました。そして、ロボット掃除機といえば、多くの方がロボット掃除機のトップランナー「ルンバ」と比べてどうか? と思うはず。そこで今回は、価格帯は違えどSLAM機能を持つ最上位機種同士ということで、本機とアイロボット社の「ルンバi7」(オンラインストア価格10万9868円)を比較。「ルンバi7」を「5点」とした場合(水拭き性能の場合は同社の床拭きロボット ブラーバと比較)、本機はどのレベルにいるのか、5項目で採点してもらいました。結果は、「かなりの高コスパ」「私も欲しくなりました!」と想像を超える高評価。以下、詳細をごらんください!

 

【レビューしたのはこの方!】

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家電コーディネーター

戸井田園子さん

雑誌やテレビなど、数多くのメディアにひっぱりだこの家電専門家。自宅では複数のロボット掃除機を使用しており、ロボット掃除機を見る目は厳しい。

 

【レビューしたモデルはコチラ】

吸引と水拭きの両方が可能で、効率よく走行する技術を搭載

アンカー

Eufy RoboVac L70 Hybrid

実売価格5万4800円

「Hybrid」の名を冠する通り、吸引と水拭きの両方ができるハイブリッド設計が特徴。また、AIによるマッピング技術「A.I Mapテクノロジー」を搭載することにより、リアルタイムに部屋の形をマッピングし、自ら経路を設計し掃除を行います。レーザーセンサーとジャイロセンサー、加速度センサーを組み合わせ、自分の位置を推定する「iPathレーザー・ナビゲーション」も搭載。従来のナビゲーションシステムより効率よく掃除できるようになり、最大2.5時間の連続稼働時間を実現しました。本体の充電残量が少なくなると自動で充電ステーションへ戻り、充電完了後、掃除を停止した位置から掃除を再開するのも便利です。Wi-Fiに対応しており、スマホでの操作が可能。EufyHomeアプリに作成されたマップから進入制限エリア、掃除強化エリア、水拭きエリア等を指定することが可能です。

↑サイズは約33.5×33.5×10.5cmで、やや大きく感じる

 

【チェックその1 集じん性能 4.0/5.0pt】

ブラシが壁際にも届き、様々な種類のゴミがしっかり取れた

↑戸井田さんの自宅で走行するEufy RoboVac L70 Hybrid

 

吸引パワーは4段階設定できるので、汚れに応じて使い分けられます。今回は「標準」モードで掃除。大きなホコリ(綿ぼこり)も、細かなホコリ(粉ホコリ)も、砂利のようなホコリ(わんこの食べこぼし)など、様々なホコリを集めていました。日常的なゴミやホコリはしっかり取れている印象。

↑実際に取れたゴミ

 

エッジブラシが長めで壁際や家具ギリギリのホコリにもしっかり届いていたので、それなりに集めていました。ゴミは逆流することなくダストボックスの中にしっかり収まっていて、3回分貯めても大丈夫。ただし、微細な粉状のホコリの捕集量が少ないと感じた点と、一度に集めるゴミの量はやはりルンバi7の方が上かな? ということでこの点数に。走行中の音はそこまで気になることはなく、深夜・早朝でなければ問題なし。静音モードもあるので、使い分ければOKです。

↑エッジブラシ(左上)が長めなのが◎

 

【チェックその2 拭き掃除性能 4.0/5.0pt】

仕上がりはキレイだが、マットに乗り上げてしまうことも

本機の大きな特徴が、ゴミの吸引と水拭きが同時にできること(水拭きだけのモードも可能)。吸い残した細かなホコリもクロスで拭き取ってくれるので、仕上がりはかなりキレイに感じます。水拭きの水の量は3段階に設定が可能。通常のフローリングであれば「小」が、拭いた感じがわかりつつビチョビチョにならない、ほどよい水の分量でした。クロスには給水タンクから水分が適宜供給されるので、最後まで適度な湿り気があるのがいいですね。

↑「モップモジュール」を本体裏にセットするとモードが切り替わります。モップ部は軽く押すだけでセット完了

 

問題は、多少の段差でも乗り越えてしまうため、玄関マットや部分敷きのカーペットなど、水拭きのときも乗り上げてしまうのが残念。玄関マットに乗り上げて、マットがうっすら湿ってしまったことも。ただし、アプリを使えば侵入禁止エリアを指定することは可能なので、カーペットの部分には入らないように指定できますが、そうすると吸引掃除もできなくなるのが悩ましいところ。部屋の床全体の掃除を任せるなら、置き敷きのカーペットやマットははがしておくのがおすすめです。次世代機では水拭きモードのとき、段差を乗り越えないようにできるとうれしいですね。

 

また、円形なので、どうしても壁際や部屋の角まではカバーできません。直径もそこそこ大きいので、狭いところは拭けないのも惜しい。拭き掃除のクオリティは、ブラーバ(アイロボット社の床拭きロボット)には劣るかな…といった印象です。

 

【チェックその3 走行性能 5.0/5.0pt】

間取りや家具をしっかり認識し、効率よく掃除するのがお見事!

