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2021/4/20 18:15

キッチンの汚れはpHで掃除! 重曹・クエン酸・過炭酸ナトリウム、石鹸、アルコールを駆使したナチュラル掃除術

料理をする機会が増えた人は少なくないでしょう。そして、料理の回数が増えたことで積み上がるのが、キッチンの汚れ。油汚れ、焦げ付き、ホコリにカビ、水アカなど、汚れの種類は多岐にわたり、それらの掃除に手が回らずに困っていませんか?

 

ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんは、「掃除が大変」「掃除が苦手」だと感じる人ほど、多くの洗剤を所有している傾向にあると話します。大学で理学部化学科を専攻した本橋さんは、「数種類のナチュラル洗剤があれば、家中のどんな汚れも落とせる」ということに注目し、ナチュラルクリーニング講師としての活動をスタートしました。

 

キッチン掃除の負担を減らしてきれいをキープ、お財布にも環境にもやさしいナチュラルクリーニングとは、いったいどのような方法なのでしょうか?

↑ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさん

 

せっかく掃除をしても
すすぎが不十分だと雑菌の繁殖に……

 

「ギトギトした油汚れが溜まっているから、強力タイプの洗剤を使わなきゃ」「キッチンの汚れだから、キッチン用の中性洗剤を吹きかけて掃除をしよう」。

 

こういった前提で掃除を始めると、強力な洗剤を使ってゴシゴシと磨き、汚れの付着した泡をすべて取り除くために何度も重ね拭きをしたり、すすぎを繰り返したりする必要が出てきます。

 

「掃除の負担を増やしている大きな要因は、実は“すすぎ”です。ガンコ汚れを落とそうと、大量に洗剤を吹きかけたり、強力洗剤を使用したりするほど、泡を洗い流す労力が増します。しかも、汚れた泡の除去が不十分だと、それが要因で雑菌の繁殖を引き起こしてしまうことがあるので、すすぎが雑だと掃除したことがムダになってしまう可能性も。そのため、キッチン掃除を始める前に、まず押さえておきたいのは、洗剤を使う必要があるかどうかを見極めること。洗剤を必要以上に使わないようにすることで、すすぎの手間が大幅に省けます」(ナチュラルクリーニング講師・本橋ひろえさん、以下同)

 

洗剤が必要な汚れでも、
“予洗い”をしておけば洗剤量が減らせる

洗剤を使わずに落とせる汚れとは、どのようなものがあるのでしょうか?

 

「ホコリ、チリ、砂や泥、髪の毛などの汚れやゴミなどは、掃除機で吸い取ったりホウキではいたり、水スプレーを吹きかけたりして取り除きます。食べ物のカスも、洗剤を使わずに取り除ける分はありますね。使用した調理道具やお皿の油汚れといった洗剤を必要とする汚れでも、あらかじめペーパーで汚れを拭き取ったり、水洗いをしたりすることで落とせる汚れは取り除いておきましょう」

 

洗剤が必要ないキッチンの汚れ

・ホコリ・チリ
・砂・泥
・髪の毛 など

 

洗剤が必要なキッチンの汚れ

・油・皮脂
・食べ物のカス
・水アカ
・カビ・雑菌

 

汚れをゆるめる“化学反応”を起こすために
必要な洗剤はとてもシンプル!

キッチンで発生する汚れには、洗剤不要の汚れ、酸性の汚れ、アルカリ性の汚れの3種に分類ができるという本橋さん。

 

「酸やアルカリには強弱があり、その強さはpH(ペーハー)値で表します。pH7が中性で、それより数字が小さければ酸性が強く、数字が高ければアルカリ性が強くなります。『酸とアルカリが混ざると中和し、汚れがゆるむ』原理を利用するのが化学反応を活用した掃除術です。そのため、油や食べカスなどの酸性の汚れにはアルカリ性の洗剤を、水アカや石けんカスなどのアルカリ性の汚れには酸性の洗剤を使うと汚れが落とせます。カビや雑菌は、除菌効果の高い洗剤で掃除することで繁殖を防げます」

