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2021/5/21 20:00

観るだけで漫画家になれる可能性が!?「YouTube NextUp 2020」ファイナリスト『オクショウ漫画教室』の新たな挑戦とは?

次世代のYouTubeクリエイターを発掘、支援を目的にしたプログラム「YouTube NextUp 2020」のファイナリスト12 組が、昨年末決定した。GetNavi webではこの12組にインタビューを実施。新しい世代のYouTubeクリエイターは、YouTubeを、そして動画コンテンツをどう変えていくのか? 連載形式でお伝えしていく。今回は、ファイナリストの中から「物語の作り方」をテーマに、マンガに関する話題を取り扱うチャンネル『オクショウ漫画教室』を制作するオクショウさんに、YouTubeを始めたきっかけや動画のこだわり、活動の目的などを伺った。

((構成・撮影:丸山剛史/執筆:猪口貴裕))

 

オクショウ漫画教室

 

構成作家から漫画原作者へ

――オクショウさんは漫画原作者として、『リアルアカウント』や『ゲーセンの彼女』『ノー・レセプション~電波の無い国~』など、数多くの作品を手掛けていますが、どうしてYouTubeチャンネル『オクショウ漫画教室』を始めようと思ったのでしょうか。

 

2018年に本格的な投稿を始めたんですが、黎明期とは違って、どんどんYouTubeの需要がニッチになっていて、専門性や何かに特化したチャンネルが求められていました。でも、最初は本業である漫画のことを語るのは恥ずかしいみたいな感覚があったんです。自分の手法を明かすのは、料理人で言えば秘伝のレシピを公開しているようなものですからね。ただ、試行錯誤を繰り返す中で、漫画の描き方を教える動画にシフトチェンジしていったら、いろんな方に観てもらえるようになりました。

 

――オクショウさん自身、どういう経緯で漫画原作者になったのでしょうか。

 

もともと僕はテレビの構成作家などをやっていて、漫画とは違う業界にいたんです。なので専門学校にも通ってないですし、漫画家のアシスタントをしたことがありません。どこかで勉強して漫画を描き始めたわけではなく、とあるコンペに応募したのをきっかけに我流で漫画原作の仕事を始めたので、右も左も分からない状態で苦労も多かったんです。なので、自分が駆け出しの漫画原作者だったころに欲しかった情報を『オクショウ漫画教室』で公開しているところがあります。またYouTubeチャンネルを通じて人に話すことで、自分の考えをまとめることにも繋がっています。

 

――テレビの仕事に携わった経験が動画制作にも活きている面はありますか?

 

編集など技術的な面もありますが、何よりも活きているのは、いかに余計なものを省くかということです。これは漫画にも言えることなんですけど、上手く作られているテレビ番組は、たとえ長尺でも本当に伝えたいこと以外は端折られていて、とことん本質を突き詰めているんです。なので『オクショウ漫画教室』でも長めに素材を撮ってから、テーマに沿って精査しながら、不必要な部分はカットしています。

 

――それ以外で、動画制作する上でこだわっていることはありますか?

 

小学校高学年ぐらいの子が観ても、分かりやすいように意識しています。ストーリーの作り方を指南する本はたくさんありますけど、専門的な内容ばかりで難しいんです。なので、なるべく専門的な用語は使わないようにして、一度も漫画を描いたことがない人でも理解できる内容を目指しています。あと、僕も漫画業界に身を置く立場なので、同業者に対してマイナスな面は発信しないようにしています。誰しも趣味嗜好は違いますし、「あの漫画は面白くない」みたいなことは絶対に言わないようにしています。かといって、「いいね」だけを伝えるのは個人的に気持ち悪いので、ちゃんと漫画業界の現実は伝えるようにしています。今まで僕は漫画原作者として30冊以上の作品を出してきたんですけど、ここまで実体験を元に話している人は他にいないと思いますので、そこが独自性になっているかもしれません。

 

――視聴者層はどのような感じですか。

 

年齢は10代後半から30代半ばの方が多い印象です。男女比率で言うと、男性7割、女性3割ですね。

 

YouTubeチャンネルがポートフォリオに

――YouTubeチャンネルを始めたことで、新たに得られた知見はありますか?

 

「まさかこういうモノの見方もあるんだ」という思考を学べていると思います。動画を上げる度に、いろいろなコメントが付くんですけど、思いもよらぬ方向からくるコメントも多いんです。一番意外だったのは、「そもそも漫画ってどう読むんですか?」というコメントです。確かに漫画の読み方って誰に習うわけでもないですし、通常は右から左へと読み進めていきますけど、中には複雑な構造の作品もあるので、よく分からない人も多いんですよね。

 

――右から左というセオリーも、スマホの影響で大きく変化する可能性もありますしね。

 

漫画を読めない層がいるのはYouTubeチャンネルをやらないと分からなかったことですし、いろんな方向に世界が広がりました。

 

――仕事面でYouTubeチャンネルをやっているメリットはありますか?

 

現在のチャンネル登録者数は1万7千人(※2021年現在)程度ではありますが、今は漫画原作者としての僕ではなく、YouTubeチャンネルを観て僕のことを知ってくださった方が多いんです。たとえばClubhouse(クラブハウス)を通じて知り合った方も、9割ぐらいがYouTubeチャンネルで僕を知ってくださっていたんですよね。またYouTubeチャンネルを観て依頼してくださった編集者さんもいらっしゃって、新たな仕事先の開拓にも繋がっています。この状況は、僕が漫画原作を始めたときに似ているんです。

 

――どういう面で似ているのでしょうか?

