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2018/5/13 18:15

【今週の大人センテンス】そしてイチローは新たな目標を掲げて突き進む

巷には、今日も味わい深いセンテンスがあふれている。そんな中から、大人として着目したい「大人センテンス」をピックアップ。あの手この手で大人の教訓を読み取ってみよう。

写真:AP/アフロ

 

第97回 偉大な功績に報いる神契約

 

「僕は野球の研究者でいたい。自分が今44歳でアスリートとして、この先どうなっていくのかというのを見てみたい」byイチロー(シアトルマリナーズ会長付特別補佐)

 

【センテンスの生い立ち】

マリナーズのイチロー外野手(44)が、野球の歴史に輝く偉大な選手のひとりであることに異論をさしはさむ余地はない。92年にオリックスに入団し、2000年オフに大リーグのマリナーズに移籍。ヤンキーズ、マーリンズを経て、今春マリナーズに復帰した。5月3日(日本時間4日)、マリナーズはイチローがメジャー40人枠から外れ、会長付特別補佐に就任したことを発表。記者会見に臨んだイチローは。現在の心境や今後の抱負などを語った。

 

3つの大人ポイント

・「引退ではない」とファンと自分に強調している
・形式や前例にこだわらず球団の誠意を受け止めた
・新しい状況での新しい目標を即座に掲げてくれた

 

今まで誰も成し得なかった偉大な功績を残した背番号51番は、誰も想像していなかった形で選手生活に「区切り」を付けました。シアトルマリナーズのイチロー外野手は、現役メジャー最年長の44歳。何となく永遠に現役を続けるような気がしていましたが、現実はそうはいきません。ここ数年は、以前ほどは活躍の機会はありませんでした。

 

偉大な存在であればあるほど、(あえてこの言葉を使いますが)「引き際」は難しいもの。イチローが、どんなふうに「区切り」を付けるか、イチローファンや野球ファンは気になっていたことでしょう。日本球界への復帰してから引退してほしい、という声もありましたが、本人にその気はまったくなさそうでした。まだ現役を続ける気満々なのに、引き取る球団がどこもなくてやむなく引退という流れになったら、あまりにも寂し過ぎます。

 

あちこちで詳しく報じられていますが、イチローは5月3日(日本時間4日)に記者会見を行ない、球団の「会長付特別補佐」という肩書きになると発表しました。今シーズンの残り試合には出場しないものの、現役を引退するわけではなく、ユニフォーム姿で練習しながらチームメイトにアドバイスなどを行なうとか。

 

詳しいいきさつや理由は、この記事にわかりやすくまとめられています。
「マリナーズがイチローを特別補佐にした理由とは」(日刊スポーツ)

 

最初は「えっ、どういうこと?」と思った人も多いことでしょう。どうやら、球団側がイチローに対して、精一杯の誠意を示し、偉大な功労者に失礼がないようにと配慮した結果の選択のようです。「そんなの聞いたことない」という批判もあるようですが、今までにいない唯一無二の選手ですから、形式や前例にこだわる必要なんてまったくありません。

 

今までイチローの活躍に胸躍らせてもらったファンとしては、イチローと球団にとってベストの方法を提案した球団の知恵と勇気に素直に感心し、イチローの決断を祝福するとしましょう。イチローもこういう言い方で、球団に感謝の気持ちを示しています。

 

この日(メジャーの40人枠から外れる日)が来るときは、僕は辞めるときだと思っていました。ただ、こういう提案がチームのほうからあって、このチームがこの形を望んでいるのであれば、それが一番の彼らの助けになるということであれば、喜んで受け入れようという経緯です。

 

ファンにとってうれしいのは、引退したわけではないので、来年3月20日、21日に東京ドームで行なわれる開幕戦(対アスレチックス)に、出場する可能性が残ること。イチローも「遠いですけど、目標をもっていられるっていうのは、大きなことです」「この判断をしてくれたことに応えたいという思いが生まれるのは当然じゃないですか」と、日本での出場を目標にトレーニングを続けることを示唆しています。簡単な道のりではないでしょうが、あのイチローですからアッと驚くことをやってくれるに違いありません。

 

イチローは会見で、ほかにも今後の壮大な目標を掲げてくれました。それが冒頭でも紹介した「野球の研究者でいたい」というもの。この言葉に続けて「だから、喪失感みたいなのは、じつはないんですよね」とも言っています。今回の決断をするまでには、そりゃ葛藤や寂しさもあったはず。落ち込んでもおかしくないところですが、力強い口調で今の状況での新しい目標を即座に掲げてくれるところが、さすがというか何というか、イチローのすごさです。目標の中身が微妙に理解が難しいところも、またイチローらしさと言えるでしょう。

 

マリナーズのジェリー・ディポトGMは「クラブハウスでの彼は、ダライ・ラマのようなんだ。彼が椅子に座っていると、ゴードン、ハニガーらが、まるで山の上から答えるのを待っているようなんだ」と語っています。ダライ・ラマに例えられたことを伝え聞いたイチローが、笑いながら「僕用の袈裟でも用意しますか」と言ったのも、味わい深いエピソードでした。ぜひ、本当に袈裟をきてクラブハウスに現われて欲しいものです。

 

イチローは数々の記録を打ち立てた現役中に引き続いて、現役に「区切り」を付けた今も、そしてたぶんこれからも、私たちをワクワクさせてくれるはず。差し当たっては来年3月のマリナーズの開幕戦に、彼が出場することを楽しみにさせてもらいましょう。たとえ出場しなくても、今の段階では何の予想も想像もできませんが、きっと楽しい展開をもたらしてくれるに違いありません。

 

【今週の大人の教訓】

ケタ外れの才能や存在感は、多くの人の人生を楽しく盛り上げてくれる

 

著者プロフィール

コラムニスト・石原壮一郎

1963年、三重県生まれ。コラムニスト。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。大人の新しい概念と可能性を知らしめ、以来、日本の大人シーンを牽引している。2004年に出版した『大人力検定』は、さまざまなメディアに取り上げられて、世に大人ブームを巻き起こした。近著に『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物である伊勢うどんを熱烈に応援し、2013年に世界初の「伊勢うどん大使」(三重県製麺協同組合&伊勢市麺類飲食業組合公認)に就任した。

FBページ「伊勢うどん友の会」http://www.facebook.com/iseudontomonokai

大人力ブログ:http://blog.otonaryoku.jp/

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