ライフスタイル
2016/8/6 14:00

観覧車、江戸の街並み…! 高速道路のSA・PAがエンタメ化する理由

夏休みは年末年始とともに、長距離ドライブに行く機会が増えるシーズンだ。海や山、そして里帰りと、さまざまな目的で遠くを目指す人が多くなる。当然ながら、サービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)のお世話になることが多くなるだろう。ところでそのSA・PAが最近、バージョンアップしていることにお気付きだろうか。10年前に組織替えを行ったことが効果を表しつつあるようだ。

 

日本のSA・PAの多くは長い間、財団法人道路施設協会という、いかにも堅そうな組織が管理してきた。しかし道路を管理していた日本道路公団ともども、事業を独占していたことが問題となった。そこで20世紀末に、道路サービス機構とハイウェイ交流センターという2つの財団法人に分割された後、2006年に道路管理部門ともども民営化された。

 

その結果生まれたのが、ネクセリア東日本、中日本エクシス、西日本高速道路サービス・ホールディングス、JBハイウェイサービス、首都高速道路サービスの5社だ。ちなみにJBハイウェイサービスは本州四国連絡高速道路のSA・PAの管理を行っており、首都高速道路サービスはSAがないのでPAのみの管轄となる。これを境に、いくつかのSA・PAは大胆な変貌を遂げた。

↑東北自動車道「羽生PA(上り線)」には江戸の街並みを再現した「鬼平江戸処」が。さまざまな食事処が入っている
↑東北自動車道「羽生PA(上り線)」には江戸の街並みを再現した「鬼平江戸処」が。さまざまな食事処が入っている

 

ネクセリア東日本管内では、東北自動車道の羽生PA上り線が、江戸の街並みを再現した「鬼平江戸処」に変身。中日本エクシスでは商業施設を組み込んだEXPASA(エクスパーサ)を、東名高速道路海老名SA上り線や東名阪自動車道御在所SA上下線などにオープンしている。1963年に設置された日本初のSA、西日本高速道路サービス管内の名神高速道路大津SA下り線も、パヴァリエ(PA+VARIE)びわ湖大津としてリニューアルした。

 

ドッグランを用意するSA、コンビニエンスストアやファストフード店を入れたPAも増えてきたし、公園を用意してハイウェイオアシスと名乗る施設、高速道路利用者だけでなく、周辺住民が外から利用できる場所も増えてきた。

 

SAとPAの関係は、規模の大小だけではなく、距離によっても決められている。SAが50〜100kmごとで、PAはそれよりもひんぱんに設置している。だからSA並みの規模を持つPAもある。

↑伊勢湾岸自動車道「刈谷ハイウェイオアシス」には観覧車やメリーゴーランドまで設けられている。集客数はなんと日本3位
↑伊勢湾岸自動車道「刈谷ハイウェイオアシス」には観覧車やメリーゴーランドまで設けられている。集客数はなんと日本3位

 

伊勢湾岸自動車道の刈谷PA(刈谷ハイウェイオアシス)はその代表で、観覧車や温泉施設まで用意されており、東京ディズニーリゾート、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンに次ぐ第3位の集客数を誇るアミューズメントパークになっているほどだ。

 

では海外ではどうか。筆者はヨーロッパの高速道路のSA・PAも何度か利用したことがあるけれど、PAの施設は日本ほどは充実しておらず、トイレしかない場所も多い。そしてSAの売店では、販売している商品の品揃えが違う。日本では食べ物を中心とした土産物が多いが、向こうでは土産物は少なく、逆にカーグッズや子供のおもちゃなど、ホームセンターに近いラインナップになっている。たしかにロングドライブでは子供が機嫌を損ねることがあるし、車内にゴミ箱が欲しくなることもあったりするから、理に叶っている。ロングドライブをイベントとして考える人が多い島国日本、地続きの大陸ゆえ長距離移動は日常生活の一部と考えるヨーロッパという違いを感じたし、日本人は何かにつけてエンタメ性を重視する国民なんだという印象も抱いた。

 

ただお気に入りのSAやPAがあるからといって、渋滞で何時間掛かってもそこを目指すのは控えたほうが良い。食事やトイレ、そして睡眠は、人間が生きていく上で欠かせない行為。食べたい時に食べ、眠い時には寝ることを心掛けたい。新たなSA・PAとの出会いで感動が得られるかもしれない。

 

【著者プロフィール】

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担当。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本デザイン機構理事、日本自動車ジャーナリスト協会・日仏メディア交流協会・日本福祉のまちづくり学会会員。著書に『パリ流環境社会への挑戦(鹿島出版会)』『富山から拡がる交通革命(交通新聞社)』『これでいいのか東京の交通(モビリシティ)』など。

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