 

テレビの放送作家をやって、構成力などを学んだことで、その経験を漫画に活かせました。そして漫画で得たものをYouTubeチャンネルで「漫画の描き方」として公開して、数字も出ているので説得力が生まれて、編集者さんから声がかかる。ある場所で得た能力を、別の場所で活かすのは、どんな仕事でも重要です。

 

――YouTubeチャンネルがポートフォリオ的な役割も果たしているんですね。

 

まさしくそれですね。ぶっちゃけ言うと、動画用に機材を買ったり、編集の一部を外部に頼んだりしているので、金銭面だけ考えると漫画原作を書いているほうがいいんです。でも僕のポリシーとして、短期的な利益よりも長期的な利益を優先すると言いますか、長期的に考えて本当にメリットがあるかを徹底して考えます。『オクショウ漫画教室』の視聴回数が増えれば、信頼感も高まりますし、自分の宣伝にもなります。動画単体で儲けようという気持ちはなくて、発信することで仕事の幅を広げたり、楽しい展開になったりすればいいなという気持ちが強いんですよね。

 

エンタメ性とセルフプロデュース力

――オクショウさんは学生時代、教室の隅で漫画を描いているようなタイプだったと動画で仰っていましたけど、発信するようになったきっかけは何だったんですか?

 

大学進学を機に上京したんですけど、早々に大学進学が決まって暇だったので、30キロぐらいダイエットしたんです。それをきっかけにモデルやレポーターに近い仕事をやらせていただく機会が増えて、発信することが楽しくなったんです。それが2011年のことだったんですけど、僕は初期からYouTubeを観ていたので、実は当時もチャンネルを作ったことがありました。

 

――10年近く前にYouTubeチャンネルを開設したのは先見の明がありますね。そんなオクショウさんが今回、「YouTube NextUp 2020」に参加したのは、どういう経緯があったのでしょうか。

 

「物語の作り方」を発信するという点では、基本となることは一通りやったなという思いがあって、この先YouTubeチャンネルの方向性をどうすればいいのか、どうすればチャンネル登録者数を伸ばせるのか悩んでいました。また編集に時間がかかるので、効率化する方法なども知りたくて応募しました。

 

――実際に参加して、どんな学びがありましたか。

 

漫画の描き方を教えるYouTubeチャンネルですけど、それだけをやっていると一般的な講座と変わりません。僕のYouTubeチャンネルは、絵よりもストーリーテリングに寄せているので、必然的に扱うテーマも狭まってきます。そうすると絵の描き方を教えるYouTubeチャンネルよりも、数字が伸びにくいんですよね。今回、「YouTube NextUp 2020」で全くジャンルの違う参加者とコラボして、先生からアドバイスをいただく中で、もっとエンタメ性を高めることが必要だなと感じました。その新たな切り口を見つける糸口になりましたし、ここで学んだことを活かしながら今までとは違うアプローチもしていこうと考えています。

 

――具体的なアイデアはありますか?

 

今まで通り漫画に軸を置きつつ、漫画原作者の日常を見せたり、エンタメに特化してドラマみたいな感じで実演して物語を作ったり、ただ教えるだけではなくて、僕個人に興味を持ってもらえるような動画作りを考えています。あとは視聴者層を広げるために、たとえば「漫画によくあるお約束展開ランキングトップ10」みたいな感じで、漫画に興味がある人なら誰でも観たくなるチャンネルにしていきたいと考えています。

 

――自分に興味を持たせるという点において、セルフプロデュース力が大切だと思うのですが、動画を撮影する上で、どんなことを意識していますか。

 

先ほどお話しに出ましたが、僕は高校時代まで教室の端で漫画を描いているただのオタクでした。今も引きこもっているような生活ですし、彼女もいたことがありません(笑)。そんな僕でも漫画原作者になれるよと知ってほしくて。漫画でも、同情、同調、共感できるキャラクターは人気が出るので、そこを意識して伝えるようにしています。

 

興味のないものに興味を持つ

――『YouTube NextUp 2020』は「学び」を大きなテーマとして掲げていますが、オクショウさんはどのようなインプットを心がけていますか。

 

今の時代ってパーソナライズが進み過ぎて、自分に興味のあるニュースだけがアプリのトップに出てきたり、SNSでも好きなアカウントだけフォローしたり、インプットの方法がすごく偏っている気がするんです。放っておくと好きなものばかりになってしまうので、興味のない情報にも触れるために、めっちゃテレビ番組を観ます。たとえば『王様のブランチ』(TBS系)や『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)、『有吉ゼミ』(日本テレビ系)などが好きなんですけど、ああいう情報番組を観ると、女子高生や主婦など、ふだん接することのない人たちのトレンドも分かるんですよね。もちろん効率化で言えばネットが最強ですけど、テレビや新聞は興味の範囲外の情報がたくさん載っています。現状に不満を持っている方は、興味のないものに興味を持つことで世界が広がりますし、それはインプットの上でも重要だと思います。

 

――最後に改めて、まだ『オクショウ漫画教室』を観たことのない読者に向けて、見どころを教えていただけますか。

 

僕のYouTubeチャンネルを観たのがきっかけで漫画を描き始めて、賞を獲った方が実際にいるんです。また漫画家だけど、なかなか企画が通らず、『オクショウ漫画教室』で紹介した方法を実践したら連載が決まったという声もいただきました。そうした事例が証明しているように、超初心者の方でも、僕のチャンネルを観るだけで漫画家になれる可能性はあります。ストーリーテリングはプロの方でも言語化するのが難しい概念もたくさんありますが、初心者からプロまで分かりやすいように解説しています。なので、漫画を描きたいと思っている方、少しでも漫画に興味のある方、また日々に行き詰まりを感じている方に観てもらえたら、役に立つ情報もあるかと思います。また漫画業界以外でも、フリーランスの方には有益な情報もたくさんありますのでよろしくお願いします!

 

 

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