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2017/3/11 20:20

【ムー悪魔伝説】ヨーロッパには“なまはげ”的モンスターがいる!? アメリカでは「悪魔になってしまえ!」が現実になった例も

ムーでは、CS放送の歴史・エンタメチャンネル「ヒストリーチャンネル」にて放送中の番組「ミステリーX」を紹介している。今回紹介するのは、『トゥルー・モンスターズ』シリーズの第1回目、『悪魔と地獄』。淡々とした語り口で異形の存在と人間とのかかわり合いをつまびらかにしていく進行で、静かながらも凄味や怖さが浮き彫りにされる感がある。

 

恐怖が生み出した魔の実像と変容

↑ジャージーデビル。被害の多さから懸賞金がかけられたこともある
↑ジャージーデビル。被害の多さから懸賞金がかけられたこともある

 

最初に紹介されるのは、アメリカ最古の伝説的モンスター「ジャージーデビル」だ。ジャージーデビルは、馬のような頭部と体に、コウモリのそれに似た翼。先端が3つに分かれた尾をもつ姿とされる。鹿のような角が生えているという話もある。

 

話は、1735年にさかのぼる。ニュージャージー州南部に位置するパインバレンズに住んでいたリーズ家の家長の妻マザー・リーズが13番目の子どもを身ごもった。リーズ家の人々は植民者として最も古い家系だったが、暮らし向きは決してよくなかったようだ。

 

雷雨の夜に出産を迎え、痛みに耐えかねたマザー・リーズは、思わずこう口走ってしまった。

 

「こんな子供は悪魔になってしまえ!!」

 

禍々しい願いの言葉はすぐに実現してしまった。生まれた子どもは見る見る異形のものに姿を変え、産婆に襲いかかり、そのまま森に逃げ去った。

 

このころから森で謎のモンスターの目撃例が相次ぎ、1820年代には、ナポレオンの兄でスペイン国王だったジョセフ・ボナパルトも目撃譚を日記に書き残している。1900年代初頭から目撃例がさらに増加し、1909年1月には1週間という短い期間に目撃が集中し、これを機会に多くの入植者が出ていったという記録が残されている。

 

アメリカが国家として体を整えた時代から続くモンスター伝説は、現代でも勢いが衰えない。2014年には、パインバレンズでハンティングをしていた数人の男性がジャージーデビルに遭遇し、地面に残された蹄のような形の足跡を確認している。

 

今は、同国ウエストヴァージニア州ポイントプレザントに出現したモスマンと並ぶ、UMAというニュアンスでとらえられることが多いようだが、アメリカ人、特にニュージャージー州民にとって悪魔的存在であることは間違いない。

 

神話の神と現代のモンスター

ヨーロッパでも、邪悪な存在に関する伝説は少なくない。今回のレポートでは、中央ヨーロッパの伝承に出てくる「クランプス」も取り上げられている。

↑イギリスの「クランプス」のイラスト。子供をさらっていく伝説がある
↑イギリスの「クランプス」のイラスト。子供をさらっていく伝説がある

 

クランプス伝説は、アルプス地方でキリスト教伝播以前の時代から存在していた。クリスマスの少し前に〝クランプスの夜〟という祭事の主役であるクランプスは、〝ヨーロッパ最悪の悪魔〟とされ、いうことを聞かなかったり、悪いことをしたりした子どもの家に行き、木の枝で叩く。運が悪ければ、そのまま連れ去られてしまうこともある。

 

このあたりは、日本の〝なまはげ〟に通じるところがあるといってしまったら、うがった見方だろうか。

 

クランプスは「冥府の支配者」という切り口もある。今回紹介されている中では、ギリシア神話のハデスと、北欧神話の死の女神ヘルがこれにあたる。いずれも、肉体が滅びた後、魂がたどり着く場所で裁きを下す存在だ。こちらは、仏教思想でいえば閻魔大王の役割だろう。

 

クランプスとハデス、そしてヘルはジャージーデビルと違い、人間が抱く元型的恐怖と文化背景や宗教観、そして道徳観との関係が、伝説・伝承あるいは神話を通じて示された例といえそうだ。

 

善と悪という二極性をひとつの体で示しているのが、かつて位の高い光の天使だったが、神に反旗を翻して邪悪な存在に変わってしまったルシファー=サタンだ。

 

ただ、サタンはクランプスやヘルのように象徴的な存在ではない。現代のキリスト教機構も公認する〝悪魔憑き〟と呼ばれる現象を引き起こす元凶だ。

 

2011年、インディアナ州ゲーリーで起きた事例では、アモンズ家の人々が悪魔憑き現象に襲われた。住んでいる家で黒い影が歩き回り、床に不気味な足跡が残され、いくら掃除してもポーチにハエの死骸の山ができる。こうした現象は、アメリカ特有のエキセントリックなタブロイド新聞のネタではない。2000年以来、NY大司教区でも悪魔祓いの儀式が増えている。

 

現実的な事象と神話・伝承的側面を対比しながら進められる流れから垣間見えるのは、人類が連綿と綴ってきた未知なるものとの距離感、あるいは関係性だ。

 

ジャージーデビルなんていない――クランプ伝説なんて、子どもを行儀よくさせるための手段――現代社会に悪魔なんて存在できるわけがない――など、否定するだけなら簡単である。しかし、人類共通の記憶といえる情報があることも事実なのだ。

(「ムー」2017年4月号より抜粋)

文=宇佐和通

 

「トゥルー・モンスターズ #1『悪魔と地獄』」は、3月14日(火)22:00~他、CS放送「ヒストリーチャンネル」にて放送。

関連リンク:ヒストリーチャンネル〝ミステリーX〟

 

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