リアルタイムに部屋の形をマッピングできる頭脳派。充電ステーションから動き出すと同時に空間を把握し始め、部屋の大きさや間取りを認識していきます。その様子はアプリのマップでもよくわかり、まずは本体上面にあるレーザーが放射線状に広がり、だいたいの部屋の形を把握している様子がわかります。やがて掃除機本体が動くことで、部屋全体の形が徐々に明らかになり、次々とマップを完成させていく様子を見ていると、本当に頭がいいと感じます。

↑こちらの突起から赤外線を照射し、自らの位置を把握します

 

↑マッピングを開始したアプリ画面

 

認識した部屋の形に合わせて最も効率の良い経路を導き出し、ジグザク走行で無駄なく動くので、約33㎡(約20畳)の広さを平均40分前後で掃除できました。これは、ランダムに走行するモデルに比べるとかなり早いです。アプリで掃除の結果を確認すると、見事に間取りが再現されていて、かつ家具もしっかり認識できているのがわかりました。さらに、アプリで掃除機が走行した軌跡を見てみると、廊下など狭い場所は長手方向に走行するなど、効率よく隅々までしっかり走行していました。この結果を見る限り、行き忘れた場所は無いと確信できました。

 

なお、筆者の家はリビングからダイニング・キッチン・廊下と、ぐるりと回れる間取り。ドアの開け閉めの状況を変えて試してみたところ、いずれのケースでもすべての床をカバーしていました。これはなかなかお見事!

↑間取りを把握して、効率よく掃除してくれました

 

モードは部屋全部をカバーする自動モードのほか、指定したエリアを集中的に掃除するスポットモードがあります。アプリ操作でエリアを指定することもできるので、状況に応じて使い分けられるのは便利でした。

 

 

【チェックその4 操作性 4.0/5.0pt】

全ての操作がアプリでできるのが便利

本体はオートボタンのみなので、迷わず使えます。アプリも直感的にわかりやすく、戸惑うことなく使えました。掃除の開始や停止、スケジュールの設定、吸引パワーやモップの水の量、侵入禁止エリアの指定、掃除履歴の確認など、全てアプリでできるのは便利。

↑アプリ画面の例

 

水拭きは、モップクロスが装着されている「モップモジュール」を取り付けると水拭きモードになる仕組みで、シンプルでわかりやすいと感じました。取り付けると音声で水拭きモードになったことをアナウンスしてくれるのもいいですね。ただ、ダストボックスの上部が水タンクになっていて、水が入るスペースが薄いため、水が溢れやすく満タンまで入れにくいのが残念。また、水タンクがモップモジュールの近くにないので、ややわかりにくいです。モップモジュールに水タンクを内蔵するよう改善してほしいですね。

↑本体のフタを開け、水タンクが一体化したダストボックスを取り出します

 

↑水タンクはダストボックスの上部に配置

 

【チェックその5 メンテナンス性 4.0/5.0pt】

クロスは着脱しやすいが、洗うのを忘れないように注意

ダストボックスは、フィルターを外して中のゴミを捨てようとすると、ゴミが出口にひっかかってサッと出てこないことがあるのが残念。水タンクを外してダストボックスの上部を開ければ、ゴミが捨てやすいです。また、ダストボックスはフィルターまで含めてすべて水洗いできるので、清潔に維持できるのがいいですね。一方、ダストボックス上部にある水タンクは薄くて排水しにくく、中が乾きにくいのが気になりました。こちらはしっかり排水できる仕組みにして欲しいです。

 

「モップモジュール」クロスは掃除終了後、毎回洗う必要あり。ただ、掃除が終わると充電ステーションに自ら戻るため、つい洗うのを忘れてしまいがち。放置するとクロスが臭くなりがちなので要注意です。いずれは水拭きをした時はクロスを洗うよう、音声かアプリで案内してくれるとうれしいですね。なお、クロスはスライドさせて着脱。最初は戸惑いますが、方法さえ分かれば着脱しやすくお手入れはしやすいです。吸込口のロールブラシは毛絡みが少なく、ブラシの着脱も簡単なので、お手入れはラクでした。

↑クロスはスライドさせて着脱します

 

↑ロールブラシはカンタンに着脱可能

 

【総合評価 4.5/5.0pt】

この頭脳と掃除力で5万円台はかなりの高コスパ

水タンクが薄くて水が入れづらく乾きづらい、水拭きの時にカーペットに乗り上げてしまうなど、水拭き兼用ゆえの惜しい点がありました。とはいえ、3年前に同様に製品チェックをした「Anker RoboVac 10」に比べると、驚くべき進化です。マッピングしてくまなく走行できるハイレベルの頭脳と、ゴミの吸引と拭き掃除が同時にできる掃除力が素晴しい。この進化には、企業の努力を感じますね。しかも、この性能で価格は5万円代とかなりの高コスパ。それも含めてこの点数としました。ようやくルンバを脅かすレベルの製品が登場したと言えそう。私も欲しくなりました!

 

【ギャラリー(GetNavi webでご覧いただけます)】