ライフスタイル
2019/7/28 18:15

発疹に始まり、悪寒や吐き気、ついには痛みで指すら曲げられなくなる──31都道府県で警戒レベルを超えた「手足口病」の恐怖

「うわっ! 何だ、この腕のブツブツ? 体もだるいし、ストレスが溜まっているせいだな…。今日は早く帰って寝よう」

そう思い仕事を定時で切り上げた会社員の小林さん(仮名・42歳男性)を、翌朝には39度の発熱と悪寒が襲います。口の中には口内炎のような発疹に加え、足の裏にも発疹が現れ、歩くと激痛が……。

 

「全身どうしようもないほどかゆい! そのくせ触ると痛くて物も持てない! マジでやばい病気なのかも…」

 

インフルエンザや蕁麻疹などのキーワードで、必死に症状を調べてもどれも該当せず。困り果てた小林さんが病院を訪れると、下された診断名は「手足口病」。聞いたこともない病名でした。

 

■ついに警戒レベル! 全国で手足口病が大流行中

「手足口病」は小さなお子さんをお持ちの方なら、誰もが知っている有名な病気。三大夏風邪の1つとされ、手や足、口の中に痛みを伴う発疹が現れるウイルス性の感染症です。患者の9割は6歳以下の乳幼児で、半数は2歳以下の乳児。ただ、学童期を過ぎると大半がウイルスにさらされることによって抗体ができるため、大人の発症は少ないとされています。

 

主な感染経路は、せきやくしゃみなどのほか便に含まれるウイルス。有効なワクチンや処方薬はなく、1週間ほどで自然治癒していきます。幼稚園や保育園でも出席停止期間は定められておらず、食事ができて元気があれば登園可能。ただ、症状が治まった後も比較的長期間便などからウイルスが排泄されることがあるため、発病した人を一時的に隔離するのも有効な対策とは言えず、感染が拡大しやすいのもこの病気の特徴です。

 

だいたい1年おきに大流行する傾向にあり、今年はその流行年。感染者は2万1000人に達し、31都府県で警戒レベルを超えたと厚労省が注意を呼び掛けるほどに被害は広がっています。

 

■“子供の病気”に、なぜ大人がかかるのか?

「独身で子供と接する機会がない自分がなぜ?」と、小林さんは不思議に思ったそうですが、お子さんのいない大人であっても、公共交通機関などで子供と接触する機会はたくさんあります。たとえ子供の頃に一度手足口病を経験していても、原因となるウイルスが1種類ではないため、別のウイルスに感染して再び発症することが多く、大人であっても、いつかかってもおかしくありません。

 

しかも、手足口病は大人がかかると症状が重く出やすい病気。発疹はとにかく痛く、指を曲げることができなくなったり、歩けなくなったりする人も。また、インフルエンザにかかる前のような全身倦怠感、悪寒、関節痛、筋肉痛などの症状も多く見られます。口腔内の発疹は口内炎と似ており、「口内炎ができたなあ」と思っていたら手足口病だった、というケースも。

 

また、発疹が手足口以外に、ひじ、ひざ、お尻などにも見られることがあり、近年では、手足口に加えてお尻に出る傾向が強くなっている。これはウイルスが少しずつ変異しているためと考えられています。

 

予防法は、とにもかくにも徹底した手洗い! それでもかかってしまい痛みがひどい時は、鎮痛剤を打つことで痛みの改善は可能です。かゆみの無い発疹が出たレベルでも、悪化する前に早めの受診をおすすめします。

 

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【著者プロフィール】

医師 山本佳奈

1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)がある。

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