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2018/12/15 18:15

中古の「ガラケー」が売れている──とはいっても「ガラケー回帰」にはならない理由

中古のガラケーが売れているというニュースがあった。売れているといっても20万台とかその程度の規模だから、それほど規模の大きい話ではないけれど、売れていないAndroidのスマホはいくらでもあるし、一つのジャンルになりつつあるのは確かなのかもしれない。シンプルフォンも各キャリアが力を入れていることだし。

■システム手帳ブームにどこか似ている?

それで何となく思い出すのが、80年代に流行したシステム手帳のことだ。手帳と言えば会社から配られるものを使うのが当たり前だった時代に、とにかく、情報が一元化できる、自分なりに情報を編集して整理できる、好きなリフィルを自作すれば自分だけのデータベースが作れる、などなど、とにかく何でもできるし、何でも挟み込めるから、とても便利だったのだ。

便利だったのだけど、本当に何でも出来るものだから、やりたいことがハッキリしている人でないと、どう使って良いかが分かりにくかったのも確かだ。流行っている間は、何となく右に倣えで使ってみる人も多いのだけど、そこまでの情報管理は要らない人も多かったし、パソコンが普及し始めると、システム手帳を使いこなしていた人ほど、より便利なパソコンへと流れて、いつしかブームが過ぎ去ってしまった。

 

■実は「何でもできる」と使いづらい?

その後にやってきた手帳ブームでは、システム手帳のような何でもできる手帳ではなく、「時間管理に便利」「ライフログに便利」といったような、目的がハッキリした、何をどこに書けば良いかが分かりやすい、つまり機能を限定した手帳が流行した。情報端末というのは、そういうものなのだと思う。スマホはパソコンよりも機能は限定的だけれど、ガラケーに比べれば、自分なりに使うという領域が圧倒的に大きい。

別に、使いたい機能だけ限定的に使っても良いのだけど、そうするには価格も上がり過ぎてしまった。オーバースペックにお金を払いにくい世の中でもあるし、何となく、色々出来るのに敢えてシンプルを選ぶというのがカッコいいような気がする時代でもある。機能が限定された、自分に必要なものだけが付いているガラケーで十分だと思う人が増えるのは、そんなに珍しい話ではないのだ。

そもそも人は「何でもできる」がそんなに好きじゃない。何でもできるよと言われると、何をやっていいか分からなくなる人の方が、多分多数派だ。

 

インターネットだってSNSだって、スマホの登場で一気に広がった。パソコン時代のツイッターがどれだけ牧歌的な世界だったか覚えている人も多いだろう。パソコンではできることの一つだったインターネットに対して、スマホはゲームとインターネットができる電話として登場したわけで、それはパソコンに比べればはるかにシンプルで、何をするのかがハッキリしたツールだったのだ。

 

だからこそ、「パソコンに比べれば使えない」という意見もあったし、「携帯電話に比べて面倒くさい」という意見もあった。それでもiPhoneのインターフェイス、何より画面には常に一つの機能が表示される分かりやすさは、インターネットの使い方が知られるにつれてスマホユーザーを増やしていった。既に十分高機能化していた携帯電話とさほど価格が変わらないことも普及の手助けをした。

 

■今やデータより通話の方が安い時代

インターネットへの理解が進み、SNSが乱立し、高機能化によって高価格化するスマホが、かつてのシステム手帳、かつてのパソコンのような位置に来てしまったのは、この手のツールの宿命みたいなものだ。そして、中古のガラケーの値ごろ感とできることの少なさが楽だと感じる人が増えてくる。

 

かといって、人間、一度手にした便利は中々捨てられないから、ガラケーがスマホに取って代わるということはない。システム手帳が綴じ手帳に取って代わられたのは、その時点でシステム手帳が忘れられていたから。しかし、スマホは当たり前に使われているのだ。

 

もっとも、常に最新機種を追い求めるという時代は過ぎている。2年前くらいの機種が何の不都合もなく使えているし、スマホの場合、ガラケーと違って新機種で大幅に機能アップということもない。だから売り上げが右肩上がりなんてことは、もう起こらない。必要な人に必要な機能が行き渡ったということだろう。

 

今、ガラケーを買うユーザーにしても、もしかしたら、スマホはWi-Fiでパソコン代わりに使って、電話とメールはガラケーで月々の支払いを抑えるというだけのことかも知れない。ガラケー回帰というよりも、スマホのサブセットとしてのガラケー。実際、電話するならガラケーの方が便利なのだ。そして今やデータより通話の方が安い。だからかどうかは知らないが、実際、最近仕事でもプライベートでもメールが減って電話が増えてきたような気がする。ガラケー回帰というより、案外皆、会ったり喋ったりしたいということなのではないかと思っている。人恋しい時代。

 

【著者プロフィール】
小物王 納富廉邦

フリーライター。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方などを得意とし、「おとなのOFF」「日経トレンディ」「MONOマガジン」「夕刊フジ」「ココカラ」などの雑誌をはじめ、書籍、ネットなど、さまざまな媒体で、文具などのグッズ選びや、いまおすすめのモノについて執筆。グッズの使いこなしや新しい視点でのモノの遊び方、選び方をお伝えします。

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