ライフスタイル
2016/12/18 19:30

寒いからといって、温かい飲み物を飲み続けると体は逆に冷えていく!?

寒い季節には温かい飲み物が恋しくなりますよね? しかし温かい飲み物をたくさん飲んでも体は温まるどころか、その飲み物が体を冷やす原因となってしまうのです。夏は熱中症予防に冷たい飲み物を、冬は体を温めるために温かい飲み物を、せっせと摂っていませんか? 現代人は男女を問わず、冷えに苦しむ人が大変多いのが現状です。特に日本人に至っては、冷えの原因の大半が水分の摂りすぎです。朝から晩までお茶やコーヒーなどを飲み続け、会社帰りには夕方から夜中までお酒を飲み歩いている、といった方は特に注意が必要です。

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■熱代謝のしくみと、水分と熱の関係

まず、人間の体がどうやって代謝を行っているかを説明しましょう。人は、食べた物を内臓で消化・吸収し、呼吸によって取り込んだ酸素でこれらを燃焼してエネルギーを得て生活しています。しかし、エネルギーを得て代謝を行えば、最後には必ず代謝熱が残ります。この代謝熱を呼気や汗、便などで排熱していますが、最も多く排熱しているのは、全身の皮膚面です。「皮膚呼吸」という言葉を聞いたことがあると思いますが、口や鼻で呼吸しているのと同様に、全身の皮膚からも呼吸をするかのように代謝を行って熱を捨てているのです。これを専門用語で「皮膚蒸泄(ひふじょうせつ)」といい、とても重要な身体機能です。皮膚から熱と水分を捨てることができないと、息ができないのと同じ状態と考えてください。

 

全身の皮膚から熱と水分を捨てるというのはどういう状態なのでしょうか。水は沸点が100度もある物質です、したがってこれを気化するためには莫大な熱量が必要となります。ところが皮膚面の温度が低いと、全身に冷たいラップをかけた状態となり、水が気化できず、代謝熱は排熱できません。体の熱を捨てるために、皮膚面は常に温かい状態に保たれていなければいけないのです。

 

■過剰な水分は皮膚の表面温度を下げる

水分を多く摂ってその排泄が追い付かなくなると、その水分は皮下に停滞します。停滞した水分で皮膚面の温度が低くなると皮膚から代謝熱が気化、排熱できなくなってしまいます。皮膚への血流が乏しくなり、ますます皮膚面が冷やされ、皮膚から熱が捨てられない。といった悪循環に陥ります。水分というのは、冷たい飲み物やアルコールだけでなく、温かい飲み物でも同じです。ホットコーヒーとアイスコーヒーを常温で放置してみてください。時間が経てばどちらも同じ温度になりますよね。ですから、温かい飲み物は一時的に体を温めてくれるかもしれませんが、体内での消化吸収で考えればどちらも同じ「水分」ですから、過剰に摂取すると冷えを招く原因になります。

 

■寒いとトイレが近くなる理由

水をヤカンに入れてお湯を沸かすと湯気が出る、といったイメージを思い浮かべてください。水が湯気となって気化するためには火を燃やす莫大なエネルギーが要るのです。それを体の皮膚面で行っていると考えてください。皮膚が冷えていては水を水蒸気にすることができません。このため、皮膚表面温度が低下すると、皮膚蒸泄が止まって自分の代謝熱も排熱できなくなってしまいます。

 

冷えるとトイレが近く頻尿になりますが、これは冷えによって全身の皮膚面が冷えて密閉されるために皮膚蒸泄ができずに代謝熱が体内にこもるので、尿という温水にして頻繁に熱を排泄することでオーバーヒートを防ごうとしているからです。ヤカンを火にかけて水を湯気にできないから直接ヤカンをひっくり返して水を捨てている、といったイメージです。

 

■熱のこもりが風邪をまねく

風邪の諸症状も人によってさまざま。喉が痛くなる、頭が痛くなる、鼻水が出るなど、それらの症状はすべて体が熱を捨てているからなんです。寒さで皮膚が密閉されて熱が捨てられず、その熱が喉や鼻、または頭に回ってこれらの症状が出てくるのです。したがって、体を温めることが風邪の予防につながります。温かい飲み物で体を温めようとしても、過剰に摂取するとそれは余分な水分となり、体を冷やすことになります。

 

例えば普段からスパイス類を多く摂ったり、コーヒーや紅茶を飲むかわりに生姜湯を飲んでみたり、シャワーではなく温かいお風呂に入る習慣が大切です。体を温める食べ物の代表は生姜が知られています。生姜には喉を潤わせてくれる効果があり、さらに全身の皮膚の温度を上がてくれます。血流を良くして粘膜を保湿する。保湿性が保てれば粘着性がなくなり繊毛運動でウイルスを外に排泄できる。生姜のジンゲロールには抗ウイルス作用がある、などと言われていますが、こういう流れが風邪の予防になります。しかしいくら体にいいからといっても過剰に摂取すると、皮膚から排泄しきれない水分となって体を冷やすのでお気を付けください。

 

よく、適切な水分量を聞かれることがありますが、オフィスワーカーであれば3度の食事の際にコップ一杯のお茶や食後のコーヒーなど、お好きな飲み物を1杯。10時と3時などの休憩時間にも好みの飲み物を1杯摂る程度で体に必要な水分は十分に摂れているはずです。あとはお風呂上りや激しい運動の後に1杯、体を動かす仕事の人は喉が渇いたと感じる時に1杯飲めば良いでしょう。運動をする習慣がなく毎日仕事帰りに飲み歩いていたり、デスクワークで喉が渇いているわけでもないのに1日に何杯もお茶やコーヒーを飲むという人は必ず体が冷えているはずです。冷えは万病の元となりますので、十分にご注意なさってください。

 

【関連書籍】

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体内の過剰な水分が恐ろしい病気を招いている(マガジンランド)

 

【著者プロフィール】

笠井良純

東京薬科大学大学院博士課程前期修士課程修了。薬学修士。渋谷区で大正10年から続く薬局の三代目。大学院修了後、日水製薬株式会社中央研究所勤務を経て実家の有限会社笹塚薬局を継ぐために漢方の勉強を始める。

なぜその植物が生薬として使われるようになったのか、を紐解く独自の「生態生薬学」を創設。体の熱代謝と水分と病気の関係を研究し、「体の過剰な水分が冷えの元となって熱が内攻してすべての病気を引き起こす」という理論によって、相談に訪れる患者のさまざまな病気に対し、独自の漢方処方で症状を改善させている。日中医薬研究会会員、同事務局理事。東京漢方教育研究センター理事歴任。生態生薬学研究会主宰。

笹塚薬局 http://www.sasazuka.co.jp/

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