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掃除機
2020/7/29 6:00

最新コードレス掃除機の「からまないブラシ」の実力は? ロングヘア人口が多い家庭で検証!

パナソニックの「パワーコードレス」は2018年に登場した同社のコードレス掃除機の上位シリーズで、ハイパワーモーターと高電圧&大容量バッテリーを搭載するのが特徴。今回、その最新モデルである「パワーコードレス MC-SBU840K」(実売価格9万6580円)を実際に試す機会を得た。全く新しい構造のヘッドを搭載し、「毛がからまない」というが、その実力はいかなるものであろうか。

↑パナソニック「パワーコードレス MC-SBU840K」。サイズ/質量は幅253×奥行218×高さ1150mm/2.6kg(スティック時)。運転時間は強:約6分、自動:約18~約30分、ロング:約40分/約90分(ノズルブラシ回転オフ)

 

ブラシに毛が絡まないのは本当か? ロングヘア人口が多い我が家で試す

今回、筆者に検証の依頼が来たのにはワケがある。筆者には3人の娘と奥さんがいて、その全員がロングヘアなのだ(著者は短毛)。ロングヘアの家族が多い我が家では掃除をすると大量の髪の毛を吸い取ることになる。そして吸い取った毛の一部はヘッドのローラーに絡むため、本気で掃除をするときは1、2回、ローラーに巻き付いた髪の毛を切ったり、取り外したりという手間が発生していた。その点、「パワーコードレス MC-SBU840K」は新構造の「からまないブラシ」を搭載し、髪の毛がヘッドのローラーに絡まないという。その性能を試すには、筆者の家庭はもってこいというわけだ。

 

一般的に、掃除機のヘッドには、回転して床のゴミやホコリなどを掻き込むブラシローラーがついている。ヘッド内にはモーターも内蔵されており、スイッチを入れるとブラシローラーが回転。吸い込む力とブラシの回転を合わせてゴミを回収する仕組みだ。しかし、このときに長い髪の毛はダストボックスに吸い込まれる前に、ブラシローラーの回転に巻き込まれて、絡まってしまう。

 

そこで、新開発の「からまないブラシ」は、ブラシローラーの形状を一新。円すい状のローラーを2本搭載し、間を少し開ける、業界初の円すい形ダブルブラシ構造を採用することで、髪の毛の巻きつきを解消している。

↑ヘッドに円すい状のダブルブラシを内蔵した「からまないブラシ」

 

↑ヘッド内には2つのモーターを搭載しているため重くはなっているが、同時に自走性もアップしている

 

実際には髪の毛を吸い込んだ直後は、従来通りブラシローラーに巻きつくのだが、円すい構造とブラシの角度や配置を工夫することで、絡みついた髪の毛がだんだんとヘッドの中心に集まって行き、最終的にはローラーから外れて隙間から吸い込まれるという仕組みだ。このほか、ブラシの毛量をアップすることで、絡んだ毛がブラシの奥まで入り込むのを防ぐ工夫もなされている。

↑「からまないブラシ」搭載のパワーノズルのほかに、ふとん清潔ノズル、ペタすき間ノズル、すき間用ノズル、ロングホースが付属する

 

ブラシに絡みやすいミシン糸でテストしたら上々の結果に

では、実際に使って「からまないブラシ」をテストしてみよう。まずは細いミシン糸で試してみた。30cmぐらいに切ったミシン糸を100本ほど用意し、床にばらまいたらそこを2、3回往復して糸を収集する。吸い取った後もローラーを回転させるため、さらに2、3回往復した。

↑毛からみのテストに用意した3色のミシン糸。30センチの長さで各30本強、100本ほどを用意して2m四方の床にばらまいた

 

