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2017/7/9 18:00

【The周年!】ホンダが「モンキー」と歩んだミニバイクの歴史ーー「ポストモンキー」となり得る乗り物は登場するのか

多くのバイク好きから愛されたホンダ「モンキー」が今年で50周年を迎えた。それからまもなく、突然の販売中止を発表。多くの波紋を呼んだのは記憶に新しいことだろう。そこで本稿では、前編に引き続きホンダ広報部・二輪広報課の高山正之さんを取材。モンキーの50年の歴史と今後の展望について話をうかがった。

 

ホンダ広報部・二輪広報課 高山正之さん

ホンダの広報として仕事をしながら、自身もホンダのバイクにまたがる。ときには、バイクミーティングにも顔を出すほどのバイクファンでもある。

 

モンキーの知見を取り入れたホンダのミニバイクたち

ーー1970年代前後からホンダさんでは、モンキーの兄弟モデルが続々と登場しましたね?

高山正之さん(以下:高山) 特に売れたのが、1969年に登場したダックスです。あと、ゴリラ、シャリーなども。前述のとおり、当時は市場規模が大きく、特に高校生が16歳になったらすぐ原付バイクに乗るような時代でした。そのなかで、多様性を打ち出す意味でもスーパーカブのエンジンを搭載した、派生モデルがいくつも誕生したのです。モンキーもその派生モデルのひとつになります。

 

↑モンキーの兄弟車種として登場したダックス。モンキー同様に車載機能を備えており、実はモンキーより売れたという説も
↑モンキーの兄弟車種として登場したダックス。モンキー同様に車載機能を備えており、実はモンキーより売れたという説も(写真は当時のホンダ社報より/以下:同)
↑ダックスも様々なモデルチェンジを経て、1981年で一度生産終了に。その後、1995年にリメイクモデルが登場した
↑ダックスも様々なモデルチェンジを経て、1981年で一度生産終了に。その後、1995年にリメイクモデルが登場した

 

ーーその一方で、1980年代に入るとモンキーをはじめとした個性的な原付バイクから、より気軽にまたげるロードパルやスクーターが増えていきました。

高山 そうですね。これは「原付バイクの手軽さを主婦の方たちにも親しんでいただきたい」ということを考えた開発されたものです。元をたどれば、スーパーカブも女性の方を意識して開発されたものでしたが、後にビジネスバイクとしての需要が大きくなり、どうしても仕事専用のバイクというイメージが大きくなってしまいました。そこで女性を意識して、オシャレで軽くて、もっと安くて……というコンセプトのもと発売したのがロードパルだったんです。

 

ーー当時は「ラッタッタ」の愛称で登場しましたが、いま思えばかなり斬新な開発でしたね?

高山 これは「需要創造」から生まれた商品なんです。ちょうど1970年代から1980年代にかけては、郊外に大きなスーパーマーケットが次々にできていた時代です。そうなると、スーパーまで移動するにしても自転車ではキツいだろうという話になります。

 

やがて軽自動車の時代が来るわけですが、その前に「自転車と軽自動車の間になるようなミニバイクがあると便利だろう」と考え、この商品を求める需要はまだなかったものの、「需要創造」によってロードパルが開発されたわけです。

↑直接的なモンキーのDNAを継承したわけではないが、1978年に登場してミニバイク市場を席巻した女性向けミニバイク・ロードパル
↑直接的なモンキーのDNAを継承したわけではないが、1978年に登場してミニバイク市場を席巻した女性向けミニバイク・ロードパル

 

高山 実際には、その頃から一般層の所得も上がり、小さな四輪を買える経済性になっていたこともあり、やはり軽自動車が支持されはじめました。ホンダでも軽自動車を作っていますが、これは事前に見越していたことだったのです。

 

ユーザー、販売店、メーカーの三方にとって特別な存在だったモンキー

ーーこういった市場の移り変わりのなかでも、モンキーが依然人気を維持し続けた理由はなんだったのでしょうか?

高山 モンキーに関しては、実用性などは置いておいて、「とにかく1台は手もとに置いておきたい」というお客さまのニーズが抜きん出て強かったようです。このころのモンキーは初期のモデルに比べればだいぶ進化していましたが、それでも実用性よりレジャーバイクとしての支持のほうが手厚かったからだと思います。

 

ーーしかし、そうなるとマニアにとっては根強い支持がありながら、販売台数という部分では他の商品よりも劣る……ということにはなりませんでしたか?

