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スタートアップ
2017/6/29 16:00

社内制度を自走させて“社内エンゲージメント”を強化! スタメン『TUNAG』による0から1のコミュニケーションづくりとは?

五反田スタートアップ第11回「スタメン」

 

仕事を選ぶ際、その会社の”雰囲気”は大切なポイントだ。しかし、いざ就職してみると人間関係がギスギスしていて居づらくなった――そんな経験はないだろうか。

 

また、企業側では、仲間意識を育ててもらおうと懇親会や旅行などさまざまなレクリエーションを制度化したものの、費用がかかるばかりでいまいち喜ばれない――そんな課題を抱えているかもしれない。

 

これらふたつの課題を一気に解決して組織エンゲージメントを高めるための具体的なソリューションを提供しているスタートアップ企業がある。それが名古屋に本社を、五反田に東京支社を構える「スタメン」だ。具体的にどのようなサービス展開をしているのか、なぜ東京の拠点として五反田を選んだのかなど、代表取締役社長 加藤厚史氏に詳しい話をうかがった。

 

企業が導入する様々な社内制度の運用が難しいという課題と向き合う

――:まず気になったのですが、社名「スタメン」の由来はなんですか?

 

加藤厚史氏(以下 加藤):「スターティングメンバー」と勘違いされることもあるんですけど、そうではなく、一人一人が「star」として光り輝く会社にしたい、そんな「Star Member」たちが集まる会社でありたい、という思いからです。

 

――:なるほど! では早速、御社で提供しているサービスはどのようなものか教えてください。

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↑スタメン代表取締役社長 加藤厚史氏

 

加藤:組織エンゲージメントクラウド『TUNAG(ツナグ)』を企業向けに提供しています。会社の課題をミッション(義務的な制度)とバリュー(福利厚生的な制度)を組み合わせた社内制度を並べて、その運用を支援するプラットフォームです。こう書くと少しわかりにくいですが、利用状況によって制度を見直して改善したり、別の新たな制度を設けたり、といったことが簡単にできるようになります。

 

――:それぞれの会社がいろいろな社内制度を用意していると思われるのですが、使われない理由とはなんなのでしょうか?

 

加藤:単純に魅力があまりないというのもありますし、手続きがめんどくさいというのもあるでしょうね。あと、もっと根本的に言えば、社内にどんな制度や補助があるのかということを、社員がよくわかっていないといった理由が考えられます。

 

――:そこでこのTUNAGが生まれたんですね。

 

加藤:採用には、見えない教育コストを含めて、100万、200万というお金がかかります。そのコストの5%でもいいから、社内のエンゲージメントの強化のために使いませんか。それが結果として、採用コストにも跳ね返ってきます、ということを我々は提案しています。

今まで、社内制度や福利厚生みたいなものをたくさん見てきて、一概に補助がたくさんあればいい会社というわけではなく、その会社に応じた制度設計と運用が必要で、それによる会社と従業員の間にも適切な緊張感とメリハリが大事だと思っています。

具体的には、いかに会社や一緒に働く仲間に貢献したいという想いを持ってもらえるか。それさえあれば、どんな状況でも積極的に仕事をしたいという気持ちになりますし、直接的な勤務時間は減っても生産性はむしろ上げられる。

そういうふうに、会社に対するロイヤリティーを、想いを高める方向に舵を切る働き方改革をしていきましょう、と我々はお話しています。そのためには、何度も言いますが、仕組みとして、会社の意思を社員に伝えること。そして、社員間においても、コミュニケーションを促進する必要がある。でも、昔よりも今って、中々社員同士の0から1のコミュニケーションって生まれにくくなっていると思うんですよね。

TUNAGを導入すれば、そうしたコミュニケーションを取るきっかけを得ることができます。

たとえば、「入ってから3か月以内の社員を誘ってランチに行けば1回につき1000円を補助します」という社内制度を用意するとします。これは先輩が新人を誘う良い口実になりますよね。

また、TUNAGでは「利用したらタイムラインに投稿」というのが利用要件として定めることもできるので、「誰それさんがこのメニューを使ったんだ。じゃあ次は自分が別の人を誘ってみよう」と利用が自発的に広がります。

ほかにも、「書籍を購入したら月に3冊までなら1冊につき500円を補助する」という社内制度を利用した場合、その書籍の写真がタイムラインに投稿されることで、見た人は「あの人の趣味とわたしの趣味、同じだ。ちょっと話しかけてみよう」とか「感想を聞いてみよう」などと話しかけるきっかけも生まれます。

どういう社内制度があるか、まただれが利用しているかなどがわかるため活用してもらいやすく、さらに「人」と「コト」が結びつくため話しかけるきっかけにもなるというメリットがTUNAGを導入することで得られるんです。

こうして、社員同士、また会社と社員の“絆”が育ち、強い会社づくりにも役立てていただけるのでは、と考えています。

 

――:コミュニケーション促進のために、社内SNSを取り入れているところもあると思うのですが、それとの違いはあるのでしょうか?

