ライフスタイル
2017/2/11 19:00

病院よりも薬局に行ったほうがいい!? いま話題の「セルフメディケーション」とは?

みなさんは、体調が悪くなるとどうしていますか? 診療所に駆け込む、かかりつけの病院に行く、夜間・休日診療所を探す……など、いくつかの方法があるでしょう。実際、私も町のクリニックや比較的大きな病院、夜間・休日専門の診療所などで医師として診察している時には、急な腹痛や下痢、風邪などで訪れる患者さんに数多くお目にかかります。もちろん、医師としてきちんと診断し、必要なお薬を処方するのですが、そういった患者さんを診ながら、ふと思うことがあります。それは、「別に、病院にこなくても、対処法があるのになぁ」ということです。

 

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別に嫌みでいっているワケではありません。私たちが日常生活の中で、時々遭遇する腹痛や下痢、風邪などの症状の多くは、レントゲンや採血などの検査が必要なわけでもなければ、手術が必要なわけでもありません。要は、医師が問診、診察をした上で病名を決め、薬を決めているだけといえばそれだけです。そして、その病名は、多くの場合、患者さん自身も解っておられますし、それが正しい場合がほとんどですし、場合によっては、「○○をください」とお薬を指名される患者さんもいらっしゃるぐらいです。

 

■実は意外に使い勝手がいい、薬局のすすめ

今までに経験したことがないような症状や痛みの場合には別ですが、「あぁ、いつもの……」と思われるような場合には、是非、一度、薬局に行ってみてください。「えぇ!? 薬局なんて」と思われるかも知れませんが、実は、意外に使い勝手がよいのです。

 

まず、時間のメリットです。医療機関を受診するとなると、半日仕事になることが多いのですが、症状を薬剤師が聞いて、適した薬を選ぶ時のアドバイスをしてくれる薬局では待ち時間はほとんど有りませんし、夜間・休日でもアクセスしやすいです。

 

次に、すぐに治療が可能ということです。薬は口から体に入って初めて効果を発揮します。そういった意味では、腹痛や風邪といった一般的な症状の場合には、「常備薬」としていつものお薬を用意しておくことで、おかしいなと思ったらすぐに治療を始めることができます。医療機関の場合だと、医療機関での待ち時間だけでなく、処方箋を持って薬局に行って……と実際に治療が始まるまでにずいぶんかかってしまいます。

 

■病院に行くのは間違いではないけれど…

「何かあればお医者さんに行く!」というのは間違っているわけではないのですが、その全部が全部お医者さんにいかなければならない疾患かというと、もちろん、そうではありません。もし、いつもの症状で、いつものあのお薬が欲しいという場合は、薬局で薬剤師に相談することで、今、申し上げたような薬局の時間と治療開始のスピードのメリットを実感することができます。

 

この影響が如実に出ているのが、この数年、医師の処方箋が必要な医療用医薬品から、「スイッチOTC薬」へと分類が変わった花粉症の薬です。花粉症の診断は、もちろん、最終的には医師が行いますが、何より患者さん自身が「あ、むずっときた!」「そろそろ花粉が飛び始めた……!」と解られるケースがほとんどです。しかも、いくつかある花粉症のお薬の中で、自分にあったものはコレだ! と決めておられるケースもしばしばあります。そんなときには、わざわざ医療機関を受診して、半日仕事でようやく薬を手に入れるよりも、薬局にパッと行って、薬剤師に相談をしてアドバイスをもらいながら、いつものあのお薬を入手し、サッと服用した方が、圧倒的に花粉症の症状に悩む時間を短くすることができます。例年の花粉症に悩まれる患者さんの中で、医療機関ではなく薬局に行く方が増えているのは、こういった理由があるからだと思います。

 

このようなことを、セルフメディケーション(self medication)すなわち、自分でお薬の治療をすることと言い、最近、少しずつ広まり始めています。自分自身の健康は自分で守るという観点からも、スピーディに治療が始められるという観点からも、この概念は今後、さらに広がっていくと思います。

 

■話題の「セルフメディケーション税制」って何?

とくに、今年からは「セルフメディケーション税制」といって、薬局で売っている薬で指定されたものを購入し、その総額が年間1万2千円を超えた場合には医療費控除の対象になるという制度が始まりました。現在は、まだこの対象になるお薬は少ないですが、今後、国の医療財政を適正化するという観点のもと、さらに対象薬は広がっていくでしょう。具体的には、「スイッチOTC薬」と呼ばれる、今まで医師の処方箋が必要だった薬剤が、薬局で薬剤師の対面による販売か可能になったり、控除対象となる薬剤が追加になったりするようにして、より多くの方に利用されるようになるでしょう。

 

もちろん、医師に行くことがなくなることはありません。医師の診断や医療機関でしか処方できない薬が必要な病気も、たくさんあります。しかし、そんなときも、まず、薬局で相談し、適した薬を相談しながら選んで使用してみる。そしてその後の経過や結果を薬剤師に相談し、医師の診察が必要かどうかも判断してもらった後、医師にかかるというのが理想的ではないかと考えています。

 

昨今、「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」ということが言われていますが、税制の改正は、結果的にはこういった制度の後押しになるのではなるでしょう。是非、一度、薬局で薬剤師に相談してみてください。きっと大きな発見があると思いますよ!

 

【著者プロフィール】

狭間研至

昭和44年大阪生まれ。ファルメディコ株式会社 代表取締役社長・一般社団法人 日本在宅薬学会理事長・医療法人嘉健会 思温病院院長・熊本大学薬学部・熊本大学大学院薬学教育部 臨床教授。平成7年大阪大学医学部卒業後、国公立病院で外科・呼吸器外科診療に従事。その後、大阪大学大学院医学系研究科臓器制御外科にて異種移植をテーマとした研究および臨床業務に携わったのち実家の薬局運営を行う。現在は、病院の院長として地域医療の現場で医師として診療も行うとともに、薬剤師生涯教育や薬学教育にも携わっている。著書『薬局マネジメント3.0』(評言社)、『薬局が変われば地域医療が変わる』(じほう)、『がんにならないのはどっち?』(リンダパブリッシャーズ)。

hazamakenji.com/:http://www.hazamakenji.com/

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