その結果は下の写真の通り。ブラシの左側に1本だけピンク色の糸が残ったが、残りの糸はからむことなく、全てキレイに吸い込むことができた。パワーコードレスの開発担当者によると、ミシン糸は髪の毛よりもかなり太いため、ブラシの毛に絡みやすいという。そのミシン糸がこれだけ絡まずに吸えるなら上出来だろう。かつ、2m四方に100本ものミシン糸が床に落ちているというシビアな環境は現実では考えにくく、この結果であれば、通常使用ではまったく問題ないはずだ(ちなみに、GetNavi web編集長の山田が3週間近く本機を使った際、髪の毛以外の物も吸ったが一度も絡まなかったという)。

↑掃除が終わったあとのヘッド。ブラシに1本だけ残ったが、ほかはすべて絡まず吸い込まれている

 

↑ダストボックス内のミシン糸。ダストボックス内で巻き付いていないのも評価できる

 

リビングでは3姉妹+妻の髪の毛も絡まず取れた

実際に子ども達が一日中過ごしているリビングも掃除してみた。床には3姉妹+妻の髪の毛が落ちているのだが、それを本機はどんどんと吸い取って行く。吸引力は非常に高く、さらにホコリなどが多いところはクリーンセンサーが反応し、「自動」運転だと自動的に吸引力をアップしてくれるのも便利だ。

 

10畳ほどのリビングスペースを掃除した後のヘッドが以下の通り。髪の毛は一切絡んでいなかった。これまで 掃除のたびに行っていた、ブラシローラーに巻き付いた髪の毛を切る作業はこれで不要になったわけだ。

↑実際にたくさんの髪の毛が落ちているリビングを掃除した後のヘッド。猫の毛が少し残っているが髪の毛は巻きついていない

 

さらに「からまないブラシ」には副産物もある。円すい状のブラシを左右から2本搭載する構造のため、ヘッドの中には2つのモーターが内蔵されており、ヘッド自体の前に進もうとする推進力が強いのだ。このため、掃除をしているときに本体が軽く感じられた。実際には前モデルより、質量はわずかにアップしているのだが、モーターの推進力のおかげで、重さを感じることなく、より軽快に掃除できるというわけだ。

↑こちらは重曹を使った吸引力のテスト。1往復で通過した場所の重曹はきれいに吸い取れていた

 

席においているプラスチックのコップから「からまないブラシ」の着想を得た

以下では、7月に行われた本機の体験会で聞いた「からまないブラシ」の開発エピソードにも触れていこう。開発を担当したパナソニック アプライアンス社の堀部 勇さんは、髪の毛が絡まない構造を3年前から研究していたそうだ。その過程ではキャタピラータイプのヘッドやクワで耕すような構造のブラシなども考案。しかしいずれもうまくいかなかったという。

↑ゼロから「からまないブラシ」を開発したパナソニック アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 クリーナー事業 クリーナー技術部 クリーナー設計課の堀部勇さん

 

新しいアイデアを求めるなか、ふと目に付いたのが、席においている在籍状態を示すプラスチックのコップ(上写真参照)だった。ブラシが円すいならば、径の太いほうから径の細いほうへ、髪の毛を動かすことができるのではないか……と考えた。当初は一本のブラシを円すい構造にして試してみたがそれではうまくいかず、最終的に吸い込み口のある中央に髪の毛を集められるダブルブラシを採用することになったそうだ。このような紆余曲折を経て、ようやく完成したのが「からまないブラシ」というわけだ。

 

「からまないブラシの搭載」でトップクラスの魅力的なモデルになった

ダストボックスの脱着が硬い点や、ダストボックスのフタが100度ぐらいまでしか開かない点など、個人的には気になる点はまだあるが、そこはもはや好みのレベル。200Wのハイパワーでしっかりとゴミを吸い取ってくれる基本性能の高さに加え、「からまないブラシ」を搭載することで、「パワーコードレス MC-SBU840K」は多くのコードレススティック掃除機の中でもトップクラスの魅力的なモデルとなった。特にロングヘアの家族がいる家庭や長毛種のペットを飼っているような家では大活躍することは間違いないだろう。

↑専用スタンドが用意されており引っ掛けるだけで充電もできる

 

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