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2016/6/26 15:00

安いだけが理由じゃない!「均一価格」の店に集まる消費者の心理

先日の伊勢志摩サミット直後、かねてからの予想どおり「消費税増税延期」が決まりました。しかし、まだ安心はできません。消費税が2年半の間上がらなくなったとはいえ、消費者が財布の紐を緩めたわけではないからです。6月初に日経MJで実施された緊急アンケートによると、「消費税増税延期で今後の支出は変化するか」の問いに対して、増えると答えた人はわずか8.4%。変わらないが81.7%、さらに減ると答えた人が9.9%でした。(アンケート母数:524人)。変わらないと答えた人のうち、58%が「遅かれ早かれ増税はある」との理由でした。

 

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こんなニュースを聞くと、「ますます売上が厳しくなりそうだ」と考えがちです。しかし、デフレ時代にはデフレ時代なりの戦い方があります。そのうちの一つがご紹介する「価格の均一化」です。

 

■「価格均一」で成功している事例

価格を均一にすることで成功している事例はたくさんあります。まず思い浮かぶのは100円ショップでしょう。例えば、業界第二位のセリア。1200店舗を超える既存店の売上は現在前年比110%前後で推移しており、今期はさらに100店舗の追加出店を計画。非常に好調です。100円ショップだけではありません。「焼き鳥チェーン」の鳥貴族。全メニュー、食事もドリンクもすべて280円均一をコンセプトに、縮小し続ける居酒屋市場の中で、毎年8%以上の成長を続けています。さらに100円均一のパン屋さん(100円パンのヤキタテイ)なるものまであります。キャッチフレーズのとおり、全品100円のベーカリー。鳥貴族の“パン”バージョンといった感じですね。創業は2005年。大阪北部を中心に12店舗を展開。毎年確実に店舗を広げ、マスメディアでの注目を浴び始めています。

 

なぜ、価格の均一が消費者に支持されるのか?理由は明快です。「わかりやすい」からです。どのくらいお金がかかるのかが、すぐにわかる。これがお客さんに「安心感」を与えます。100円ショップなら、5個買えば500円。もちろん、ここに消費税が付きますから正確には540円。それでも簡単に計算することができます。さきほどの鳥貴族も同じ。一つのメニューが280円。ということは、10個頼めば、2800円。2人で行って、5つずつ頼むのなら、1人1500円で済む。2つ追加しても2000円ちょっと。じゃあ、行こうかとなるわけです。

 

「お金を使いたくない」のではなく、「お金を使いすぎたくない」。これが消費者の本音です。まったく使わないわけにはいかないことは当然知っています。だからこそ、「できるだけ使いたくない」わけです。当然、いくらになってしまうかよくわからないようなところへは出かけたくない。こうした心理状態をつかんで、「いくらになるかすぐにわかりますよ。あなたの予算内に収まりますよ」と価格を通じてメッセージを送るのがこの「価格均一」の強さなのです。

 

■値段を下げずに「利益をコントロール」するのが成功の秘訣

デフレでなかなか買ってくれない。こうした状況で考えがちなのが「価格を下げること」。一時的に購買を促すために行うのであれば何の問題もありませんが、常態化すると危険です。なぜなら、そもそも「その価格で売る前提になっていない」からです。さきほどご紹介した100円ショップや鳥貴族は、必ずその価格で利益が上がる仕組みを構築しているからです。こうしたバックグラウンドなしに、闇雲に価格を下げればただ利益を落とすだけです。そして、売れば売るほど赤字を拡大させてしまいます。

 

一方で価格の均一化は、価格を下げることとは違います。一見薄利多売のようにも見えますが、実は意外と高利益だったりするのです。例えば100円ショップで扱われている商品の中には、原価がおみくじと同じ5円の商品やそれ以下のものが存在しています。仮に原価が5円だった場合。利益は95円ですね。つまり、利益率は95%。驚異的な儲けです。こんな利益率の商品そうそうありません。もちろん、すべての商品がこんな原価率とはいきません。そこで必要になるのが、「レベニュー・マネジメント」です。

 

レベニューとは「利益」のことです。直訳すれば「利益をマネジメントすること」。アマゾンで一度でも購入された経験のある方なら見たことがあると思います。「よく一緒に購入されている商品」という表示です。その合計額とポイント、そしてすぐ下に「カートに入れる」ボタンがありますよね。これは、マーケティング用語でいう「アップセル」や「クロスセル」と似ていますが、その裏側で必ず「利益率が低いもの」と「利益率が高いもの」が組み合わされているのです。これがレベニュー・マネジメントです。

 

もともとは、競争が激しく需要変動の激しい航空会社やホテル業界で始まった販売管理手法で、航空券や宿泊料金に段階的な早期割引購入価格を設定することや、閑散期と繁忙期の料金を別設定するといった手法です。こうした手法を用いることで、一見お得に見えて実はしっかりと利益を確保する仕組みが出来上がります。

 

■松竹梅なら竹を選ぶ!? 消費者心理を利用した「3プライス方式」も

1つの値段にする以外にも、スーツチェーンやメガネチェーンで運用されている「3プライス方式」があります。こちらも、価格均一と同様、とてもわかりやすいので、オススメです。

 

この方法は、意外と古くから存在します。気づいた方もいると思います。最近はほとんど見ませんが、いわゆる「松竹梅」です。3つにすると真ん中を選びたくなる人間の習性を活かしています。例えば、1000円、3000円、7000円の商品があった場合。あなたならどれを選びますか?きっと3000円ではないでしょうか?なぜ、真ん中を選ぶのか。高いものを選ぶと、「お金がもったいない」と思い、一番安いものを選ぶと「壊れたり、まずかったりしたらどうしよう」と思う。結果、真ん中を選ぶのです。この3プライス方式でもさきほどのレベニュー・マネジメントのアレンジが効いています。ほぼ例外なく真ん中の商品の利益率が一番高く設定されているからです。

 

安易にディスカウントを選ぶのではなく、戦略的な「価格」を設定する。そして、見かけとは別にその裏側できちんと利益をコントロールする。デフレは当分続きそうですが、工夫次第でむしろ儲かる可能性を秘めています。ぜひ、御社のビジネスでも戦略的価格の導入を検討してみてください。今まで以上に客足が伸び、さらに儲かるかもしれません。

 

【著者プロフィール】

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酒井威津善

さかい・いつよし。1968年大阪生まれ。フィナンシャル・ノート代表。財務コンサルタント、ビジネスモデルアナリスト。

大学卒業後、会計事務所での監査業務を経て、TIS株式会社(旧東洋情報システム 現ITホールディングス)へ。10年間システム構築に従事したのち、創業3年目の不動産証券化ベンチャー、従業員50名の住宅メーカ、人材紹介業、システム開発業、遊技機製造業などで計12年間「金庫番」を歴任。その現場経験を元に、様々な業界の財務モデルに基づいた実践型ビジネスモデル構築ツール「BM Schema(ビジネスモデルスキーマ)」を完成。この構築ツールによって、単なる財務コンサルティングではなく、ビジネスモデルの再構築までを視野に入れたサポートを展開。

起業家の創業1年目から年商1,200万円、所員3名の税理士法人の売上高を前年比134%、年商1億2千万円の酒販店を3ヶ月で売上高を前年比157.3%まで引き上げるなどに成功。起業家、個人事業主から従業員数50名以下の中小企業まで幅広く、財務コンサルティングからビジネスモデル構築の提案、サポートまでを行っている。

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