ライフスタイル
2016/8/17 13:30

長時間労働を自認する中高年男性は、いますぐスポーツを始めるべき

今も昔も、プロスポーツ選手は少年たちが抱く夢の定番である。会社員として働くようになってからも、現役の選手や監督の言葉や著作から教訓を得て、やる気を引き出している男性は少なくないだろう。

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僕自身、少年時代は近所の野球場に足しげく通い、スポーツ選手に憧れて過ごしたので、この手の書籍が好きである。いまでは某球団の監督を務めるほど出世したある方にしつこくサインをねだって、「いいかげんにしないとぶん殴るぞ!」と怒鳴られた過去も、いまではいい思い出だ。

 

先日、野村克也・宮本慎也『師弟』(講談社)を読んでいたら、気になる記述があった。宮本慎也さんが選手時代に記録していた「野村メモ」に、次のような内容があったそうだ。「睡眠は静かな部屋を適温にし、8時間はとる。食事と睡眠に金をかけない選手に名選手はいない」。睡眠が直接的にプレーの質に影響を与えるからこそのアドバイスである。

 

NHK放送文化研究所が実施する「日本人の生活時間調査2015」によれば、働き盛りの30代、40代男性の平日における平均睡眠時間は、それぞれ、6時間59分、6時間50分であった。土日にはどちらの世代の男性も8時間程度の睡眠を確保しているので、現状では平日の睡眠不足を休みの日に補っていることになる。

 

ちなみに、女性の睡眠時間は、平日の場合、30代では7時間5分と辛うじて7時間を超えているものの、40代では6時間41分となっている。男女問わず中年の睡眠不足が深刻なのだ。これでは家庭内が殺伐とするのも当然である。『しっかり寝れば、夫婦の不仲は解決する』というタイトルの本でも書こうかと思うほどだが、この点については、また別の機会に論じることにしよう。

 

■寝不足で闇雲に働く会社員にいい仕事はできない

日本で長時間労働が社会問題として議論されるようになって久しい。その一方で、「日本は資源がないのだから、たくさん働かないと競争に負けてしまう」という主張を耳にする。『師弟』の中で、野村克也さんは「先入観は罪、固定観念は悪」と言っている。長時間働けば、その分だけ成果をあげることができるという発想は、まさに悪しき固定観念そのものである。

 

睡眠不足の状態で闇雲に働き続けて、時間に見合っただけの成果をあげることができるのか。仕事は少しぐらい体調が悪くてもなんとなくこなせている感じがしてしまう。しかし、プロスポーツ選手ほどではないにしても、会社員としての仕事にも集中力と精度が求められる。したがって、睡眠を軽視する会社員にいい仕事はできない。

 

もちろん、8時間はひとつの目安であり、必要な睡眠時間には個人差がある。そこで、自分の体調を客観的に把握するために、スポーツをはじめることをお勧めしたい。スポーツは仕事と違ってなんとなくこなすことはできない。だから、明確に自分のコンディションを把握できる。

 

ランニングなら気軽にはじめられるし、スポーツジムに通ったり、学生時代に部活動でやっていた競技を再開したりするのもいいだろう。いずれにしても、中年なのだから、競技レベルをあげようなどと気張る必要はない。定期的に自分の状態を把握する上で、継続できることがもっとも大切である。

 

会社員として10年、20年とフルタイムで働き続けていれば、当然、体にガタがきている。スポーツを始めることのもっとも大きなメリットは、体調を誤魔化しながら働き続ける中年男性に、休養の必要性を自覚させてくれる点だと言える。誰のためでもない。自分を大切にするために、時間を作ってスポーツをしよう。

 

【著者プロフィール】

田中俊之

1975年、東京都生まれ。武蔵大学社会学部助教。博士(社会学)。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。単著 『男性学の新展開』(青弓社)、『男がつらいよ―絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男が働かない、いいじゃないか!』(講談社プラスα新書)。「日本では“男”であることと“働く”ということとの結びつきがあまりにも強すぎる」と警鐘を鳴らしている男性学の第一人者。

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