ライフスタイル
2016/7/3 15:00

【今週の大人センテンス】街に現われたウルトラマンに対する円谷プロの粋なコメント

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

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第13回 称賛されるのは世の中の窮屈さの裏返し!?

 

「一般の方が集まるような場所や駅などでのコスプレはお控えいただき、個人の趣味の範囲でお楽しみいただきたい。公衆の中では本物と間違えて怪獣や宇宙人が攻撃してくるかもしれませんので。」by円谷プロ

 

【センテンスの生い立ち】
2016年6月17日午後2時過ぎ、ツイッター上に「目黒駅にウルトラマンがいた」という投稿が複数アップされた。改札を通って電車に乗ろうとしたところ数人の駅員に囲まれ、何か会話を交わした後、駅を出てタクシーに乗り込んだとか。6月21日朝、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」がこのニュースを取り上げ、その際に円谷プロに見解を尋ねたところ、老舗の貫録を感じさせる心の広いコメントが返ってきた。

 

【3つの大人ポイント】
・著作権的には微妙な「ニセモノ」を責める気はカケラもない
・ユーモアでやわらかく包みつつ、きっちり苦言も呈している
・寛大さによって、会社やキャラのイメージアップに成功した

 

コスチュームのデザインは、厳密には「ウルトラマン」ではなく、『帰ってきたウルトラマン』に出てきた「ウルトラマンジャック」だったらしいですが、ま、そこはどうでもいいですね。ツイッターへのいろんな人の投稿によると、とても暑かった6月17日午後、東京・目黒駅にややメタボな体型でビジネスバックをたすき掛けにしたウルトラマンが、いきなりさっそうと登場。空を飛んできたわけではなく、歩いて現われたようです。

 

そのまま電車に乗ろうとしたウルトラマンですが、ホームで数人の駅員さんに囲まれてしまいます。あとからわかった話によると、駅員さんは防犯上の理由から“マスク”を外してほしいと頼んでいたとか。しかし、それはできなかったのかあえてしなかったのか、ウルトラマンは電車に乗るのをあきらめて、タクシーで去っていきました。

 

詳しい顛末やちょっとメタボなウルトラマンの写真は、ここにまとめられています。
周囲は騒然!? 『ウルトラマン』が目黒駅に出没した!(NAVERまとめ)

 

ツイッター上での盛り上がりを受けて、21日朝のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」が、今回の一部始終や、2年前にも埼京線などでウルトラセブンが目撃されたことを紹介。ウルトラマンを制作した円谷プロに、相次ぐ出没をどう思っているのかを尋ねます。円谷プロにしてみたら、いわば勝手に「ニセモノ」を作った不届き者が面倒な騒ぎを起こしたわけですが、冒頭で紹介したように、返ってきたコメントはじつに寛大なものでした。

 

すると今度は、ふたたびツイッターを中心としたネット上で、「円谷プロのコメントが素敵」「円谷プロ流石です!」「円谷プロの回答夢があっていいな」など、円谷プロの大人な対応への称賛が巻き起こります。「公衆の中では本物と間違えて怪獣や宇宙人が攻撃してくるかもしれませんので」と物語の世界観を踏まえてクスリとさせながらも、駅などでのコスプレは控えてほしいときっちり苦言を呈するのは、じつに華麗な合わせ技と言えるでしょう。

 

ただ、こうした軽やかでユーモラスなコメントが大きな称賛を浴びること自体は、けっしていいことではないかも。日本はいつの間にか、他人のアラを見つけると寄ってたかって大喜びで責め立てるのが「当たり前」とされる国になってしまいました。他人の揚げ足を取ったり足を引っ張ったりすることに熱心な人もたくさんいます。あらためて考えてみたら、けっこう情けない状況ではないでしょうか。おかげで会社や役所のコメントは、無難で安全でどこからも「つつかれないこと」がもっとも重視されるようになりました。

 

いや、会社や役所だけではありません。私たちの日常会話も、無意識のうちに「つつかれないこと」を重視して、当たり障りのないことしか言えなくなってはいる気がします。もしかしたらそういう警戒心が発達するのは、自分自身が心の奥底に「スキあらばつついてやろう」という卑しい気持ちを持っていることの裏返しかもしれません。それはさすがに杞憂かもしれないし、自分では「そんなことはない」と言い張りたいところですけど、謙虚に危険性を意識してくれぐれも気を付けたいものです。

 

そんな窮屈な世の中だからこそ、円谷プロのある意味大胆なコメントが一服の清涼剤になってくれました。まさか、「子どもが怪獣や宇宙人が本当にいると思って脅えたらどうしてくれるんだ!」と文句を言っている人はいませんよね。仮にいたとしても、世知辛い状況の中で生きている私たちに必要なのは、「そういうアホなクレームは笑い飛ばして相手にしない勇気」だと思います。さすが光の国からぼくらのために来てくれたウルトラマン、安直に「正義の味方」を気取る輩が蔓延する風潮に、スぺシューム光線を浴びせてくれました。

 

余談というか蛇足というか、知らなくてもいいことだった気もしますが、その後、日本テレビの「スッキリ!!」が、目黒駅に現われたウルトラマンの「中の人」を探し出しました。中国・上海出身の23歳の男性で、ウルトラマンに憧れたのをきっかけに来日し、今は飲食店を経営しているそうです。目やカラータイマーが光るなど極めてよくできたコスチュームは自作で、制作費用は40万円。「今年はウルトラマン放送開始50周年なので、それを記念してコスチュームを作り、勝手にPRした」とのこと。その心意気やアッパレ!

 

そう、今年はウルトラマン放送開始からちょうど50年目の節目の年です。お祝いのイベントや企画が盛りだくさん。最初にウルトラマンがお茶の間に登場したことを記念した「ウルトラマンの日」(7月10日)とその前日には、50年前にも番組PRイベントが行なわれた聖地・杉並公会堂で、豪華メンバーが出演するイベント「ウルトラマンの日 in 杉並公会堂」が開催されるし、恒例の「ウルトラマンフェスティバル」(池袋・サンシャインシティ、7月22日~)もいつも以上の充実っぷりです。詳しくは、円谷プロのサイトで。

 

自分が幼いころから50年にもわたってヒーローであり続けてくれているウルトラマンと、ナイスなコメントでハッとさせてくれた円谷プロへの感謝の気持ちを込めて、そしてさぞ暑かっただろうにウルトラマン姿で目黒駅に現われた中国人青年の嬉しい気持ちに応えるべく、ささやかながら宣伝のお手伝いをさせていただきました。ジュワ!

 

【今週の大人の教訓】

本当の意味での「正義の味方」になるのは、そう簡単ではない

 

【著者プロフィール】

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石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は、さまざまなメディアに取り上げられて、世に大人ブームを巻き起こした。近著に、古今東西の賢人がさまざまな悩みに答える『日本人の人生相談』など。故郷の名物である伊勢うどんを熱烈に応援し、2013年に世界初の「伊勢うどん大使」(三重県製麺協同組合&伊勢市麺類飲食業組合公認)に就任した。 FBページ「伊勢うどん友の会」:http://www.facebook.com/iseudontomonokai

大人力ブログ:http://blog.otonaryoku.jp/

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