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2018/8/5 18:15

命を脅かすほど危険な猛暑が続くワケ。「昔も今も暑さ変わっていない。我慢が足りない」という精神論の危うさ

毎日のように流れる熱中症のニュース。今年の夏の暑さは命の危険を感じるレベルです。これだけ暑いのに、学校にエアコンが設置されなかったり、無理して外での活動を行ったりして、たくさんの子どもたちの命が危険にさらされています。なのに、いまだに「子どもには暑さを我慢させることが必要」「昔は暑さを我慢したものだ」という言説がまかり通っているのが驚きです。目の前で命が奪われているのですから、そんな精神論はやめてほしいものです。

「昔は夏の暑さは我慢していたものだ」と主張する人には、「今は昔と違って夏が暑くなっているのだ」と反論したくなります。実際に、私が子どもの頃は関西以西でしか聞けなかった「ジャワジャワジャワ…!」というクマゼミの鳴き声が、関東地方でも当たり前のように聞こえるようになってきています。

 

データを見ても、日本の気温はじりじりと上がってきていることがわかります。気象庁の「日本の年平均気温偏差」というデータを見ると、確かに1890年以降の気温は上昇傾向にあるのです。

細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均、直線(赤):長期的な変化傾向。基準値は1981〜2010年の30年平均値(出典:気象庁HPより)

 

ちなみに、これだけ見ていると、ものすごい勢いで地球温暖化が進んでいるのではないかと思ってしまいそうですが、必ずしもそうではなく、さまざまな要因が絡みあっています。

 

■猛暑の原因は地球温暖化だけではない⁉

特に、日本の都市部で気温を上昇させる原因のひとつとなっているのが、「ヒートアイランド現象」です。これは、都市の気温が周囲よりも高くなる現象で、地球全体で起こっている気候変動とは規模が違います。

出典:気象庁HPより

 

都市部は地面がアスファルトで覆われ、高層のビルが建っています。これらによって、地表付近には熱がこもりやすくなります。また、車やエアコンの室外機などで車内・室内の熱も外に排出されるため、ますます地表付近が暑くなるのです。

 

■山越えの風も猛暑の原因に

さて、今年の7月23日には、熊谷市で国内史上最高の41.1℃を、東京都内でも観測史上初の40℃を記録しました。ここまで気温が上がったのは、フェーン現象が起こったことも原因のひとつだと考えられています。

出典:気象庁HPより

 

フェーン現象とは、湿った風が山を越えてふもとに吹き下ろすときに気温が上昇する現象のことをいいます。空気というのは、上昇するにしたがって気温が下がり、下降するにしたがって気温が上がります。そして、乾燥している場合と湿っている場合では気温が変化する度合いが違い、湿っているほうが気温の変化がゆるやかです。

 

湿った空気が山の斜面を駆け上がるとき、ゆるやかに気温が下がっていきます。そして、空気中の水蒸気は水となり、雲になって山の斜面で雨を降らせます。すると、空気中に含まれている水が地面に落ちてしまうので、次第に空気が乾燥していきます。

 

そして、空気が山を越えて下降するときに、今度は気温が上昇していきます。しかし、今度は空気は乾燥しているため、気温の上昇度合いは大きくなります。こうして、山を越える前よりも超えた後のほうが気温があがるのです。

 

フェーン現象による気温上昇が体感できるのは台風一過の日です。強い風雨がやむと、一転していきなり暑い晴天になることがよくありますが、これも台風由来の湿った風が山を越えることでフェーン現象が発生するからなのです。実際に、7月下旬に日本列島を横断した台風12号は、日本海側にフェーン現象を発生させて、7月29日に新潟県の三条や大潟で39.5℃など、39度超の気温が各地で観測されました。

 

■猛暑から命を守るために必要なこと

これだけの猛暑になると、昼間に外出することは命に係わる危険な行為です。環境省の熱中症予防情報サイトでは、人体の熱収支に与える影響の大きい湿度、日射などの周辺の熱環境、気温の3つを取り入れた「暑さ指数」という指標を確認することができます。外出を予定している場合は、このサイトをチェックして行動してほしいと思います。

 

夏休みは海やプール、魅力的なイベントなどが盛りだくさんで、つい外出したくなるのですが、暑さ指数のレベルによっては不要不急の外出は避けることをおすすめします。イベントを中止にするのは勇気がいりますが、命には代えられません。どうか暑さが落ち着いたときに仕切り直ししてください。

 

また、寝ている間もエアコンはつけっぱなしにしておきましょう。「エアコンのつけっぱなしは贅沢だから」と寝ている間にエアコンを切っていても熱中症になります。

 

特に子どもやお年寄りは、熱が体内にこもりやすいうえ、暑さを感じにくいため、熱中症のリスクが高いです。子どもは自分の症状をうまく伝えることができませんので、周りの大人が細心の注意を払って熱中症を予防し、いちはやく応急処置にあたることが求められます。先ほど紹介した環境省の熱中症予防情報サイトにも、熱中症の応急処置についてわかりやすく説明したページがあるので、読んでおくことをおすすめします。

 

【著者プロフィール】

気象予報士 今井明子

気象予報士。サイエンスライター。2001年京都大学農学部卒。科学雑誌や児童書、WEB サイトなどで子ども向けや一般向けに分かりやすく科学を解説する記事を多数執筆。得意分野は気象、生物、医学。著書に「気象の図鑑」(共著、技術評論社)、「異常気象と温暖化がわかる」(技術評論社)がある。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。

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