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2020/9/29 19:00

“仕事と労働”は似て非なるもの! やましたひでこが説く、前向きに働くための断捨離的思考

リモートワークや時差出勤など、これまでの当たり前が変わり、働き方に変化を迎えている2020年。「このままの働き方でいいのかな?」と悩み始めた人も多いのではないでしょうか?

 

この連載では、「断捨離」の“生みの親”であるやましたひでこさんの生き方のなかで導き出された、断捨離と「人間関係」や「お金」との関係について、解説していただいてきました。今回のテーマは「仕事」。仕事と断捨離の関係を考えてみると「効率化のために〇〇をする」とか「〇〇している人は仕事ができる」と、ついノウハウに頼ってしまいがちですが、やましたさんによるとそれはNG! それ以前に、知っておくべき心得があるのだとか。心地よく、また自分らしく仕事するためのポイントを教えていただきます。

 

第6回 楽しく快適に仕事するための断捨離的考え方
———仕事の本質を理解する———

———今回のテーマは「仕事」です。“仕事における断捨離”を想像してみると、机の上から物をきれいさっぱりなくすとか、時間内にテキパキと仕事を終わらせるとか、どういったノウハウがあるのだろう? なんて思ってしまうのですが……。仕事をする上で大切な、断捨離の考え方を教えていただけますか?

 

「たしかに仕事と断捨離というと、どうしても“効率化”がクローズアップされてしまいますよね。もちろん、結果的に断捨離することで効率化はされるのですが、実は最優先ではありません。効率化が最優先になってしまうと、仕事の醍醐味や成長が失われていくような感じをおぼえます。仕事について悩んでいるのなら、まずは、“何のために仕事をするのか?”をよく考えてみないといけないのではないでしょうか」

 

———そうですね。ただ、働くことによって対価を得ている私たちにとって、仕事における断捨離はしたいけど、お金のことを考えるとすぐには難しい、また人間関係がつらいけど、年収や今の環境を考えると転職できないなど、断捨離はしたいけれど二の足を踏む人も多いかもしれません。

 

「『仕事=労働』、つまり、仕事は自分のエネルギーと時間を引き換えに、お金をもらうことだと思っていませんか? どんな仕事でも『買っていただきありがとうございます』『こちらこそ、売ってくれてありがとうございます』という、目の前にいるお客さまと“感謝の交換”が気持ちよくできるようになると、仕事が楽しくなってくるのではないでしょうか。

これは家事もそう。よく、“家事労働”という言い方をしますが、本来は“家事仕事”なんですよね。というのも、仕事は“事”に“仕”えると書きます。何に仕えるか意識するだけでも、労働と仕事は違うと思えてきませんか?」

 

———今まで「仕事=労働』という価値観でとらえていたと、ハッとしました。でも、どう向き合い方を変えたらいいのか、わかりません。

 

「これまでそんなことを教えてくれる人がいなかったのだから、わからなくて当然です。『これは労働じゃない、仕事なんだ』と、気がつくところからスタートですよね。労働じゃないと気がついたら、自分がやりたいとか楽しいと感じられる“仕事の自分軸”を探します。これはそうすぐに見つかるものではありません。私だって何十年もかけて経験を重ね、社会に揉まれながら『今の私の軸はこれだな』と、日々変化しながら感じているものですから」

 

———自分軸が見つかったらOKというわけでもなく、断捨離には終わりがないから、日々トライアンドエラーをしながら変化していくのですね。

 

「その通りです。ここまでできたから天職になった! ということではありません。厳しい道のりですけれど、考えてみると、勉強しながらお金がもらえるってすごいことだと思いませんか? 労働ではなく、今やっていることを“仕事”として捉えられるようになってくると、どんな人や環境であっても自分の経験値として積み上げられて、自分軸を築き上げる糧になっていくわけですから」

 

捨てられない書類は、「後回し」の証拠品

———少し話はそれますが、最近は自宅で仕事をする機会が増えたという人も多く、やっぱり職場じゃないと集中できないとか、どうやって仕事環境を整えたらいいのかわからないとか、なかなか落ち着いて仕事ができない人も増えています。断捨離で環境を整える方法はないのでしょうか?

 

「それは簡単。自分のいる仕事空間を美しくするだけです」

 

———それは、机の上がきれいな状態ということでしょうか?

