ライフスタイル
2016/8/7 17:00

三陽商会、イトキン、レナウン――客を変えられない「百貨店アパレル」に明日はあるのか?

2015年度のアパレル業界各社のデータが出揃った。7月29日には、日本のファッション業界の業界紙である「繊研新聞」に15年度アパレル売上高と題し、上位20社の売上高ランキングが発表された。

1位のワールド(2,782億円)、2位のオンワードホールディングス(2,484億円)をはじめ、TSIホールディングス(1,639億円)、三陽商会(963億円)、イトキン(835億円)、レナウン(711億円)と、10位以内にランクインした「百貨店アパレル」が軒並み前年の売上を落としている。

 

■百貨店の1万円シャツに40代の消費者は納得しない

なかでも「バーバリー」のライセンスを失った三陽商会(前年比11.9ポイントダウン)、経営再建中のイトキン(10.3ポイントダウン)は、2桁以上の減少となっている。ここ数年、ずっと続いている傾向だ。こうも厳しい状況となったのは、百貨店アパレルの主要販路である百貨店での売れゆき自体が厳しくなり、その後の改善が図れていないからだ。

 

“百貨店アパレル”とは、百貨店を中心にアパレルを卸す問屋だ。売上仕入れ(店頭で売れたら仕入れが起きるという取引条件)で自社の販売員を置くことで、百貨店内での売場を大きくとり、売上を伸ばしてきた。

 

これは、昭和の高度経済成長時代から百貨店アパレルがずっと続けてきたことだ。ナショナルブランドからライセンスブランド、デザイナーズブランド、インポートブランドと、時代にあわせて納める商材やブランドは変わっても、ビジネスモデルは変わらなかった。それが、いよいよ限界に来ている。

 

百貨店でアパレルを販売するためには、百貨店も儲けなければいけない。百貨店は、売上仕入でも40~35%程度(強気の百貨店は45%というところも)のマージンをとる。そして、百貨店アパレル側は売値の55~65%で納入し、そこから商品原価と販売員の人件費を捻出しなければならない。そのため、製造原価は20%後半~30%前後ぐらいで抑えているのが平均だろう。

 

つまり、1万円のシャツの原価は2,500円~3,000円ぐらいということだ。モノと情報が溢れ、消費者が目利きとなっている今、このような商売で満足させることが困難となってきたのである。特に、百貨店の主要顧客は40歳代以上の大人。必要十分な服は持っているだろうし、目も肥えているので、なおさらだ。

 

■「同じものを多く売る」という発想がファッション売場をつまらなくした

SPA(製造小売業)躍進期の2000年前後から言われてきたこの問題の多くは、いまだ変わっていない。その頃に百貨店アパレルが取り組んだことといえば、製造原価の上昇抑制――円高基調を踏まえた中国への製造拠点の移転だ。ほどなくして、中国もコストが上昇。さらにコストの低い製造拠点を求め、アジアの奥を模索しているが現在だ。

 

このアジアシフトによって生まれるのがロッド問題だ。アジアでは、多くの工場が1型あたりの製造枚数を多くしないと取引をしない。その結果、確実に広く安定する商品企画が必要である。そうなると、チャネルもやはり百貨店に限られる。

 

ユニクロやザラのように手頃なものをつくって、SC(ショッピングセンター)チャネルに打って出るという選択肢もある。しかしそれでは、百貨店アパレルは“苦手”な状況に身を置くこととなる。これまでの生産背景と大きく異なり、かつ単価も低いという不慣れな環境で、上手くいかない確率のほうが高い。そのため“中から上のグレードの顧客”をつかんでいる百貨店とは切っても切れない関係となっているのだ。

 

それでは今後、百貨店アパレルは凋落の一途をたどるのか? 百貨店とは別の売場を開拓するという発想もあるが、やはり百貨店とともに環境適応への速度をあげるよりないであろう。商売では、客を変えるのは難しい。同じ客に対して提供する商品を変える方がまだ、成功する可能性が高い。

 

百貨店アパレルの客は百貨店であるが、百貨店の客は一般消費者である。そこまでを、見据えることが必要だ。当たり前のことであるが、これができていない。アパレルは同じものを多く売った方が儲かるからだ。

 

その発想こそが、ここまで百貨店のファッション売場をつまらなくした。今後は、店ごとの立地特性や客層にあわせて商品構成を変えていくことが求められる。

 

■アパレルは「伊勢丹新宿」や「梅田阪急」に固執してはいけない

例えば、品揃えの標準をより小商圏をベースにもつことが必要ではないだろうか。百貨店というと「伊勢丹新宿」や「梅田阪急」のような一級の都市型百貨店を思い浮かべるが、そのような店舗は日本で10店舗もない。

 

流行は大商圏から小商圏に流れるものだが、商売の仕組みは小商圏から大商圏に流れる。“百貨店アパレル=東京や大阪の都心”という幻想を捨てて取り組むことが必要だろう。商圏人口80万人程度の地方中核都市こそ、主戦場なのだ。そこで、輝くような商品やブランド開発を行い、個店としっかりとマーケティング戦略を練り上げることで、新たな道を切り拓けないだろうか。

 

【著者プロフィール】

山中健

ファッションビジネスコンサルタント。大手百貨店、外資系ブランドメーカー、大手経営コンサルタント会社を経て、コンサルタントとして独立。ファッションビジネスを中心に、雑貨などのライフスタイル、百貨店、SCなど、幅広い業態に対しマーケティングやMD、リテール、海外進出のコンサルティングを手掛ける。また、欧米、アジア、国内のコレクション取材やファッションマーケット調査を数多く行っており、国内外のファッションビジネスの動向を語ることができる貴重な存在として注目されている。

オフィシャルサイト
https://www.yamanakaconsulting.com/

TAG
SHARE ON