ライフスタイル
2016/3/27 15:00

春から朝活を始めたい人、必見! 大正時代の睡眠術&早起き術で、生活がガラリと変わる!?

買えない本の意味ない(!?)書評
~国会図書館デジタルコレクションで見つけた素晴らしき一冊~ 第4回

年度始めの4月は、新しいプロジェクトが始まったり、新人が入ってきたりと職場環境が大きく変わる時期。これをきっかけに心機一転、生活習慣を見直してみるのもいいかもしれない。最近は、普段より早く起きて、出勤前の時間を読書や勉強に当てる“朝活”が流行っている。そういえば、昔から「早起きは三文の得」というし、もしかしたら明治、大正期にも朝活マニュアルに近いものがあったのでは?

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さっそく、著作権切れの本が閲覧できる国会図書館デジタルコレクションの検索窓に、「生活」「早起き」「睡眠」といったワードを入れてみた。そこで見つけたのが、この「朝寝坊か朝起か : 生活改造」(大正12年)。今から約90年前の1冊、どんな生活改善術が記されているのか?

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「朝寝坊か朝起か : 生活改造」
加藤美侖(かとうみろん) 著

 

著者は加藤美侖(かとうみろん)。私は知らなかったが、大正時代に非常に人気のあった書き手で、特にマニュアル本・雑学本の「是丈(これだけ)は心得おくべし」シリーズは売れに売れ、どれも版を重ねたという。その内容は、食事マナーから家庭の医学、骨董、当時の最新科学知識、デモクラシーや婦人解放論まで驚くほど多岐にわたっている。ネットがなかった時代にマナーや常識をわかりやすく教えてくれる、頼れる先生という位置づけだったのだろう。いまで言うなら、すべてが得意分野に万能進化した池上 彰氏か、林 修氏といった感じか!?

 

いつの時代にも“寝てない自慢”は存在する

それでは「はしがき」から見ていこう。

「人間は動物よりも寝坊だ。……昔の人より今の人が寝坊だ。『西洋人の朝寝するのは大馬鹿ぢや』と福沢諭吉翁が口ぐせのようにいったという。元来朝起の日本が、朝寝坊まで西洋かぶれした観がある」(一部仮名遣いなどを修正)

なるほど、大正時代は朝寝坊を西洋かぶれととらえていたのか。これは新鮮! さらに興味深い一文が続く。

「一方には余計眠るのを自慢してる人があり、一方には少なく寝るのを鼻にかけている」

なんと寝てない自慢は、大正時代から存在していた! 「昨日2時間しか寝てないからつれーわー」なんてネタは、大正時代にタイムスリップしても通じるのか……。

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目次
1 文明人の朝寝坊
2 西洋の朝起問題
3 睡眠時間の問題
4 朝起奨励の実際
5 朝の時間と夜の時間
6 睡眠自由自在
7 寝つきの悪い人
8 寝方の問題
9 朝食前後

1~4章までは早寝と宵っ張り、どちらが得かを検証する内容。医学博士の意見を引いてきたり、西洋のサマータイム事情を紹介したりと、多彩なトピックスが並ぶ。

 

そして、5章でついにどちらがいいか結論が導き出される。史上最高の富豪ロックフェラー、繊維工場の下働きから鉄鋼王へ登り詰めたカーネギー、発明王のエジソンといった成功者を挙げ、彼らはみな「朝起家」だったと畳み掛ける。

「(朝起家の成功例は)西洋にも数限りなくあるが、寝坊党の方の自慢話は一向物の本にも残っていない。寝坊党のためはなはだお気の毒な次第である」

確かに寝坊続きで出世したという話はほとんど聞かないわけで、これは説得力が高い。ついで体温の変動という科学的な根拠も持ち出され、早起き党の完全勝利となるわけだ。

 

安眠のためには“就寝前の浣腸”が効果的!?

結論が定まり、残りの6~9章は朝早く起きて活動するにはどうすればいいかという、お待ちかねの実用テクニックが披露される。7章は寝つきが悪い人のための安眠法10項目。

1 就床前運動する法
2 就床前入浴する法
3 数息法(心のうちで数を数える)
4 足の指を動かす法
5 就床前浣腸する法
6 腰以下に按摩をする法
7 他人に髪または耳をいじらせる法
8 枕元で単調な音を発する法
9 睡眠薬を用いる法
10 精神的安眠法

1番、2番あたりは今でも定番だが、驚くのは5番目の「就寝前の浣腸」。「脳の血液を下腹に誘導する方法である。これをやると、排便とともに気分がよくなり安眠することができる」。ほ、本当!? それから7番の「他人に髪または耳をいじらせる」も興奮して逆効果のような。他人って誰って話もあるし……。

 

続く8章は、江戸時代の学者・貝原益軒の「養生訓」からの安眠法の紹介。ラストの9章は、朝起きたあとのマニュアル。これを守れば一日「愉快に元気よく過ごせる」という。何項目かあるのでこちらで簡単にまとめてみると……。

1 朝、床を離れるときは「サアこれが出世の門出じゃと元気よく威勢よく」離れるべし
2 誰にでも自分のほうから先に「おはよう」とか、「寒いのに元気だナー」とか声を掛けるべし
3 顔を洗う前に、まず口の中の粘液を3回吐き出して新鮮な唾液を湧き出させるべし
4 顔を洗う際は、猫のように撫で回すのではなく、清水で十分に揉むべし。こめかみは平手で2~30回くらい揉むのがよい
5 洗面後2~30分間、一心不乱に正座黙祷するべし。何事もよくわかる、妙案も出る、活動もできる

まあ、これらの効果のほどは別として、全体を通して読んでみると、科学的な知識と実際の事例、精神論的なアドバイスがバランスよく混ざっていて、読み物としてうまく構成されている。さすがは大正時代のカリスマ物知り先生といったところか。春のスタートダッシュに、大正の早起き術、試してみてはいかがでしょう?

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