 

「物だけでなく、机の上はもちろん戸棚やPCの中まで、目に入る景色すべて、自分の『要・適・快』に合わせて心地いい状態になっている空間です。PCのデスクトップにファイルがばらばらとまとまりなくあったら、美しくないですよね? 仕事で自分の力を100%発揮させたいのに、どうでもいいものが机の上やPCの中にあったら、力を発揮できるわけないですよね」

※『要・適・快』は、「これは私にとって、必要か(要)・ふさわしいか(適)・心地よいか(快)?」と自分に問いながら必要なものを見定めていくこと。『不要・不適・不快』は、今の自分にとって「あれば便利だけどなくても困らない(不要)モノ・今の自分には合わない(不適)モノ・長く使っているけれど違和感を感じる(不快)モノ」を手放していくこと。

 

———耳が痛いです……。とはいえ、書類なんかもなかなか捨てられなくて。

 

「よく『書類を捨てるコツを教えてください』って聞かれるんですけど、そんなコツはありません」

 

———え! ないんですか!?

 

「できない、捨てられない、と思っている時点でアウトです。『この書類、捨てるに捨てられないんだよなー』って悩んでいる時点で、あなたは仕事としっかり向かい合えていないということだと思います。その書類は、決断を後回しにして保留にしているだけの物なんです。その都度、判断を下していれば書類が溜まるはずがないし、できる・できないじゃなくて、やるか・やらないかだけのこと。『やる』を重ねていく事で、判断する時間もスピードアップし、結果、効率的に仕事ができるようになるわけです」

 

———たしかに、決めてやるのみ、ですよね。反省します。そういえば、やましたさんは普段から名刺を持ち歩かないとか。いつから「名刺は使わない」と思うようになったのですか?

 

「私も最初は、お渡ししていましたよ。でも、その場でしか機能しないものだと気がついたんです。『こういう漢字のお名前なんですね』『遠くからいらっしゃったんですね』って、確認するためのものだったんです。けっして、コレクションするものではないですよね。今の時代、お名前さえわかっていれば気軽につながれるので、名刺を作ることも渡すこともやめました」

 

———なるほど! 私は、知らず知らずのうちにコレクションしてしまっていました。

 

「あとから使う場面があるのなら、どうぞ取っておいてください。目的もなく、その場に置いているだけであれば、空間を無駄にしているだけですよ」

仕事でもっとも頭を悩ませるのは、実は人間関係ではないでしょうか? とくにいちサラリーマンは上司や部下を選べません。仕事における人間関係は、断捨離できないものでしょうか……? 引き続き、やましたひでこさんに伺いました。

 

上司や部下、同僚に期待しすぎない

———先ほどから、耳が痛いことばかりなのですが……、いちサラリーマンは上司や部下を選べません。仕事における人間関係は、断捨離できないものでしょうか?

 

「仕事環境で何がつらいかって、やっぱり人間関係ですよね。どうしてつらいか、考えてみたことはありますか?」

 

———性格の不一致など、さまざまな原因が重なってつらくなる、という感じでしょうか?

 

「たとえば、性格的に合わない上司だったとしても、あなたをちゃんと評価してくれる上司と、いい人なんだけど査定評価ではいつも曖昧にされてしまう上司とだと、どちらの方が人間関係で悩みが発生しますか? きっと曖昧にされてしまう上司のほうが悩みますよね。でもその評価基準って実は、自分の期待でしかないわけです」

 

———「なんでこんなに頑張っているのに、評価してくれないんだ!」って上司に期待をかけ過ぎちゃっているということですか。

 

「言わば、“くれない族”ですね。これもしてくれない、あれもしてくれない、って。『あぁ、私はあの上司に勝手に期待して、自分の期待通りに動いてくれないから不満なんだ』って、自分がくれない族になっていたことに気づくだけでもいいんです。上司の中には、どう頑張っても好きになれない人もいるでしょう。それは『嫌』のまま、放っておけばいいんです。好きになれとは言いません」

 

———ちなみに、今の環境が嫌だから転職したい! という人もいると思うのですが、“くれない族”のままだと転職先でも同じような思いをしてしまう可能性はありますよね。

 

「そうですね。2016年に出版した『感度の高い仕事人は断捨離じょうず。』という本でも書いたのですが、例に挙げたことで言えば、評価してくれない上司には今以上の期待はしない、けれど、『この世の中の貢献に繋がる仕事をする』と決められれば、『今の会社のままでもできるかも』とか『貢献度の高い会社に転職しよう』とか、次なる目標が立てられるようになりますよ」

