ワールド
2017/7/5 15:30

最低賃金が月3万円! 世界で最も「労働環境が酷い国」に選ばれたコロンビアの悲惨な実情

日本に住んでいると、「この国の労働環境はどうなっているんだ!」なんて思ってしまうことがしばしば。しかし、世界にはもっと悲惨な国があります。

 

それは、カタール、アラブ首長国連邦、エジプト、フィリピン、コロンビア、カザフスタン、韓国、グアテマラ、トルコ、バングラディシュ。先日、国際労働組合総連合の調査で「世界で最も労働環境が酷い国」が発表され、この10か国が選出されたのです。

 

どの国も、人権、労働条件を交渉できる権利、ストライキの権利、権利保護のための適正な手続きを実行する組織を結成する権利などの項目を評価し、深刻な問題を抱えています。

 

筆者はこの10か国のひとつ、コロンビアに在住しています。コロンビアが選出された理由としては、企業による労働組合員への脅迫、解雇、最悪の場合、殺人などが頻発しているから。

 

これまでに、日本の労働環境とは異なるコロンビアの労働環境の過酷さを見聞きしてきました。本稿では、住んでいるからわかる、リアルなコロンビアの労働環境についてご紹介します。

 

コロンビアの最低賃金は月3万円なので生活不可能

s_workers-659885_1280

コロンビアの労働について考えた際に、真っ先に思いつく問題が賃金の安さです。2017年、コロンビアの最低賃金は月約82万ペソ(交通費含む)=約3万円と定められています。

 

月収1万円以下というのが珍しくないバングラディシュ、インド、ミャンマーなどのアジアの新興国と比較するとコロンビアの賃金は高いと言えます。

 

しかし、コロンビアは新興国の中では先進国に近いレベルまでインフラ、生活レベルが発展。またさほど安くない物価のことを考えた場合、この最低賃金は非常に安いと言わざるを得ません。

 

家賃1万5000円(安いアパートで)、食費1万円(自炊だと可能です)、1人暮らしで生活していくのに少なくとも2万5000円は必要になります。そのためコロンビアで、最低賃金の3万円で1人暮らしをするのはまず不可能です。

 

日本に比べてコロンビアの賃金格差が大きすぎる!

s_poor-1775239_1280

今回、コロンビアの労働環境を知るために、知人のコロンビア人に給与に関しての質問をしてみました。すると、日本とコロンビアの賃金事情に大きな違いが浮かび上がってきました。

 

コロンビアはその労働者の持つ教育、スキル、職業によって非常に大きな賃金格差があるということです!

 

平成28年賃金構造基本統計調査によると、日本の大卒・大学院卒の平均月収は25~29歳で約26万円、高卒だと約22万円。当然ながら日本でも、労働者の教育、スキルによって賃金に変化はあります。しかし、コロンビアほどの賃金格差はないと言えます。コロンビアでは全く状況が異なるのです。

 

最低賃金で働いている多くのコロンビア人がいる一方で、その4倍の賃金をもらっているコロンビア人もいます。

 

たとえば、100万ペソ(約3万6000円)の賃金で働いているウエイターがいる一方で、230~330万ペソ(8万4000~12万円)の賃金で働いているITエンジニアがいるのです。そして、裕福な家庭出身のコロンビア人ほど高い教育と高い賃金を得られるエンジニアなどの職種についている傾向があります。

 

もちろん日本でも労働者の賃金格差はあるかもしれませんが、コロンビアではその格差が非常に大きいと言えます。

 

コロンビアは有期雇用や日雇いの仕事が非常に多い

s_contract-1464917_1280

また、コロンビアでは4か月、10か月ごとなど期間を区切った契約社員として働いているコロンビア人が多め。

 

たとえば、筆者の知り合いの心理カウンセラーのコロンビア人の場合、小学校に派遣されることが多いそうですが、学校との間で10か月ごとに契約を結んでいるそうです。これはコロンビアでかなり一般的な雇用形態となっています。

 

この場合、福利厚生はつきますが、契約更新後に就職活動をしなければなりません。確実に就職できるかわからない不安定な面があります。また契約社員でもない日雇いのような仕事をして働いているコロンビア人も多く、不安定な雇用形態で働いている人も多いです。

 

現在、安い賃金で優秀な人材を雇用できるコロンビアに多くの海外企業が注目しています。しかし、コロンビアの労働環境は安い賃金、賃金格差、不安定な雇用など多くの労働者にとっては決していいとは言えないのが現状です。

 

日本ではいま、長時間労働を強いるブラック企業が問題になっています。ただ、労働環境は国が変われば、事情も大きく変わるもの。コロンビアにはまず、「世界で最も労働環境が酷い国」を抜け出せるような施策を期待したいですね。