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過去数十年で最悪の「食料危機」に陥るアフリカ、「小魚」が希望の光

2023/1/26

近年、アフリカの食料危機が深刻化していることをご存知でしょうか? そのレベルは過去数十年で最も悪いと言われ、日本の人口を超える1億4600万人もの人が食料不足に陥り、死のリスクに直面する子どもが増加しています。そんな中、このような現状を解決する一助になるかもしれない、ある研究結果が報告されました。

食料危機における希望の光

 

国際赤十字・赤新月社連盟の2022年11月の報告によると、サハラ以南のアフリカで現在、食料不足に直面している人の数は1億4600万人。日本の人口よりも多い人々が、日々生きていくために必要な食料を得られていないことになります。これは昨今の気候変動(干ばつ)で、作物の収穫量が減少したこと、さらにロシアのウクライナ侵攻で世界全体の食料供給が不安定になっていることなどが関連しています。これだけの人々が食料危機に陥っているのは、過去数十年で最もひどいそう。

 

この影響は、幼い子どもにも及んでいます。十分な栄養を摂取できないことから、ひどく痩せ細り、死のリスクすらあるという消耗症(症状の重い乳児栄養失調症で、体組織が破壊され、食事量を増やしても体重は減り、ひどく痩せてしまう)に陥る子どもの数が増加していると言います。このような食料危機は2023年も続くと予測されており、ユニセフや国際赤十字をはじめ、さまざまな組織や団体が支援を呼び掛けているのです。

 

安くて栄養価が高い小魚

そこで注目したいのが、小魚の存在。英国・ランカスター大学の研究者らが、先日「ネイチャー」に発表した論文で、食料不足に苦しむ国において小魚が新しい食料供給源として有効であるとまとめたのです。

 

この研究では2348種の漁獲量と栄養データ、さらに低・中所得の39か国のデータなどを分析し、小魚は栄養価が高いのに価格が手ごろであると主張しています。例えば、ニシン、イワシ、カタクチイワシなどは栄養価も高く、72%の国で最も価格が安い魚でした。その価格は1日分の食費のわずか1~3割ほどで済むと同研究者らは述べています。

 

日本で小魚は手頃に入手でき、頭からしっぽまで丸ごと食べられて、栄養価が高い食材だと知られています。しかし、日本のように伝統的に魚を食べる習慣がある国とは違い、途上国の中には魚を頻繁に口にしない国もあります。例えば、サハラ以南のアフリカで5歳以下の子どもの魚介類摂取量は、推奨される量の38%にとどまっているそう。

 

また、現在の漁獲量だけでも、人々に供給するだけの十分な量があるとされており、ニシンなどの小さい遠海魚の漁獲量のわずか20%ほどで、アフリカの沿岸部に住む5歳未満のすべての子どもの推奨摂取量を満たせることが同論文で指摘されています。

 

日本の加工・品質管理技術が求められる

水産物を高い品質で管理し加工する日本の技術は、世界でもトップ水準。栄養価をできるだけ損なわずに、新鮮でおいしい状態を維持して長期間管理する技術があれば、より多くの人に高い栄養価の状態で魚を供給できるでしょう(例えば、コールドチェーン技術。原材料の調達から生産、加工、物流、販売、消費までのサプライチェーンの全工程において、冷凍や冷蔵などの適切な温度管理を行うこと)。日本が技術面で支援を行うことで、アフリカの食料不足や栄養失調の問題解決に役立つことが考えられます。

 

食料不足を解決する可能性を持っていることが明らかとなった小魚。アフリカなどで新たな食料源として活用するのに、コールドチェーンなど日本の技術が役立つでしょう。

 

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