 

↑『感度の高い仕事人は断捨離じょうず。』(ぴあ)仕事ができる人とはどんな人なのか? 「断捨離思考」を実践している人はなぜかみんな成功しているという。片付けだけじゃない仕事における断捨離を、やましたさんの経験や実例と共に紹介されている。男女関係なく、仕事を頑張りたいすべての人に読んでもらいたい一冊

 

———これまでのお話を伺っていて気がついたんですが、断捨離って「仕事場だけきれいだったらいい」とか「住居だけ整っていればいい」という問題ではなく、ひとつ断捨離できるようになってくると、すべてがつながるというか、表裏一体のように感じますね。きっと自宅の断捨離が上手な人は、お金も仕事も人間関係の断捨離も上手にできるような気がしてきました。

 

「よく、仕事は仕事、プライベートはプライベートと分けている人もいますが、表と裏でキッチリわけるなんて、本来なら難しいはずです。自分はひとりしかいないわけですから。たとえば、バリバリのキャリアウーマンで仕事はできるのに汚部屋に住んでますなんて、ずいぶんギャップがあると思いませんか? キャリアを築くために、朝活や人脈作りに精を出すなら、その前にまず部屋を片付けようか! ってアドバイスしたくなりますね」

 

———汚い部屋に住んでいる私と、キラキラバリバリ働く私のふたりがいるってことですね。常に違和感を感じてしまいそうです。

 

「きっと表のキラキラしている自分でいる方が好きだから、現実の汚い部屋に住んでいる私をバリバリ働いている私で取り繕うとして、ギャップが生まれてしまう。表の自分を強くすればなんとかなる! と、知識やノウハウをどんどん積み重ねて“足し算”を頑張ってしまうのだけど、汚い部屋をキレイにすればいいだけってことに気が付かないんですよね。いらないものを捨てていく“引き算”ができるようになると、自分と向かい合うこともできるし、自分の軸もはっきりする。人生が変わってきますよ」

 

———本当にそうですね。人間関係も足し算を頑張っちゃいますが、冷静に考えてみると逆なんですね。

 

「増やせばいい、たくさんいればいいってことでもないですから。人間関係も足し算では考えません。信頼できる人、敬意を払える人とのネットワークがあれば十分です」

 

———今回は、「仕事」と「労働」の違いから、人間関係の話まで、断捨離を通じて自分の仕事を振り返ることができました。ありがとうございました!

 

第6回の断捨離に関するキーワード

・「仕事」と「労働」は違う
・書類は、“後回し”にした証拠品
・仕事環境も自宅も、“要適快”なうっとり空間を目指す
・人間関係は引き算で考える

 

やましたひでこさんの「断捨離」に関する過去のコラムはこちら
https://at-living.press/tag/yamashitahideko-danshari/

【プロフィール】

クラターコンサルタント / やましたひでこ

一般財団法人「断捨離®︎」代表。学生時代に出逢ったヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」に着想を得た「断捨離」を日常の「片づけ」に落とし込み応用提唱。誰もが実践可能な「自己探訪メソッド」を構築。断捨離は人生を有機的に機能させる「行動哲学」と位置づけ、空間を新陳代謝させながら新たな思考と行動を促すその提案は、年齢、性別、職業を問わず圧倒的な支持を得ている。『断捨離』をはじめとするシリーズ書籍は、国内外累計500万部を超えるミリオンセラー。アジア各国、ヨーロッパ各国において20言語以上に翻訳されている。

・BS朝日「ウチ、断捨離しました!」<毎週月曜夜8時>レギュラー出演中
https://www.bs-asahi.co.jp/danshari/

・やましたひでこ公式HP『断捨離』
日々是ごきげん 今からここからスタート http://www.yamashitahideko.com/
・やましたひでこオフィシャルブログ『断捨離』
断捨離で日々是ごきげんに生きる知恵 http://ameblo.jp/danshariblog/
・断捨離オフィシャルfacebookページ http://www.facebook.com/dansharist

※「断捨離」はやましたひでこ個人の登録商標であり、無断商業利用はできません。
※取材はオンラインで行いました。写真は2020年1月中旬に撮影したものです。



提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」