高山 確かにそうなんです。営利企業としては収益の上がる商品を開発し、それを優先させるのは当然です。その点では、モンキーは爆発的に販売台数を伸ばして利益に貢献したモデルかというとそうではなく、実はそういう顕著な時代はほどんど訪れなかったんです。

↑2009年モデルのモンキー。50年もの長きに渡ってマイナーチェンジを繰り返し、多くのユーザーから愛された
↑2009年モデルのモンキー。50年もの長きに渡ってマイナーチェンジを繰り返し、多くのユーザーから愛された

 

高山 しかし、ここまで長く販売し続けた理由は前述のとおり、お客さまからの厚いニーズがあったことにありました。ホンダとしても、研究開発するにあたって「これは残しておきたい」という思い入れのある商品だったんです。ですから、ホンダとしてもモンキーは例外中の例外のモデルで、売っていただく販売店さんにとっても買っていただくお客さまにとっても、特別なバイクだったのではないかと思います。

 

ーーそんなモンキーの生産終了のきっかけでもあった、ミニバイクの市場が減った原因はなんだったのでしょうか?

高山 日本国内は二輪全体が横ばい状態で、特に原付の落ち込みが激しい。これは電動アシスト自転車の浸透が大きかったと言われています。

 

電動アシスト自転車は免許も要らず、ヘルメットの着用も義務付けられていなく、これが支持されるようになって原付よりもはるかに需要が広まっています。そこに排出ガスの規制も加わり、お客様が納得される価格で提供することは不可能になりました。ということもあり、やむを得ず50年続いたモンキーも生産終了することに決めたわけです。

 

モンキーに変わる新しく楽しい乗り物は?

ーーモンキーをはじめとする、ホンダのミニバイクには夢と遊び心がありました。小さいバイクなのに機能的かつ独創的なものが多かったので、これから先の将来もこういったバイクの開発に期待したいのですが……。

高山 ありがとうございます。原付市場は縮小し、50ccのモンキーも今年で生産終了になりますが、ありがたいことにホンダが培ってきたミニバイクを依然支持してくださるお客さまがいるのも確かです。50ccのモンキーは生産終了になりますが、お客様の期待に応えるためにも、新たなレジャーバイクを提供できればと考えています。

↑今年発売のモンキー50周年モデル。初代Z50Mのデザインを現代風にアレンジしている
↑今年発売のモンキー50周年モデル。初代Z50Mのデザインを現代風にアレンジしている

 

ーー最後に、これで引退となる50周年記念モデルのモンキーですが、これも非常にかわいらしいデザインですね?

高山 歴代のモンキーにはさまざまなタイプがありましたが、やはり引退ということもあって、一番最初に登場したZ50M型を現代風に再現したデザインになっています。ハンドルも折りたため、ロゴには初期のホンダのマークを採用しているのもポイントです。楽しいミニバイクですので、ぜひ実際に触れて欲しいと思います。

↑初代Z50M同様のチェック柄シートがかわいい
↑初代Z50M同様のチェック柄シートがかわいい
↑当初のコンセプトのとおり、ハンドルを畳むことができるので、車載して移動させることも可能だ
↑当初のコンセプトのとおり、ハンドルを畳むことができるので、車載して移動させることも可能だ
↑モンキー50周年記念のエンブレム。ホンダのロゴも50年前のものが採用されている
↑モンキー50周年記念のエンブレム。ホンダのロゴも50年前のものが採用されている

 

いわば、モンキーが開拓したといっても過言ではない日本の原付市場。モンキーの引退は残念だが、この先もホンダの実用的で楽しい乗り物の登場に期待できそうだ。

↑先日発表されたばかりの500台限定のスペシャルモデル。オーダーエントリーは7月21日の午前10時から開始となる
↑先日発表されたばかりの500台限定のスペシャルモデル(43万2000円)。オーダーエントリーは7月21日の午前10時から開始予定だ。申し込みは下記の商談申込専用サイトから!

 

【URL】

ホンダ モンキー公式サイト http://www.honda.co.jp/Monkey/

モンキー・50周年スペシャル商談申込専用サイト http://www.honda.co.jp/motor-order/monkeysp/

 

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