SA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)を管理するNEXCOの定義では、
●PAは約15kmごと(北海道は約25km)、SAは約50kmごとに設置
●PAはトイレや自販機、売店や軽食コーナーを設置
●SAはレストラン、フードコート、ガソリンスタンド、PAに比べて規模の大きいお土産品コーナーを設置
とある。
このほか、NEXCO中日本の管内には、2012年に新東名の主要区間が開通したタイミングで、EXPASA/NEOPASA(エクスパーサ/ネオパーサ)の愛称を持つサービスエリアが誕生。文字通り、従来のPASAを超越(EX)した新しい(NEO)施設が整備されている。いずれも、これまでの“通過型サービスエリア”から“滞在型サービスエリア”へ転換を図る複合商業施設となっており、大規模なフードコートやショッピングモール並みの規模と品ぞろえを誇る買い物エリアなどを備えている。
ちなみに、SA/PAの定義においては例外もたくさんある。中にはPAとPAが50km以上離れていたり、PAなのに大規模なショッピングモールや遊園地などを併設していたり、というところもある。また、SAなのにトイレしかないという施設が新潟県にある。いったいなぜ?
■トイレしかないのにプロドライバーに根強い人気があるサービスエリア「豊栄SA」
トイレと自販機しかないサービスエリアとは、日本海東北自動車道(日東道)にある「豊栄SA」(とよさか)である。初めて訪れた人はそのシンプルさに驚くだろう。駐車台数は大型33台、小型32台、トイレは男性用6、女性用7とホントに小規模な仕様である。その理由は道路公団が民営化されたことにある。採算が取れないエリアには民間業者が出店しないからだ。要するに需要がないということ。ちなみに日東道は関越道下り線から続く高速道路だが、練馬方面から片側2車線以上となっていた区間もこの豊栄SAで終わり、この先朝日まほろばIC方面へは、片側一車線の対面通行となり制限速度も70km/hに下げられる。交通量もぐっと減ってしまうのだ。
とはいえ、この豊栄SA、実はプロドライバーには意外な人気がある。理由はそのシンプルさにあり、仮眠をしたいトラックドライバーにとっては駐車場が広く(台数も普通車より多い)、駐車場を走り回る子どもほとんどいない。騒がしい団体客がぞろぞろ降りてくるツアーバスもまず停まらない。全体的に静かなので長距離運転の疲れをいやす仮眠にはうってつけなのだ。
■PAなのに、遊園地やショッピングモール並みの施設を備えるハイウェイオアシスも
豊栄SAの例とは逆に、PAなのにゴージャスな設備を備える施設が近年は増えている。その代表施設といえば愛知県・伊勢湾岸道にある刈谷PA(刈谷ハイウェイオアシス)である。筆者も横浜から下関の実家に車で帰省する際には必ず立ち寄るPAだ。上京する際は、ここまでくるとあと3時間(約300km)で家なので「あー帰ってきた」という気持ちになる。
ハイウェイオアシスとは、SA/PAと連結し高速道路を下りることなく利用できる施設を備えたエリアで、刈谷以外にもPAからそのままスキー場のゲレンデに行ける「佐久平ハイウェイオアシス」が有名だ。この刈谷ハイウェイオアシスには刈谷市初の天然温泉や高さ60メートルの観覧車や遊園地などのレジャー施設が備わっている。一般道路側からも利用ができ、さらに公共交通機関での利用も可能。いまや年間800万人以上が訪れる一大レジャーエリアなのだ。近隣にはトヨタ自動車関連の社宅や寮も多くトヨタ関係者家族の憩いの場にもなっているとか。
■豪華でユーザーフレンドリーな日本のSA/PA。アメリカでは牢屋のような自販機にびっくり!
アメリカのフリーウェイにも休憩施設は存在する。ひと昔前に比べると、綺麗に整備されたり、景色を楽しめる場所に設置されたりと、快適性も少し考慮されてきたように思う。しかし、レジャー施設はもちろん、レストランや売店を備える休憩施設はおそらく皆無だ。というのもアメリカの場合、フリーウェイの出入り口周辺には一般のガソリンスタンドやレストラン、宿泊施設などがある(何もない砂漠のようなところもあるが)ので、日本のようにSAPAを整える必要はない。通行料が無料だから乗り降りのストレスも経済的負担もナシ。写真(上)はカリフォルニア州のフリーウェイ上にある休憩エリアだが、ここもトイレと自販機しかない。
その自販機も、ご覧の通り防犯対策のため「鉄格子」で囲まれている。人を寄せ付けない「牢屋」のような仕様はさすがアメリカだ。そもそも、どんな飲み物があるのか見えにくい。おもてなし感ゼロ(笑)。「どうしても欲しいなら仕方なく売ってやる」という姿勢だ。筆者がここで飲み物を買った際、横にいたアメリカ人も「Hard to see」(見えにくい)とブツブツ文句を言っていた。なお、このような施設ではいくつか自販機が並んでいても、そのうち一つは大体「OUT OF ORDER」(故障中)の張り紙がしてある。関西弁で喋ったり、コーヒーができるまでの間、楽し気な音楽が流れたり、故障中の張り紙など見たことがない日本のSA/PAにある自販機とは別世界なのである。
近年、外国人観光客の大幅増加で高速道路のSA/PAを利用する外国人向けツアーバスも急増。レジャー施設化したSA/PAは大変な人気で、英語や中国語の表記は普通で、外国人向けのお土産を備えるところも増えている。高速道路上でも「おもてなし」が加速しているようだ。
【著者プロフィール】
加藤久美子
山口県生まれ 学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。一般誌、女性誌、ウェブ媒体、育児雑誌などへの寄稿のほか、テレビやラジオの情報番組などにも出演多数。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。愛車は新車から19年&24万キロ超乗っているアルファスパイダー。