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2016/10/15 14:10

“臨海副都心BRT”のターミナルは、虎ノ門ではなく東京駅にすべきだ

東京都知事に小池百合子氏が就任して、にわかに注目されているのが築地市場の豊洲への移転問題だ。土壌汚染対策の盛り土をしておらず、代わりに地下空間が作られていたことを発端に、さまざまな問題が噴出。来月に予定されていた移転は延期され、移転そのものを撤回すべきという声も出ている。

 

この移転が、2020年東京オリンピック・パラリンピックと関係していることを、知っている人もいるだろう。競技施設や選手村などが作られる臨海副都心地区と都心を結ぶ道路が、築地市場がある敷地を通過するからだ。

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道の名は環二通り。東京都は第二次世界大戦前(当時は東京市)に、道路網計画を作成しており、そこには環状道路も描かれていた。東京都民にはおなじみの(環状七・八号線)をはじめ、山手通り(環状六号線)、明治通り(環状五号線)など、多くが完成している。

 

環二通りは環状二号線の一部を指した名称で、西側から北側にかけては外堀通りと呼ばれ、かなり前に完成している。虎ノ門から臨海副都心に至るのが環二通りで、虎ノ門から新橋までは最近開通した。残るは東京湾をまたいで新橋と臨海副都心を結ぶ部分だけだ。ここに築地市場がある。環二通りが完成すれば、都心と競技場や選手村などを直結する大動脈として、多くの観光客や関係者が利用することになるだろう。しかし全員が乗用車で動いたら大渋滞になってしまう。そこで東京都が導入を考えているのが、以前もこのコラムで取り上げたBRT、バス・ラピッド・トランジットだ。ここでは臨海副都心BRTと呼ぶことにする。

 

運行開始は2019年と言われており、運行業者は千葉市などで連節バス運行の実績がある京成バスに決まっている。ルート案についても昨年発表済みだ。残るは専用レーンがきちんと整備されるかどうかだが、それ以前に気になる点がある。都心側の拠点として「虎ノ門ターミナル」という、聞き慣れない場所が登場しているからだ。東京都の資料によれば、虎ノ門ターミナルは虎ノ門ヒルズの脇に作られるという。環二通りは虎ノ門ヒルズの下をトンネルで通過しているから、ターミナルを出るとすぐに環二通りに入れて、この点では都合が良い。

 

しかし現時点で、虎ノ門ヒルズに接続する鉄道駅はない。東京メトロ日比谷線が新駅を作ることを発表しているが、それでも通過するのは日比谷線1本だけだ。ターミナルというのは東京や渋谷、新宿駅のように、多くの交通が結節する地点のことであり、仮に日比谷線の駅ができたとしても、ここをターミナルと呼ぶことには違和感が残る。ルート案では新橋から東京駅までが点線で描かれており、「今後検討」としているが、新幹線が全国各地へ伸び、山手線をはじめとするJRの在来線も複数が乗り入れる東京駅こそBRTのターミナルにふさわしいと、多くの人が思うのではないだろうか。

 

東京駅八重洲口には高速バスのターミナルがあるし、地下には首都高速道路から出入りできる駐車場も用意されている。高速バスターミナルにBRTを入れる余裕がないなら、駐車場の一部をターミナルに転用し、首都高速を使うことで、東京駅と臨海副都心をスムーズに結べるだろう。そして新橋から臨海副都心までの新設区間は、専用レーンを必須としてもらいたい。BRTには燃料電池バスも導入されるらしいが、大会関係者が乗る車両も燃料電池車としてここを走らせ、さらに自動運転もここで実用化してほしい。日本が誇る先進移動技術を披露するアドバンスレーンとするのだ。

 

さまざまなクルマが走る都内の道で自動運転を実用化するのは当面、無理だろう。しかし走行レーンを限定し、乗り入れ車両も限定すれば、実現への道がぐっと近づく。2020年の東京はこうした夢を実現する、またとないステージでもあると思っている。

 

【著者プロフィール】

森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担当。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本デザイン機構理事、日本自動車ジャーナリスト協会・日仏メディア交流協会・日本福祉のまちづくり学会会員。著書に『パリ流環境社会への挑戦(鹿島出版会)』『富山から拡がる交通革命(交通新聞社)』『これでいいのか東京の交通(モビリシティ)』など。

 

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