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2017/7/1 19:00

奈良の救世主となるか? 斬新すぎる「刑務所ホテル」のポテンシャル

老朽化を理由に2017年3月末で閉鎖された旧奈良少年刑務所(奈良市)が、ホテルに生まれ変わる。ホテル運営会社の「ソラーレホテルズアンドリゾーツ」や「清水建設」など8社の企業グループがすすめるプロジェクトで、20年の開業を目指す。

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■奈良県のホテルの数が極端に少ないワケ

旧奈良少年刑務所の前身は、1908年に完成した「奈良監獄」。明治政府が造った五大監獄(千葉・金沢・奈良・諫早・鹿児島)の建物で唯一現存している。映画『わが恋は燃えぬ』にも登場する有名なスポットとして知られ、2017年2月には国の重要文化財に指定された。

 

ホテルは旧収容棟を改修した「文化財リノベーションホテル(約150室)」が中心となり、旧収容棟が望める「新設ホテル(約80室)」、無印良品ブランドの「簡易宿泊型ドミトリー(約60床)」の3つで構成される予定だ。史料館やレストランエリア、商業テナントエリアも設けられるという。

 

昨今、ホテル業界では「コンセプトルーム」が注目されている。たとえば、アニメとのコラボルーム。内装などのリニューアルで何らかの特異なコンセプトを表現し、ホテルが注目されるきっかけを作っている。「刑務所ホテル」ともなれば、コンセプトルームならぬ「コンセプトホテル」として注目度抜群だ。コンセプトを持たせるという意味で、ポテンシャルは相当高い。何より「ホンモノ」だったのだから。

 

そもそも奈良県は大阪・京都・兵庫・滋賀といった近畿の他府県と比べ、ホテルの数が極端に少ない。近鉄電車を使ったアクセスも良く、乗り換えなしで大阪や京都へ行けるため、多くの観光客から「ちょっと出かける場所」とイメージされがちなのが原因の一つだろう。

 

■訪日外国人に好まれる「体験型観光」とも親和性アリ

企業グループはこのプロジェクトについて、「歴史と文化を未来につなぐ『体験型複合施設』の創出」をうたっている。史料館やレストランエリア、商業テナントのエリアをはじめとした「宿泊・食事・ショッピング・音楽、エンターテインメント等、様々なコンテンツ」をそろえ、「『ひとつの街のような空間』として本施設を整備していく」という。

 

近年、訪日外国人はショッピングをはじめとする「モノ消費」より、旅先の体験など「コト消費」を重視する傾向にある。「刑務所ホテル」は、そんな体験型観光としてのポテンシャルが高い。また、地方の観光促進といった面でも、文化財の活用はひとつのスタイルになっていくのかもしれない。

 

体験型をテーマにした特異なコンセプトの宿泊施設は、ホテルの少ない奈良県にとって大きな話題になるだろう。刑務所の内装や設えが、どこまで残されるのかにも注目したい。

 

【著者プロフィール】

瀧澤 信秋

ホテル評論家、旅行作家。ホテル情報専門サイト「ホテラーズ」編集長。ぐるなび「ippin」ホテルグルメオフィシャルキュレーター。一般社団法人JTWO日本旅行作家協会正会員。日本を代表するホテル評論家として、利用者目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。その忌憚なきホテル評論には定評がある。フィールドは、ホテルステイからホテルグルメ、ホテルにまつわる社会問題までと幅広い。テレビやラジオ、雑誌などへの露出も数えきれず、業界専門誌への連載も手がけるなどメディアからの信頼も厚い。また、旅行作家としても旅のエッセイなど多数発表、ファンも多い。2014年は365日毎日異なるホテルへチェックインし続ける365日365ホテルを実践、372のホテルへチェックインする。『「365日365ホテル 上』(マガジンハウス)としてホテル旅の記録をホテルガイドも兼ねて上梓した。著書に『ホテルに騙されるな!プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

評論家のホテルな日々:http://hoteltakizawa.blog.jp/

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