 

洗剤が必要な汚れ

・油・皮脂=酸性
・食べ物のカス=酸性
・水アカ=アルカリ性
・カビ・雑菌=中性

「以上の理由から、キッチン掃除に必要な洗剤は5種類に絞ることができます。キッチン以外の掃除でも、汚れの種類が同じであれば、同じ洗剤が使えます。場所別、用途別に専用洗剤を買い揃えるよりも省スペースに収納でき、すすぎの手間が減らせるので、経済的にも労力的にも省エネにつながります」

 

5種類のナチュラル洗剤

1. 重曹
2. 過炭酸ナトリウム
3. 石けん
4. クエン酸
5. アルコール

 

「酸性の汚れには、弱アルカリ性の重曹、過炭酸ナトリウム、石けんを、アルカリ性の汚れには、酸性のクエン酸を使います。洗剤で落とす汚れの8割以上が酸性なので、重曹や過炭酸ナトリウムの出番が多くなります。水が使えない場所の油汚れを落としたいときには、揮発性の高いアルコールを使えば、油を溶かすことができます。水アカ以外にも、石けんカスや魚の生臭い匂いなどはアルカリ性の汚れなので、クエン酸を使います。それぞれの掃除方法は、このあと順に説明していきますね」

 

掃除道具もシンプル!
キッチン掃除に必要な5アイテム

洗剤は5種、そして、掃除に使う道具も5種で完結。とことんシンプルにすることで、掃除のムダをなくすのが本橋さんのナチュラルクリーニング術です。

 

「拭き取り掃除に欠かせないトイレットペーパーは、専用容器に入れてサッと取り出せるようにしています。スポンジや厚手のぞうきんは乾きづらいため、メッシュクロスを使用しています。マイクロファイバークロスは、後で説明する重曹水やクエン酸水を吹きかけた場所の乾拭きに重宝します。スポンジもふきんもなるべく薄手のタイプを使うことで、雑菌を防ぎます。ナナメカットブラシは、蛇口やシンクなどすき間の汚れを磨くアイテムです。毛が縦方向にあり、ナナメにカットされていることで汚れがかき出しやすいので、この形状がオススメです。シリコン製のカップカバーがあれば、シンクに湯を溜めてつけおき洗いをするのが簡単に。ナナメカットブラシとドリンクホルダーは100円ショップで購入できます」

 

では早速、キッチンのガンコな汚れを一網打尽にする、5種類のナチュラル洗剤を活用した汚れ落としについて、コツを教えていただきましょう。

 

5つのナチュラル洗剤活用例

【重曹】キッチンの油汚れは重曹パックが効果的!

重曹が洗剤として使えることは浸透していますが、重曹の汚れ落ち効果を最大限生かすためにおさえておくべきポイントはどのようなことでしょうか?

 

「重曹は水に溶かしてはじめてアルカリ性の洗剤になるので、粉末のままでは酸性の汚れを浮かす効果は期待できません。ただし、粉末のままシンクに振りかければ研磨剤になるので、シンクに振りかけて全体を磨き、その後に温かい湯で流すことで、油汚れを効果的に落とすことができます。重曹をアルカリ性洗剤として使うには、40℃くらいのぬるま湯に、濃度1%(水200mlに対し、重曹小さじ1/2)になる重曹を溶かして『重曹水』にするのがオススメです。重曹の濃度を守れば、拭き掃除後に白浮きすることはないので、二度拭きの必要がありません。コンロの焦げ付きや換気扇のしつこい油汚れには、重曹水をしめらせたキッチンペーパーで重曹パックをしましょう。10分ほど放置すれば、汚れが浮き上がります。重曹水は保存が効かないので、一度の掃除で使い切れる量を用意するようにしてください」