 

加藤:そうですね、業務系のチャットツールとは並行して使っていただくことが多いですね。そして我々は社内制度を中心にサービス設計をしているので、社内SNSとも違いますね。

あまり能動的に誰かが写真を投稿する、ことは期待していないので。どちらかというと社内のそういう交わりに冷めた人がどうだったら使うかということに照準を定めているので(笑)。僕はあまり勇気がないので、facebookも宣伝以外は投稿しないですし。

でも、TUNAGは制度を使ったら自動でタイムラインに流れ「てしまう」ので、タイムラインの情報量が多くなる。流れてくれば受動的な人でも何かしらのアクションをしやすくなるし、投稿者に対して興味を持ちやすくなる。自分も使おうかな、と考える。

おかげさまで、このサービスを開始してから2か月(注:取材時)ですが、ログイン率やプロフィール登録率が9割となっています。短期的な目標としては、1週間あたりのログイン率と1か月あたりの制度利用率を8割にくらいしていきたいと考えています。

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↑「意外と社内SNSの利用率は低い」話す加藤氏

 

社内施策こそ回してほしいPDCA

加藤:広告や外部イベントなどの施策を打つ際、たいていはABテストをやるなどしてPDCAを回しますよね。でも社内制度って、なぜかそれをしない。いったん決まったら3年はずっとそのままになっていることが多い。なんとなく行われている懇親会の補助が、実はみんな飽きてしまっていて全然盛り上がっていない、なんてこともあります。

でも、TUNAGならサッとWeb上で制御できる。制度メニューページの閲覧数やメニューの利用頻度などを見える化しているので、「利用されていないならちょっと内容を変えてみよう」とか「変えたけど使う人がいないから別の新しいものをやってみよう」とPDCAが回せるわけです。

また、人や部署、あるいは店舗による利用頻度なども見えるのでテコ入れも簡単です。人事や総務のご担当者にとっても、施策を打ちやすいツールなのではないでしょうか。

もちろん、最初の制度設計の部分では約1か月かけて専門のコンサルタントが経営方針、社内課題、アンケートなどからオリジナルメニューをしっかり作らせていただきます。

 

――:マネタイズはどうなっているのでしょうか?

 

加藤:いま、初期コンサル費用は無料で行っていて、システム利用料として100人までの規模で9万8000円を毎月いただいています。

 

――:立案から運用までされているのに、ずいぶん費用が安いように感じるのですが……。

 

加藤:いまは私たちが導入企業を訪問してアドバイスをさせていただいていることも多いのですが、成果を見える化できるTUNAGであれば、ゆくゆくは人事や総務の担当者の方が自分たちだけで運用できるようになっていくんじゃないかな、ということを考えたうえでの料金設定になっています。

 

――:市場規模はどのくらいですか?

 

加藤:あまりこういった手のかかるサービスはないと思うので(儲からなさそうですし・・・)、何とも言えないですね。ただ、私たちはこのサービスを通じて、社内制度運用をしっかりやっていくことが大切だと考えていて、それができるようになればその先に何か見えるかなと。

 

――:サービス立ち上げ時や、現在苦労されている点があれば教えていただけますか?

 

加藤:現在は「エンゲージメント」の部分を強調した路線でサービス展開していますが、ここに至るまでには紆余曲折がありました。お話の仕方ひとつでも「福利厚生」を前面に出しすぎると、決裁者から理解を得られなかったり……。サービスの開始当初はそうした悩みがありました。

いま苦労しているのは、サービス内容が複雑なことと複数の部署に説明が必要なため営業が大変、というところでしょうか。

 

――:逆に、このサービスを提供していてよかったと感じた瞬間はありますか?

 

加藤:私は平社員も役員側も経験していてどちらの気持ちもわかります。それで、タイムラインを見せてもらったときにいい具合にコミュニケーションが促進されているのを見たときなどはうれしくなりますよね。

社長や他の部署の社員と雑談する機会の少ない会社もあると思うんですが、社長がプロフィール欄に好きなマンガや映画を書いているだけで、話すきっかけになる。そうして活用してもらえているのがよかったと感じる瞬間ですね。

 

【五反田編】

五反田でスタートアップ――「ツウな感じがしませんか?」

――:ここから五反田に関係したことをお聞きしていきますね。本社は愛知県名古屋市とのことですが、五反田に東京支社をつくろうとされた理由はなんでしょうか?

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↑社員は名古屋に11人、五反田に3人の社員(取材時)。取材中もわきあいあいとした雰囲気

 

加藤:ぼくたちが重視していたのは、家賃と街の雰囲気。その両方を兼ね備えているだけでなく、スタートアップにベストな広さ感があったので、ここに決めました。

 

――:実際に来られてみて、どんな印象ですか?

 

加藤:すごくいいですね。昔の五反田は「夜の街」というイメージもあったんですけど、普通に飲食店も多く、いろいろなものがあって、おもしろい街だなぁと感じています。

また、何より移動が便利ですよね。品川も近いし。それと、「ベンチャー企業で五反田にオフィスがある」というと、なんとなく地に足がついてしっかりとしてる感じがしませんか(笑)。

 

――:なるほど(笑)。飲食店の話題が出てきましたが、よく行かれるお店はありますか?

 

加藤:ランチではとんかつ屋「あげ福」をよく利用しますね。あと夜には「日南」。うちの会社、若い人が多いわりには、あんまり焼肉などをガッツリ食べに行く、というようなことがないんですよね。

 

――:五反田のスタートアップのなかで、コラボしたいところがあれば教えていただけますか?

 

加藤:もちろんいろいろな会社さんとお話したいですね。ほとんどお話できていないので、ぜひご提案の機会をください(笑)。

 

――:最後になりますが、今後はどのように事業を展開していかれますか?

 

加藤:まず、いろいろな企業に導入していただき、社内エンゲージメントのパイオニアというポジションを取りたいですね。それまではTUNAGに集中します。その後、スタメン自体を社内で新規事業を生み出せるようなエンゲージメントの高い会社づくりをしていきたい。こういう事業をしているのに、自分たちができていないのであればシャレになりませんしね(笑)。