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2019/9/1 18:15

ネコのおかげで急にモテはじめた? 感染症が引き起こした4つのフシギ現象とは

「ネコから病気をもらうとモテ期が到来する…なんて話を聞いたんですが、それって本当ですか?」

医師の立場から「本当です」とは断言できませんが(笑)、「そういう可能性がある」との研究報告があったのは事実です。

 

その病気の名前は「トキソプラズマ感染症」。トキソプラズマとは寄生虫で、ネコが宿主ですが、ヒトにも感染する「動物由来感染症」です。そして、この原虫がヒトに寄生すると、奇妙なふるまいが起こることが明らかになりました。

 

■今や数多くの研究者が支持する“トンデモ医学”?

この「原虫による奇妙なふるまい」を世に提唱したのは、チェコのカレル大学に在籍する進化生物学者であるヤロスラフ・フレグル教授。彼は1990年に、自身がトキソプラズマに感染していることを知ります。さらにその直後から、不注意な行動が増え反応速度が遅くなって、近づいてきた車にクラクションを鳴らされても飛びのかなくなったり……と、自分の行動が変わったことに気がつきました。そんななか、教授はこれらの“異変”が「トキソプラズマのせいではないか?」と、ひらめきを受けたのです。

 

この仮説、当初は“トンデモ医学”として、まったく相手にされなかったのですが、後年には続々と関連する論文が発表され、現在では行動生物学の大御所であるスタンフォード大学のロバート・サポロスキー教授をはじめとし、数多くの研究者が同説を支持しています。

 

■トキソプラズマ感染症が起こす4つの傾向

では、トキソプラズマ感染症によって起こる「奇妙」な“症状”とは、一体どういうものなのでしょう?

 

●異性に急にモテやすくなるかもしれない

●交通事故に遭いやすくなるかもしれない

●犯罪の道に急に走るかもしれない

●自殺をしたくなるかもしれない

 

にわか信じがたい話ばかりですよね? しかし、そのメカニズムは徐々に解明されつつあります。たとえば、ネコの糞を食べることなどでトキソプラズマに感染したネズミは、ネコの尿の臭いに誘われるように徘徊するといった「ネコに食べられやすい行動」を取ります。その原因は長年不明だったのですが、2009年、スウェーデンの研究チームがトキソプラズマのDNAを解析したところ、ドーパミンの合成に関係する遺伝子が含まれていることを発見しました。体内に寄生した原虫が白血球を乗っ取って脳に侵入し、ドーパミンの分泌を促すことによって、ネズミは恐怖感や不安感が鈍ってしまうのです。

 

■奇妙な行動とドーパミンの関係

ドーパミンは「脳内麻薬」とも呼ばれ、スポーツ観戦で興奮したり、好きな音楽を聴いたり……と、ヒトが快感や感動をおぼえたとき、脳内に放出されるホルモンの一種です。

 

ドーパミンが分泌されると、食欲や性欲が湧いて“やる気”がみなぎり、意欲的な生活ができるようになります。ただし、分泌量が多すぎると、飽きっぽくなってしまい、転職や転居、恋人やクルマを頻繁に替えたり……ほか、より強い刺激やスリルを求めるようにもなります。

 

次に、これらのドーパミンの作用を、前述した“症状”に当てはめてみましょう。

 

モテやすくなるかもしれない」のは、ヒトは容姿を気にするようになって、社交的かつ世話好きにもなり、異性関係も活発になるから。加えて、男性はテストステロンという男性ホルモンの分泌も増え、この分泌量が多い男性は女性から言い寄られやすいことが知られています。

 

交通事故に遭いやすくなるかもしれない」のは、反射神経が鈍くなると同時に、リスクを恐れなくなるから。現に、感染者が交通事故に遭う確率は通常者の2.6倍とのデータもあります。

 

犯罪の道に走るかもしれない」のは、“やる気”が空回りするほどに肥大してしまい、それが独断的・反社会的な性格へとつながるケースもあるから。エスカレートすれば、猜疑心や嫉妬心が強まって、犯罪や規則違反、危険行為などにも良心の呵責を感じなくなるとも聞きます。

 

自殺したくなるかもしれない」理由は、まだ完全に証明されてはいませんが、2012年の『精神臨床医学誌』では、ミシガン大学のリーナ・ブランディン准教授らが「トキソプラズマ感染者の自殺率は非感染者の7倍になる」との疫学調査結果を発表しています。

 

ちなみに、「寄生虫によるマインドコントロール」は、他の動物や昆虫でも見られる現象です。宿主をコントロールすることで、寄生虫自身の子孫を繁栄させるといったシステムなのかもしれません。

 

■妊婦さんは「ガーデニング」と「生肉」にご注意を!

トキソプラズマ感染は、健康な成人が感染しても症状が出てこないか、出てきたとしても軽い風邪程度でおさまります。が、妊婦さんが感染すると、流産や胎児の異常が起こる可能性もあるため、注意が必要です。

 

トキソプラズマは、ネコ科動物以外でも200種類以上の動物に寄生することがわかっています。米国疾病予防センター(CDC)では「庭の土などでネコの糞尿に触れないよう用心すべき」、また「レアステーキや生ハムなど十分に加熱していない肉は避けたほうがいい」……と注意を呼びかけています。

 

なお、室内で飼って、ネコ砂とキャットフードで育てられているネコの場合、トキソプラズマに感染している心配はありません。

 

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【著者プロフィール】

今村甲彦

医師。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会専門医。久留米大学病院高度救命救急センターを経て、現在は地域の中核病院で内科診療および内視鏡検査に励む。「患者さんの声に常に耳を傾ける」ことをモットーに、消化器・肝臓領域から風邪、高血圧等の一般内科領域まで幅広く診療を行っている。

 

胃腸の先生、ブログやってるってよ:http://icyou.blog.jp/

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