 

【重曹掃除メモ】
・粉末のままならクレンザー効果あり。ただし、アルカリ性洗剤としての効果はなし。
・40℃のぬるま湯に1%濃度の重曹を溶かした重曹水は、アルカリ性洗剤になる。コンロ周辺やキッチンの床などの油汚れ落としに効果的。濃度を守れば、二度拭きが不要。
・重曹水を鍋に入れて加熱すると、発泡することで鍋の焦げ付きを浮かすことができる。

 

【過炭酸ナトリウム】排水口のヌルヌルや黒ずみには過炭酸ナトリウムでシュワシュワ除菌を

弱アルカリ性洗剤の過炭酸ナトリウムは、カビを落とし、漂白や除菌をする働きがあります。

 

「60℃の湯2Lあたりに大さじ1の過炭酸ナトリウムを溶かせば、漂白剤としての働きが期待できます。コンロの五徳や水筒・ティーポットなどの茶しぶ落とし、ふきんの漂白などに加え、排水口のヌメリや黒ずみ除去にも効果的。排水口は週に1回ほどのペースで、シンクの排水口をふさいで湯をため、過炭酸ナトリウムによる除菌と漂白を行えば、ヌメリや黒ずみをキレイに除去できます」

 

↑「シンクに湯をためるときは、排水口のゴミ受けや排水トラップの部品を取り除いた状態で、100円グッズのシリコン製カップカバーをのせておけば、簡単に湯をためられます」

 

【過炭酸ナトリウム掃除メモ】
・60℃のお湯に過炭酸ナトリウムを溶かすことで発泡して汚れを浮かすことができる。ギトギトの油汚れやカビ、黒ずみがあるときにつけ置きすることで、洗浄と除菌、漂白ができる。
・食器やふきんの漂白、排水口の掃除、換気扇や五徳などのギトギトな油汚れ落としに効果的。アルカリ度が高いので、すすぎは丁寧に行うように。
・変色の可能性があるため、アルミ製品や畳には使用できない。

 

【石けん】手洗いと食器洗いは石けんで。スポンジを使わずお皿汚れが除去できる!

石けんを泡立て、メッシュクロスで食器を洗えばスポンジは必要ありません。

 

「食べた後の汚れが残る食器は、乾いたペーパーで汚れを拭き取ってから、石けんを泡立ててメッシュクロスで洗っています。石けんは泡をしっかりとすすぐ必要があるので、水が流せない場所には使わないほうがいいでしょう。石けんの洗浄力は合成洗剤と同じくらいありますが、酸性の汚れと合わさると中和されて洗浄成分が失われやすいので、酸の強いレモンやドレッシング、油汚れなどは、あらかじめペーパーで拭き取っておくようにしましょう」

 

【石けん掃除メモ】
・水をふくませたメッシュクロスで石けんをよく泡立てて食器を洗う。酸の強いレモンやドレッシング、油汚れなどは最初に拭き取っておくことが大切。
・粉末石けんを、ボトル型のふりかけやはちみつの容器のような形状のものに入れて、ふりかけるように使うのが、コスパがよくて便利。

 

【クエン酸】水アカや石けんカス、魚などの臭い除去はクエン酸におまかせ

水アカや石けんカス、焼き魚臭などのアルカリ性の汚れに効果的なクエン酸は、重曹水と同様に、1%濃度のクエン酸水を使います。

 

「クエン酸水は重曹水よりも使用場所が限られますが、必要なときにシュッシュと吹きかけて使うことで、水アカや石けんカスのしつこい汚れの蓄積を防げるので、ぜひ手に取りやすい場所に置いておきましょう。蛇口はキッチン作業を終えた最後にクエン酸水スプレーを吹きかけて乾いたマイクロファイバークロスで乾拭きすればピカピカになります。キッチンではありませんが、浴室のガラスについた水アカ除去やトイレのアンモニア臭に吹きかけるのも効果的です。食洗機を使用している場合は、クエン酸を大さじ1加えて、食器を入れずに運転をすることで水アカ除去ができます」

 

【クエン酸掃除メモ】
・濃度1%のクエン酸水をスプレーに作っておき、蛇口や鏡などの水アカに吹き付けてマイクロファイバークロスで拭き取る。トイレや浴室でもこまめに使いたい。
・クエン酸水は2週間くらいで使い切る。
・食洗機にクエン酸大さじ1を入れて、食器を入れずに運転すれば、庫内の水アカ除去ができる。

 

【アルコール】キッチンやダイニングテーブルの除菌にはアルコールスプレーが大活躍!

今は、どの家庭でもストックが欠かせないアルコール(消毒用エタノール)はキッチン掃除にも欠かせないアイテムだとか。

 

「35%濃度のアルコール水(水110mlに対し、アルコール 90ml)は3か月ほど保存できるので、必ず作ってキッチンに置いています。除菌や油汚れ除去に効果があり、二度拭きの必要がありません。そのため、電子レンジを使用した後に庫内に吹きかけてからふきんで調味汚れを拭き取ったり、冷蔵庫の表面や中の除菌、調理台の油汚れ除去やテーブルの除菌などに使ったりと、毎日、さまざまなシーンで重宝します。揮発性が高いので、畳や押入れなどにも使えます。35%よりも濃度が低いと効果がなく、濃度が高いと家具や電化製品を痛めてしまう可能性もあるので、アルコール水の濃度は守るようにしてください」

 

【アルコール掃除メモ】
・濃度35%のアルコール水をスプレーに作っておき、キッチンをやダイニングテーブルを使用した後に吹きかけて乾拭きすることで除菌をする。
・引火性があるので、コンロ周りで使用するときは注意をすること。

 

使い終わった掃除道具は吊り下げて保管する

使い終わった調理や掃除道具は吊るしておくことで、湿気がこもらないようにすることも、掃除の手間を省く大きなポイントに。

 

「スポンジや厚手のぞうきんなど、乾きづらいものは使わず、薄手のメッシュクロスを使い、使用後は洗濯するか、よくすすいでキッチンに吊るしておきます。こうすることで、素早く乾き、余計な水分をため込まずに済みます。油や調味料汚れも見つけたらサッとペーパーで拭き取る、アルコール水で除菌することを心がければ、キッチン汚れはずいぶんと減りますよ」

 

 

ナチュラル洗剤は環境に優しいけれど、洗浄力が弱いイメージがあるかもしれません。しかし、汚れにあった性質のものを使い、化学反応効果を生かせば、専用洗剤と変わらない洗浄力が出せる上にすすぎの負担が減らせることがわかりました。キッチン掃除に革命を起こすナチュラルクリーニング術を新生活に取り入れてはいかがでしょうか?

 

【プロフィール】

ナチュラルクリーニング講師 / 本橋ひろえ

北里大学衛生学部化学科(現・理学部化学科)卒業。化学系の企業に就職し、化学事業部で水処理、化学薬品、合成洗剤などの業務を担当。結婚退職後、専業主婦として家事を経験し、子どもがアトピー体質であったこともあり、ナチュラル洗剤を活用するように。その後、ナチュラルクリーニング講師としての活動を始動。全国各地での講座開催や、著書などで、ナチュラルクリーニングの方法を広める活動に力を注いでいる。
Blog=https://ameblo.jp/naturalcleaning/

 

『ナチュラルおそうじ大全』(主婦の友社)
http://shufunotomo.hondana.jp/book/b456688.html
手が荒れず、ゴシゴシ洗い不要、少ない洗剤で家中をキレイにできるナチュラル洗剤活用術のノウハウがギュッと集約された1冊。5種の洗剤を使いこなす教科書として手元に置いておくのがオススメです。